【番外編】飛鳥くんと隆臣くん
誘拐事件から三ヶ月後の飛鳥と隆臣のお話です。
少しでも、お楽しみ頂けたら嬉しいです。
それは、飛鳥と隆臣が「友達」になってから、三ヶ月がたった頃のこと。
「隆ちゃん♪」
学校の休み時間。いつもの教室で、飛鳥はにっこりと笑みを浮かべると、机に座り、次の授業の準備を始めていた隆臣に声をかけた。
「なんだ?」
「ちょっと立って、俺の腕を掴んでみてよ?」
「は?」
机に座る隆臣に、立てと命令するばかりか、腕を掴めと言ってくる飛鳥に、隆臣は思わず顔をしかめる。
「なんで?」
「いいから♪ ね?」
そう言って、にっこりと笑う飛鳥の姿は、本当に天使のようだと思う。
隆臣は、よくここまで、なつかれたもんだと思いつつも、そう悪い気はせず、一度ため息をつくと、席をたち、飛鳥の指示に素直に従う。
「……こうか?」
「そうそう。ちょっと、じっとしててね?」
「?」
──ゴキッ!?
「いってぇ!? ちょ、飛鳥!? なにしてんだ、お前!?」
「あー……やっぱ、上手くいかないや」
「何が!? 俺の腕になにしようとしてんの!? マジやめろ!?」
「あ、ごめんね。ほんとは、床に叩きつけるつもりだったんだけど」
「どういうこと!? 謝るとこ違うだろ!? お前、俺をなんだと思ってんの!?」
腕を掴んだ隆臣に、なにやらとんでもない技をしかけようとして、失敗したらしい飛鳥。
その後、飛鳥は、うーんと顔をしかめ隆臣から手を離すと、自分の手の平を見つめ、難しそうな顔をする。
「なんだよ、一体」
「うーん。実はさ、先日うちの父さんが護身術を覚えようっていって、いっぱい本を買ってきたんだけど」
「……あぁ、なるほど」
「でも、父さん相手じゃなかなか上手くできなくて。だから、同じ体格のやつなら、上手く沈むかなとか思って」
「沈めんな!? 俺、実験体だったの!? てか、やるならまず説明しろ! 受け身もとれねーだろーが!」
「だって、説明したら逃げるだろ?」
飛鳥にそういわれ、隆臣は少し不服そうな顔をする。
そりゃそうだろう。誰が好きこのんで、痛い目にあわなくてはならないのか?
「逃げるに決まってんだろ! 誰がわざわざそんな」
「そうだよね。隆ちゃん、あの時も、俺をおいて一人で逃げたもんね」
「!?」
あの時とは、そう、誘拐事件のことだろう。
「っ……お前、俺がそれ気にしてんの知ってて、更にメンタルえぐる気か? それにお前も、あの時、逃げろって言っただろ」
「……うん。確かにそう言ったし、結果的にはアレでよかったんだけど……でも、やっぱり、辛かったかな? あのときの犯人、かなりの変態だったし」
そういうと、飛鳥は瞳を潤ませ、ものすごーく悲しげな顔をする。それは、今にも泣いてしまいそうな……
(え、もしかして、泣きそう……なのか?)
瞬間、隆臣は慌て出す。
確かに、辛かったと思う。
あんな怖いオッサンに捕まって、しかも、あんな泣いてたわけだし、トラウマになってもおかしくない。
しかも、見た目はいいわけだし、護身術くらい覚えなくちゃ命いくつあっても足りないし……
あれ? これ、聞いてあげた方がいいのか?
「ねぇ、隆ちゃん。ここは俺のためだと思ってさ、潔くなろうよ。実・験・体♪」
「……っ」
綺麗な笑みを向けられると、隆臣の心は激しく揺れ動く。
飛鳥の笑顔は本当に綺麗だし、華もあるし、おまけに愛嬌もあるので、もう、いっそコイツになら、身を捧げても惜しくないんじゃないかとすら思わせてくる。
だが……
「ッ──誰がなるかあぁぁ!? 俺は飛鳥とは、対等な立場でいると決めたんだからな! おいそれと、懐柔なんてされてたまるかよ!?」
「なにそれ、人聞きの悪い」
だが、隆臣はすんでの所で、飛鳥の提案を見事に跳ね返した。
そう、なぜなら飛鳥は──
「神木~」
「?」
「お前、日直だよな。職員室に持っていくノート、俺がやっといたからなー」
「あー、頼んでもないのに、わざわざありがとう。たすかるよ」
「……」
そう。なぜなら飛鳥は、隆臣と友達になり学校で、素で振る舞うようになってから、ここ三ヶ月で、前によくちょっかいをかけてきた、いじめっ子は勿論、クラス、いや、学年中の生徒を、既に懐柔する勢いだったからだ!
「おい飛鳥! 俺は、友達作るために"笑え"って言ったんだ! 誰が"下僕"作れって言った!?」
「俺は下僕だなんて一切思ってないよ。それに、あっちが勝手に優しくしてくるんだもん。俺にどうしろって言うの?」
「お前……もう笑うな」
「なにそれ? 今さら後悔してるの?」
「後悔しかないわ!」
「はは、だから言ったでしょ。大変なことになるかもって♪」
そういうと、飛鳥はまた綺麗に笑った。
そして、そのまた三ヶ月後。
飛鳥が六年にあがったころには、最終的に学校のアイドル的存在にまで上り詰めるのだが、それと同時に、飛鳥の双子の妹弟が小学一年生として入学してくることとなる。
そして、その双子も、自分達の兄がとんでもない存在だと言うことに、のちのち気づかされ、色々と苦労を強いられることになるのだが……
それは、また、別のお話──
いつも「神木さんちのお兄ちゃん!」を閲覧頂き、誠にありがとうございます。
少し長かったですが、今章で過去編が終わり、第1部が終わりました。過去編の途中で10万文字を超えたのですが、評価をしてくださった皆様本当にありがとうございます。大変励みになりました。
また、この作品を小説家になろうに投稿し始めて半月。ありがたいことに7000PVを突破し、更にはジャンル別日刊ランキングの55位に上がることも出来ました。
一切、なろう受けしない作品ですが、それでもここまでPVや評価がついたのも、全て読みに来てくださった皆様のおかげです。
本当に、本当にありがとうございます。
次回からは第二部に入りますが、その前にキャラクターのプロフィール紹介を掲載する予定です。おさらいもかねてご覧いただけたら嬉しいです。
なにかと未熟な作者ですが、これからもできる限りのことはしていきたいと思っておりますので、今後とも、どうぞ宜しくお願いします。




