#10 後悔
「!!」
急に目が覚めた。ここは・・・ギルドハウス?そして、俺の部屋。俺はいつの間に帰って来た?
「まったく、イズモさんいつになったら目が覚め・・イズモ?」
「ああ、今目が覚めた。」
「う、うわああ!イ、イレースさん!イズモさん、目ぇ覚ました!」
「なにい!」
慌ただしく階段を上る音。
「イズモォ!」
イレース、声でかい。
「少し席を外してもらえるか?」
「はい!」
「イズモ、結果から教えよう。」
イレースによる報告を聞くことになった。
「まず、〔感染病龍〕は討伐成功。これはイズモ、お前の功績だ。」
あのドラゴン強かったもんなあ・・・そんなことを考えていると、イレースが真剣な声でこう言った。
「しかし、奴からのドロップ品が一つも無かった。」
ドロップ品。特定のモンスターを倒すと落ちる素材アイテムや武器の総称である。通常、今回のようなレイドバトルだと確実に強力なアイテムを落とす。しかし、それが無い。何かのバグか?
「そこで、<痕跡調査>スキル持ちのプレイヤーに調べてもらったのだが・・・痕跡、それどころか存在痕跡すらも無かった。まるで、存在そのものが無かったかの様にな。」
「な、存在痕跡も無いのか!?」
「ああ、心当たりとか、無いか?」
「そんなもの・・・」
言ってて気づいた。<絶滅剣;死去>。あの悪意の奔流ならできる。しかも、あのときの俺の感情・・・
――殺ス、絶対に殺す!
――消えろ。消えちまえ!!
意思制御。
己の意思の力。
正の感情に発動する物なら当然、負の感情にも働く。
消した。俺が、あのドラゴンの存在を消去した。たとえ、それがいかに酷いことをしても、された側が絶対にしてはいけない行為。それを、俺が行った。
俺は普段、モンスターを殺すことにも躊躇いを覚える。それなのに、あのときはそんな躊躇などなかった。
つまり、俺の自我の破壊。ドラゴンだけじゃ無い。俺自身にも被害があった。
その事実が、俺に津波の如く襲いかかる。
「夢なら・・・醒めてよ・・・」
気づけば、口から零れ出ていた。