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エターナルトラベルオンライン  作者: 鯖の味噌煮
11/19

#11 偽物じゃない


自我の破壊キャンセルが生んだものは、疑心暗鬼。

自分は、本当の自分じゃ無い?じゃあ本当の自分は?破壊されてしまった。本当の自分は永遠に帰ってこない?

――そうだ。お前は本当のお前じゃあない。

――そして、本物も帰ってこない。

――もう、お前は変わってしまったんだ。

「うっ、うわああああああ!!」

夢。夢は醒めた。でも・・・

腕を横に振ればメニュー画面が出てくる。つまり、あれは夢じゃない。自分は偽物。まだ、醒めてない。

「落ち着けよ・・・俺は、俺は・・・本物なんだ・・・」

――お前は本当のお前じゃあない。

「ひっ、うっ、ううっ・・・」

夢の中のことを思い出す。涙が溢れる。

「止まれ、止まれよ!・・・止まってよ・・・」

『まるで、存在そのものが無かったかの様に』

イレースの言葉がよみがえる。心的外傷トラウマを掻き回される。当然涙は止まらず、さらに溢れる。

「うぇ~い、イズモ~、狩りいかね?」

「マスターの腕ならしもかねてさっ!」

「先輩、無理なら言ってくださいね」

クロト、ゲンジ、フレイルから声をかけられる。

「悪い、そんな気分じゃ無い。」

俺は反射的に後ろを向いて、答える。

「あれ、イズモ、なんか鼻声だね、どうしたの?」

「別に、関係無い!」

「ふーん、」

いきなりクロトが俺の前に現われる。こいつ<転移魔法テレポート> (意思制御版)使いやがった。

「イズモ・・・どうして泣いてるの?・・・」

「もういいんだ。ほっといて・・」

「話してよ。悩みがあるならさ。」

「ほっとけって・・・ ほっとけっつってんだろ!」

しまった。怒りにまかせてクロトを突き飛ばしてしまった。

「ク、クロト、ごめん!」

クロトは何も言わず、殴り飛ばしてきた。

「ちょ、クロト!」

「クロ先輩!それはダメです!」

ゲンジとフレイルが即刻止める。

クロトのパンチは、痛くない。痛くないけど、痛い。

「ほっとけるかよ!あんたは俺の、俺達のマスターだ!あんたはいっつも、人の悩みは聞いて!自分の悩みは抱えたまんまで、後回しだ!少しは俺達を頼ってくれよ!何のための、俺達なんだよ!・・・少しでいいんだ。話してくれよ・・・ 俺、気が気じゃ無くて、倒せるモンスターも倒せねえよ・・・」

クロトの言う通りだ。俺はいつも悩みを抱えていた。抱えっぱなしだ。

「本当に、頼っていいの・・?」

「当たり前だ!」

涙が溢れる。俺は、こんなにも信頼されていたんだ。

「俺は、この前のレイドで、ロキを解放アウェイクンしたんだ。能力は、全て破壊キャンセル、そして消去デリートする。俺は、あいつのデータを、存在を消してしまったんだ。そして、俺の自我も壊してしまったんだ。そしたら、夢で、お前は本物じゃない。本当のお前は永遠に帰ってこないって言われた。・・・怖いんだ。本当に。あんなボスよりも、自分が。寝ても、醒めても。俺が、俺じゃない気がして・・・」

全部言い終える頃には、また泣いていた。クロトも泣いてた。

「辛かったなあ・・・もう大丈夫だ・・・。お前はお前だ。変わらない。お前は、いつもの俺達のマスターだ。」

「ああ、・・・俺、ほんとダサいマスターだな」

気づけば、笑っていた。安心、感謝・・・いろんな気持ちが混ざって、形容できない。

「ありがとう・・・」

「こちらこそだよ・・・イズモ~!」

クロトが泣きながら俺に抱きつく。なんだろう、この安心感。そして、甘い香り。

「えっ、クロトって、まさか、女性?」

「え、そうだけど。知らなかったの?」

「う、うおお、ちょっ、クロト、離れろ~!」


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