#17 誘拐。そして災厄
「おい、さっさと眠気をよこせ!」
塔攻略から一日たった朝。今日の予定は特に無く、惰眠を貪るつもりだったんだが・・・
ロキ(黒猫バージョン)に叩き起こされ早く飯よこせとせがまれる。
ちなみに餌は人間の感情。別に喰われても感情が無くなるという訳では無いらしい。
今日は眠気を喰いたいそうだ。ガンガン喰ってくれ。
「うん、中々の眠気だな。そういやあの変態女と要塞と侍、フィールド狩り行ってるぞ」
コロンとナッツとマサムネだな。あいつら何かと真面目だしな。コロンは違うけど。
「分かった。その他の奴らは?」
「ウィザードとチャラ男、魔神はユースフルだ。ウィザードと魔神は武器の補修、調達。チャラ男はなんぱ・・・だったかな」
クロトとゲンジ、マジンか。一人だけ目的が違うな。
「あと罠姉妹とロリ巨乳は素材集め。」
キュー、ナツキ、フレイルだろう。フレイルだけ扱いひどいな。
「で、残ってんのは」
「俺達だけだ。・・・お前、朝飯は?」
今日の朝飯は・・・卵とパンあるし、トーストか。
慣れた手つきで目玉焼きを作り、パンを焼く。トースターが無いからわざわざ火をおこす。
「「いただきまーす」」
それぞれ食事をとる。今日は何しようかな・・・
「主!大変です!」
「イズモちゃん!やべえ!」
「どうしたナッツ、マサムネ。コロンどこ?」
「そうだぞ!あの変態どこ行った?」
「いやそれですね、コロンさんが」
「誘拐されちったのよ!」
「何やってんだバカ!」
「落ち着けロキ!・・・で、現在の座標、誘拐したバカ、分かってんの?」
「はっ。現在フィールド「マングローブフォレスト」から北西方面へ3キロ。そしておそらくPKギルド「スパイダーズ」による犯行かと」
「ちなみに持って行ったのは召喚術士だけど、付き添いは盗賊、死霊術士だった。まあ武器で判断したけど。」
「上出来だ。・・・来い。下手人は必ず殺す。」
「おうその意気だぞイズモ!」
「わかりました。」
「わおイズモちゃんキレたわ・・・」
プレイヤーランキング3位、「冷酷非情のイズモ」の二つ名をもつ男が動き出す。
「行くぞ。攻撃。」
しかし、北朝鮮の言葉を使った理由は誰にも分からなかった。
「まったく、これでも女よ!もうちょっとましな運び方しなさいよ!なんで小脇に抱えるの?」
「うるせえこのビッチ!上の口も下の口も塞ぐぞ!」
「あんたも変態じゃない!」
拘束されたコロンは、小脇に抱えられ、運ばれていた。
(ふーむ、この拘束、ほどくのに時間かかるタイプね・・・)
しかし、腐ってもランカー。冷静に分析を行う。
(この調子だと、アジトで武器や身ぐるみ剥がれて、・・・テンプレね)
そう考えると、すぐ腰の短剣を抜く。こういう拘束は斬ると解ける。
(まあ、あのマスターなら間違い無く来るわね。・・・そうなるとこいつら、おしまいだ・・・)
「急に静かになったな。観念したか?」
下卑た笑いを浮かべながら、男は聞く。
「ええ。まああなた達もしておくのが身のためね」
「ははは!こいつ、まだ助けてくれると思ってやがる!」
彼らは、自分達の元へ災厄が来ることを、まだ知らない。