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神木さんちのお兄ちゃん! ~美人すぎる兄は、双子の妹弟を溺愛してる~  作者: 雪桜
第5章 転校生と黄昏時の悪魔

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第39話 転校生と黄昏時の悪魔⑦ ~ぬいぐるみ~

 

「もしかして、探しているのはコレかな?」


 突然、背後から声をかけられ、飛鳥が振り向くと、そこには人の良さそうな男性が一人、にこやかに笑って立っていた。


 飛鳥は少しだけ警戒心を強めるが、男が手にしたものを差し出すと、飛鳥は、ほんの少しだけ気を許す。


 なぜなら、そこには、今まさに探していた「ウサギのぬいぐるみ」がにぎられていたから。


「あ! ありがとうございます!」


「やっぱり、君の()()()のかな?」


「え?」


 よく見れば、その男性は、自分たちが先程遊んでいたときにも、見かけた男性だった。


「あれ? おじさん、さっきもいた?」


「ああ……この辺に来たのは、はじめてなんだけどね。たまたま通りかかったら綺麗な公園があったから、暫く紅葉を楽しんでいたんだ」


「そう……」


 言われてみてば、公園にある木々は確かに色づきはじめていた。


 だが、紅葉を楽しめるほど、鮮やかに彩られている訳ではなく、飛鳥は少しだけ疑問を抱く。


「そうだ、君にひとつお願いがあるんだが」


「?」


 すると、男がまた話しかけてきた。


「実はいきたいところがあるんだが、道がわからなくなってしまってね。君に教えてもらいたいんだが」


「別にいいけど、どこにいきたいの?」


「ありがとう。あっちに、車を停めてあるから、ちょっとついてきてくれるかい?」


「……」



 ──車?


 それを聞いて、飛鳥は不信感でいっぱいになる。


 自分より遥かに背の高い男。身なりも綺麗で物腰む柔らかく、清潔感もあって、見た感じは、とても人が良さそうな男性だった。


 だが、どことなく「嫌な予感」がしたのも確かだった。


「おいで」


「え!?」


 男は、飛鳥の手を掴むと、強引に車の方へと歩き出した。だが、それに、おいそれと従うような飛鳥ではなく


「ごめん、俺もう帰る!」

「……っ」


 そういって、男の手を振り払うと、男の体がピタリと止まる。


「車できてるなら、公園を出て、右にしばらくいったらパン屋が見えてくるから、そこを左折して。そしたら交番があるから、そっちで聞くといいよ」


「……そうかい。ありがとう」


 男はまた、ニコリと笑って、そういった。


 どこか、感情のない返事。飛鳥は、手にした華のぬいくまるみをギュッと握りしめると


「じゃ、俺急ぐから。ぬいぐるみ、ありがとね」


 すると、飛鳥は公園をでて歩道へと走り出した。


 ──なんだろう。

 

 なんだか、よくわからないけど、すごく嫌な感じがした。


 その不安な気持ちに急かされるように、飛鳥は歩道を走る速度を早め、自宅へと急ぐ。


 だが、その嫌な予感は、なかなか拭いきれず、飛鳥は、時折後ろを振り返っては、背後を警戒する。


(……考えすぎ、だよね?)




 ──ドカッ!!?


「痛ッ!?」

「──ッテー!!?」


 だがその瞬間、身体に激痛が走った。


 それは、飛鳥が背後を気にしていたために起こった、出会い頭の事故だった。


 歩道を曲がった先に現れた人物に気づかなかったからか、二人は正面からぶつかった。


「痛……ッ」


「あれ? 神木?」


「え?」


 不意に名前を呼ばれて、飛鳥は視線をあげた。


 すると、ぶつかった相手はクラスメイトの"橘 隆臣"だったようで、飛鳥は目が合った瞬間、あからさまに嫌そうな顔をする。


「橘……っ」


「お前、なにやってんだよ! ちゃんと前見て走れよな!?」


「うるさいな、急いでたんだよ!」


 ぶつかった拍子に崩れた体勢を整えると、飛鳥は一緒に手から離れた華のぬいぐるみを拾い上げた。


 だが、ふと隆臣が"行こうとしていた方向"に気づいた飛鳥は、早急に隆臣に問いかける。


「ちょっとまって……お前、こっちに行くの?」


「え? だったら、なに?」


「あの……あっちの道、いけば?」


「は? 何で!? そっち遠回りなんだけど!?」


「……そう、かもしれないけど」


 何となくだが、行かせるべきではないと思った。


 だが、それをどう説明するべきか、不確かなそれでは、上手く言葉にできなかった。

 

「神木?」

「……」


 すると、その飛鳥の瞳に、どこか不安げな色が混じっているように見えて、隆臣が神妙な面持ちで問いかける。


「なにか、あったのか?」


「…………」


 その問いに飛鳥は


「…………いや、大丈夫。なんでもな」


 ユラ───


「「!?」」


 だが、その時、立ち尽くしていた二人を、ひとつの"大きな影"が覆った。


 背後に現れた──"何か"。


 その影に、飛鳥が慌てて振り返ると、それは、いとも簡単に飛鳥の腕を捕らえ、その小さな身体を、強引に引きよせる。

 

「こんな所に、いたのか」


「ッ……!?」


 そう言って笑った男は、先程飛鳥に"ぬいぐるみ"を手渡してきた


 ────あの男だった。



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