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神木さんちのお兄ちゃん! ~美人すぎる兄は、双子の妹弟を溺愛してる~  作者: 雪桜
第10章 お兄ちゃんの失恋

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第425話 美味と空気


「「あ……」」


 お互いの手がピッタリと重なった瞬間、二人の声も同時に重なった。


 どうやら、同じタイミングでソースを手にとってしまったらしい。あかりの手を、飛鳥が包み込むように掴んでいた。


 だが、ここで動揺してはいけない。

 あかりは、ぐっと息をつめた。


 もし、恥じらったりすれば、神木さんに、好きだと気づかれてしまうかもしれない。


「あ、ごめん」

「いや、謝るなら離してください」


 だが、にっこり笑った飛鳥は、謝りつつも、あかりの手を離そうとはしなかった。


 そして、そんな飛鳥に、あかりは、戸惑う。


 手を引っ込めたくても、上からホールドされていて、離すに離せない。


 しかし、なぜ?

 というか、いつまで掴んでるの?


 見つめる先では、飛鳥が、どこかイタズラめいた笑みを浮かべていた。

 この姿をみれば、明らかにワザとだ!


 しかも、今は、あなたのご妹弟が、目の前にいるですけど!?

 いいんですか!

 女の手を掴んでるところを見られても!?


(離して、今すぐ離して……!)


(めちゃくちゃ、困ってる)


 必死に目で『離せ』と訴えるあかりをみて、飛鳥は、楽しそうに微笑む。


 先日は、あんなに顔を真っ赤にしていたのに、今は、そうならないように必死らしい。だが、それが、また可愛くて、つい意地悪をしてしまう。


 ちなみに、あかりは知らないが、飛鳥は、前にあかりを抱きしめたところを、双子に目撃されているため、手が触れたところを見られるのは、痛くも痒くもなかった。


「ごめん、ごめん。ソースどうぞ」


「いぇ、私はあとでいいので、神木さんから、どうぞ」


 すると、やっとのこと飛鳥が手を離してくれて、あかりは、同時にソースから手を引っ込めた。


 先に使うと、渡す時に、また手を掴まれる可能性がある。あかりは、それを阻止するため、速やかに飛鳥に譲った。だが、飛鳥は……


「いいよ、先に使って」


「いえ。家主を差し置いて、私が先に使うわけには」


「なにいってんの。あかりは、俺の大事なお客様なんだから、遠慮しなくていいよ」


「お、おれの……っ」


「あ、それとも、俺にかけてほしい? いいよ、たっぷり愛情こめてかけてあげる♡」


「なに言ってるんですか?」


 恥ずかしげもなく発せられた言葉を、あかりが、真顔で打ち返す。


 というか、びっくりした!

 もう気を抜くと、どこから実弾が飛んでくるか変わらない!!


(さっきから、なんなの? 『俺の大事な』とか『愛情こめて』とか!)


 先週から、明らかにおかしい。

 ふったあとから、急激に、神木さんがおかしくなった!


(やっぱり、気づかれてるのかも、私の気持ち……っ)


 そして、最悪の事態を想定し、あかりは息を飲んだ。


 もし、気づかれていたら?

 だが、それも、ありえない話ではなかった。


 先日、押し倒された時や『好き?』と聞かれたとき、明らかに感情が顔に出てしまっていた。


 だって、恥ずかしくてしかたなかった。


 好きな人に押し倒されて、動揺せずにいられるほど、あかりは、男性経験が豊富ではない。

 いや、男性経験どころか、お付き合い一つした事がないのだ。まさに、初恋状態のあかりには、どうしたって出来る芸当ではない。


 だが、仮に、この気持ちに気づかれていたとしても、神木さんの気持ちに、こたえるわけにはいかない!


「ふざけてないで、早く食べてください」


 すると、あくまでも、おふざけと言ってつっぱねると、あかりは、飛鳥にソースをかけられる前にと、自分からかけた。


 そんな恥ずかしいところ、双子に見られたくない。

 そして、ここを切り抜けるには、もう食べるしかなかった。


 そうだ!

 高速で食べて、ずらかるしかない!!


 だが、そんなあかりと飛鳥を見つめながら、双子は、顔が赤らむのを、必死に我慢していた。


(なんか見てて恥ずかしいけど、頑張れ兄貴。食事のあとは、俺が、あかりさんをゲームにさそうから)


(そして、ゲームのあとは、私が、お風呂を進めて、あわよくば、一晩泊まっててもらおう!)


 まさか、お泊まりまで計画してるとは、あかりはもちろん、飛鳥も思うまい。


 しかし、可能な限り兄のサポートを!

 双子は、この機を逃すまいと必死だった。


 だが、あかりはあかりで、まさか双子がそんな恐ろしい計画を企てているとは知らず、早く食べて帰ろうと、お好み焼きにマヨネーズをかける。


 そして、すぐさま、お好み焼きをパクリ。


(っ……美味しい!)


 するとそれは、まるで、光り輝くような美味しさだった。

 外はカリッと、しかし、中はふわっと。

 見た目も美味しそうだったが、味も素晴らしい!


 これは、よき母になると、双子が推薦するだけある!


「神木さん、このお好み焼き、とても美味しいです! この味なら、どこに嫁いでも、やって行けると思います!」


「いや、なんで、俺が嫁ぐの?」


 あかりの言葉に、飛鳥が、真顔で返した。


 一応、これでも長男。昔ながらの形式になぞらえれば、神木家を継ぐのは、もちろん飛鳥!

 なのだが……


「兄貴、何言ってんだよ! (あかりさんが)嫁いでくれっていうなら、嫁げよ!」


「そうだよー。今どき長男が、家を継ぐとか考え古すぎ! なんなら、私がお婿さんとってもいいし、お父さんだって、きっと許してくれよ」


「いや、なんでそうなるの? 俺、嫁ぎたいとは一言も言ってないんだけど。それに、父さんは『絶対に嫁にはやれない』って言ってたよ」


「「なんだと!?」」


 双子の声がハモった。

 まさか、父が、兄の手放しを拒絶していたとは!?


 だが、そんな神木家の姿を見て、あかりが、くすくすと笑いだす。


(やっぱり、あったかいなぁ、神木さんちは)


 何度訪れても、いつも優しくて、温かい。

 そして、この雰囲気は、同時に実家にいた頃を思い出す。


 父と母と、弟の理久。

 四人で食卓を囲んでいた頃を……


 あの優しい空間が、あかりは大好きだった。

 だが、その幸せな場所を手放して、あかりは、この街にきた。


(早く、ここから出なきゃ……っ)


 この街にきたのは、一人で生きていくためだ。


 なら、いつまでも、この空気に浸っていてはいけない。


 だって、この家族に囲まれていたら



 私は、きっと、一人では生きられなくなる。



 だから、早く。



 早く離れなきゃ……っ




 

 私の意思が、揺らいでしまう前に──…



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