#9 JOKER
「解放・・・<五十三番目の殺意>!!」
全てを破壊、そして消去する能力。俺から溢れた『殺意』は影、『殺戮影』となった。
ドラゴンは危機と認めたのか、<パンデミック・ブレス>を放つ。標的は俺。
「『殺戮影』、迎撃」
影を俺の前に展開。<パンデミック・ブレス>を破壊する。影を収縮させた途端、
<病爪>が襲いくる。影を刀身に纏い、振る。ドラゴンの爪は切られた直後、数字とアルファベットの羅列となって崩壊した。これが消去能力だ。ただ、さすがにデバフはくらってしまった。皆と同じ[感染病]デバフ。
「エクス」
「ああ。」
「全員待避させろ。」
「了解。・・・撤退!てったーーーい!!」
残るは俺一人。死ぬのは俺だけで十分だ。いや、死ぬ気はさらさら無い!
「絶対に、殺す!」
ドラゴンは俺に答えるかの様に、咆吼をあげた。
俺はこのとき気づかなかった。俺の頭の中が殺意で満ちていたことに。
「大丈夫かな?」
エクスは途中、ヤマタ達を拾ってユースフルの入り口まで戻って来ていた。
「あいつが死ぬとは思え無え。」
「あいつが死んだらもう絶対俺達じゃ勝てない。」
「それもそうか・・・」
「だいじょうぶ!先輩は戻ってきますよ!」
「ああ、なんたって、俺達のマスターなんだからな!」
向こうから、彼のギルド「ダウナーズ」メンバーの声が聞こえた。
「・・・絶対帰ってこいよ、イズモ。」
エクスは、そう呟いた。
「ラアッ!」
エクス達が戻った数分後、噴水広場では熾烈な戦いが繰り広げられていた。
ドラゴンがいくらデバフを与えても、簡単に破壊される。もちろん、ただでやられるわけでも無く、俺は隙をみつけては攻撃する。そのたびに、ドラゴンの一部が崩壊する。
HPは両者残り3割。削りきれそうで削りきれない微妙な数値。しかし、ドラゴンはここで最もやってはいけないミスをした。使えるスキルが無くなった。その隙を見逃さない。
跳び上がって、<ドラグニアブレード>、連続して<ギガスラッシュ>、次いで<影斬>。形状変化で大剣に変え、思いっきり<オメガスラスト>。
残り1割。スタンを入れまくってドラゴンは動けない。この機を逃さない!
「死ネ・・・絶滅剣;死去!」
全てを削り、消す。壊す。暴虐を全て集めてなお足りない様な、悪意、害意、敵愾心。それらの奔流に飲まれたドラゴンは為す術無く、消滅した。
街にあった、嫌な感じ、不快な色彩が消える。目の前に『1000人単位超難易度大規模戦闘クリア!』のシステムメッセージが表示される。
(よかった、クリアできた・・・)
「マスター!!」「先輩!」「ボス!!!」「イズモ!」
皆から名前を呼ばれる。しかし、もう限界だ。
(みんな・・・しばらく寝かせて・・・)
そこで俺の意識は途絶えた。




