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幼女ヒロインは女の子を攻略しました ……どうしてこうなった?  作者: 九條葉月
第五章 聖女と○○○○編

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第4話 リュースVSアルフレッド



 私が自分の胃に回復魔法を掛けていると、リュースとマリーは固く握手を交わしていた。なにやら分かり合えたらしい。めでたしめでたし。


『助言。アンスールにとってはめでたくない展開だと思われる』


 はいウィルド。逃避しているのに現実へ引き戻すのは止めてください。


『助言。現実逃避しても嫁が増え続ける運命は変わらない』


 そこは『運命の破壊者シリアス・デストロイヤー』としてなんとかならないのかな?


『無理。そもそも運命を破壊した結果として嫁が増えるのだから諦めるべき』


 無理らしい。どうしてこうなった?


 私が頭を抱えていると(なぜだか)満足げな様子のマリーが近づいてきた。文字通り尻尾を振りながら。


「ふふ、さすがはお姉様ですわ。すでに王太子殿下を攻略なさっているとは!」


 いやしてないから。……してないよね? してないといいなぁ、なぜ妖精さんたちは哀れみの目を向けてくるのかな?


 現実から目を逸らす――と、また別の現実が目に飛び込んでくる。具体的に言うと侯爵令嬢なマリーさんがメイド服を着ている現状だ。


「あの、マリー。さっきは聞けなかったけど、なんでメイド服なんて着ているの?」


 何をしているかは聞いたけど、何でメイド服を着ているかまでは聞いていなかったんだよね。


「もちろん、レナード家に潜入するためですわ。そして弟様とどちらが『姉・兄(うえ)』か決着を付けないといけませんもの。長子がお姉様である以上、どちらが第二子うえ第三子したになるのかは重要な問題ですもの」


 とりあえず姉だの第二子だのについてはまるっと無視するとして。一応はお説教しなきゃいけないだろう。いや今までも「尻尾を出すと竜人だとバレて戦場に連れて行かれちゃうぞー?」系のお説教をして、失敗しているから、成功する確率は低いけれど。


「マリー。あなたは侯爵令嬢なのだからメイド服を着てはいけないよ。侯爵家っていうのは貴族の中でも二番目に高い家格なのだから。マリーが軽率な行動をすればヒュンスター家だけではなく貴族制度そのものが軽く見られてしまうんだよ?」


 私がとても常識的なお説教をしているとナユハが目を丸くしていた。


「リリアってときどき常識人になるよね。ときどき。ほんとうにときどきだけど」


 基本的には非常識人みたいな言い方は止めてもらえるかな?


『リリアちゃんは原作ゲームでも貴族としての教育はちゃんと受けているし、悪役令嬢(ファンディスク)になると『貴族としての常識を無視するヒロインにお説教する』系のキャラクターになるものね。意外と作法とかにはうるさいんだよね~』


『感心。王妃としての教育は着々と進んでいる』


 はい愛理。原作ゲームだとかファンディスクだとか口にしないように。そしてウィルド。そんな教育なんて進んでないから。


 私が突っ込んでいるとマリーは不思議そうに小首をかしげた。


「メイド服、似合っていませんか?」


「いや似合っているよ? 特にメイド服を押し上げる胸部装甲は未来の成長を期待できて素晴らし――ごほん。でもねマリー。やっぱりヒュンスター侯爵家の娘さんとしては……」


「大丈夫ですわ。どうせヒュンスター家はお兄様が継ぎますもの。ときどき王宮まで行ってお父様のお手伝いをしているようですし」


「そういう問題じゃなくてね……」


 どう説得したものかなぁと頭を悩ませていると――今日の本来の目的、アルフを乗せた馬車が到着した。


 来た!

 見た!

 勝った!


 馬車から降りてきたのは我が愛しの弟アルフレッド! 今日もその可愛らしさで世界を光に満たしている!


「なるほど、これが噂の『リリアの弟バカ』か」


 リュースが興味深そうにつぶやいた。なにやら王宮でも噂になっているらしい。さすが我が弟だその可愛らしさが王宮にまで轟くなんて!


