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神木さんちのお兄ちゃん! ~美人すぎる兄は、双子の妹弟を溺愛してる~  作者: 雪桜
第10章 お兄ちゃんの失恋

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第428話 嫌いと好き


「だって、ちょっと攻めてだけで、あんな可愛い反応してさ。わかりやすいったらなかった」


「っ……」


 その言葉に、一気に羞恥心が跳ね上がった。

 恥ずかしさで体が震え、心臓は早鐘のように動く。


(や、やっぱり気づかれてたの? だから、あんなに……っ)


 だが、例え気づかれていたとしても、肯定なんて出来るはずはなく……


「そ、そんなの、神木さんの勘違いです。私は、あなたの事を好きではありません。だから、あなたが、どんなに私の心を揺さぶっても、私の気持ちは変わらないし、あなたの気持ちには応えられません! だから、もうこれ以上、私に関わらないでください!」


 叫びそうな心を必死に押し込んで、あかりは、言葉をぶつける。


 言いたくない言葉。

 傷つけるだけの言葉。


 だけど、言わなきゃいけない。


 だって、無理なんです。

 どんなに好きでも、ダメなことってあるんです。


 もし私が、あなたの思いに応えたら、この障碍を、一緒に背負わせてしまう。


 それに、誰が認めてくれるっていうんですか?


 あなたみたいに誰からも愛されている人が、私みたいな子を選んだら、絶対に、納得しない人が出てくる。


 そしたら、私だけじゃなく、貴方まで、心無い言葉をあびせられる。


 あの日、あや姉たちが

 蒼一郎さんの母親にいわれたように


 今度は、その悲しい言葉を

 私たちが浴びることになる。


 私は、嫌なんです。

 あなたが、蒼一郎さんみたいに苦しむのは。


 だから、わかってください。


 私は、もう二度と


 あんな悲劇、繰り返したくない──



「わかってくれないなら、何度でも言います! 私は、あなたが嫌いです!」


 ──俺のこと、好き?


 そう問われた時に言えなかった拒絶の言葉を、今度ははっきり紡いだ。


 何度も傷つけたくはないのに、彼が諦めてくれないなら、何度でも言うしかなくて──


「嫌い…です……きらい……大嫌い……っ」


 月夜には、あかりの声が切なく響く。


 だが、その声は、行き交う車の音に、すぐさまかき消された。


 ざわつく騒音が、二人の会話を阻み、まるで見えない壁でもあるみたいに聴界が狭まる。


 だが、その声は、飛鳥の耳にはしっかりと届いていた。すると、飛鳥は──


「あまり、俺のこと、拒絶しない方がいいと思うよ」


「え?」


 微かに聞きとれた声に、あかりは瞠目する。


「何を…言ってるんですか?」


「だって、俺を拒絶する度に傷付いてるのは、あかりの方だろ」


「……っ」


「言っただろ。あかりの気持ちに気づいてるって……あかりは、誰かのために一生懸命になれる人だよ。俺がミサさんを見て倒れた時も、エレナが、オーディションを受けたくないと逃げ出した時も、あかりは、必死に俺たちに寄り添ってくれた。でも、そんな優しいあかりが、わざわざ、俺が傷つくようなことを言ってる」


「…………」


「俺のために、あえて、突き放すようなことを言ってるとしか思えない。だから──」


 その瞬間、あかりの身体は、再び飛鳥の腕の中に抱き寄せられた。


 後頭部に添えられた手は、優しくあかりを抱き包み、聞き取りにくかった世界が、一気に破られる。


 それは、抱きしめると言うよりは、聞き逃さないように、飛鳥は、できるだけ唇を寄せ、あかりの耳元で囁きかけた。


「だから、どんなに拒絶しても無駄だよ。あかりが『嫌い』だって言えば言うほど、俺はもっと、あかりのことを好きになるから」


「……っ」


 その言葉は、きっと『好き』の裏返し。

 あかりが、俺のために紡いだ、愛情の言葉。


 なら……


「諦めないから。どんなに拒絶されても、あかりが、俺に心を開いてくれるまで、いつまでも待ってる。だから、これ以上、自分を傷つけないで……俺は、あかりが隣にいてくれるなら、それだけでいい」


「っ……」


 隣に──そう言われた瞬間、あかりの瞳から、涙が零れ落ちた。


「やめ……て……っ」


 もう、やめて。

 これ以上、優しくしないで。


 だけど、そう思いつつも、あかりの手は、自然と飛鳥にすがりつく。


 抱き合えば、感情が、次々と溢れてくる。


 閉じ込めたはずの想いも

 諦めたはずの未来も


 たった一言発するだけで、叶うんじゃないかって思えてくる。


 だけど、あなたは、ひとつだけ勘違いをしています。


 私が、人に優しいのは

 ただの、罪滅ぼしです。


 あの日、救えなかった命を

 気づけなかった後悔を


 もう二度と、繰り返したくないだけなんです。


 だから私は

 あなたが思うような、優しい人間じゃない。


 あなたに、相応しい人間じゃない。


 それなのに……っ


「う……ぅ、神木さ……私……っ」


 ──私も、あなたの傍にいたい。


 できるなら、ずっとずっと、あなたの隣に。


 だけど、その言葉を、決して口には出さず、あかりは、ただただ涙を流した。


 ダメだとわかってるのに

 願ってしまうのは、なぜ?


 もう、決めたことなのに

 突き放せないのは、どうして?


 もし、両耳とも聞こえていたら


 私は、あなたの気持ちを

 素直に受け入れることが出来たでしょうか?


 もし私が、普通の女の子だったら

 あなたと普通の恋が出来たのでしょうか?


 でも、そんなこと、考えても無駄ですね。


 だって、現実は変わらない。

 どうしたって、それは叶わない。


 だから、早く諦めて──


 私は、普通の女の子にはなれません。


 だから、どんなに待っても

 この気持ちは変えられない。



 だって、この障碍は



 この病いは






 一生、治ることはないから──…







「ぅ、うぅ……っ」


 変えられない現実は、容赦なく心を冷やし、あかりは、飛鳥の腕の中で、ひたすら涙を流した。


 すすり泣く声は、しばらく止まることがなく。


 そして、そんなあかりの身体を、飛鳥は、何も言わず抱きしめていた。


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