「……たしかに普段よりダメだね」


 いや『普段より』ってなんやねん。まるで普段の私もダメみたいな物言いじゃないか。



「……さっきまではまともに貴族としてのあり方を説いていたのに……」

『いやぁ、まともだったかなぁ? 胸部装甲とか言ってなかった?』

『首肯。8歳児の胸部に欲情するとはさすがアンスールである』



 ナユハ、愛理、ウィルドが何かを言っていたけど弟に出会ってテンションMAXな私には聞こえなかった。


 アルフが私の目の前に立ち、花がほころんだような素敵すぎる笑顔を浮かべた。


「お姉様。お久しぶりです」


 麗しの弟ボイスを受けて私は思わずアルフに抱きつ――ナユハさんに首根っこ掴まれて制止されてしまった。残念無念。


「久しぶりだねアルフ。あ、とりあえず紹介しておこうかな」


 ナユハと愛理はもう知っているので、マリー、ウィルド、リュースを紹介していく私。ちなみにウィルドは空気を読んで羽根をしまい、瞳の色も変えてくれた。


「お姉様の妹、マリー・ヒュンスターですわ」


 実の弟相手に微塵の迷いなく『妹』と自己紹介するマリーだった。この子つよい。


「姉さまの弟、アルフレッド・レナードです」


 そしてごく普通に挨拶し返すアルフ。妹って部分は無視ですか?


「…………」


「…………」


 しばらく無言で見つめ合い、固く握手するアルフとマリー。


『感動。妹と弟の絆が結ばれた』


 よく分からないことをほざくウィルドだった。


 そのあとウィルドは(驚くべきことに)当たり障りのない挨拶をしてくれた。まるで至極真っ当なメイドさんのように。普通にできるのなら普段から普通にして欲しいのだけどなー。


 そして。

 リュースとの挨拶の段階になって。リュースとアルフの間に火花が散った。ような気がした。


「お初にお目にかかります。リリア姉さまの弟、アルフレッド・レナードです」


「……リュース・ヴィ・ヴィートリアだ」


「存じております。最近姉さまに粉をかけている男性(・・)がいるとかで」


「…………」


 アルフの発言にリュースが笑顔のまま固まった。あの、アルフさん? 粉をかけるって、あなたそんなに口が悪かったでしたっけ?


 あとリュースの性別が女性であることは本来なら国家機密なので、アルフがリュースのことを『男性』だと思っているのは仕方なかったりする。



「……つまり、今のアルフ様は『大切な姉をぽっと出の男に取られそうになっている弟』なわけだね」

『何その展開、萌えるね!』

『肯定。なかなかに愉快な展開であると評する』



 ひそひそとそんなことを話すナユハ、愛理、ウィルドだった。人ごとだと思って……。


 本来なら不敬罪一直線なアルフの発言だけど、『弟に厳しい処分を下したらリリアに嫌われる可能性がある』のでリュースが不敬罪うんぬんと言い出す可能性は限りなく低い。

 いやさすがにアルフがそこまで考えているとは思えないけど――あぁでも『笑顔の腹黒鬼畜魔王』と恐れられるお父様の息子だものね、確信犯であっても不思議じゃないのか。


 ニコニコと笑顔を浮かべるリュースとアルフ。一見すると美少年と美少年(美少女)が笑いあっているだけなのでかなり眼福な光景であるはずなのに、またまた胃が痛くなってしまうのはなぜだろうね?


 ど、どうしてこうなった……?










 璃々愛

「胸部装甲って……何だかんだ言いながらもリリアちゃんって女好きだよね」


 オーちゃん

「まぁ、お前の来世だしな」


 璃々愛

「む、失礼な。確かに私は可愛い女の子に萌えるけど、リリアちゃんみたいに口説いたことはないよ?」


 オーちゃん

「…………、……そうだよなぁ。アレで口説いている自覚がないんだよなぁこいつって」



次回、11月12日更新予定です。


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― 新着の感想 ―
[一言] はいはいどうこうどうこう そら皇太子で通ってるんだからこうなる
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