1.最近のリリアさん
本日2回目の投稿です
なんだか最近ぽんぽんと嫁やら愛人やら夫(女の子)やらが増えている気がするけど、気のせいだと信じたいリリアちゃんです。
貴族の恋愛なんて(許嫁を用意できる上位貴族以外は)デビュタントを迎えて社交界デビューをして、夜会でキャッキャウフフと結婚相手を見つけるものなのにね。どうしてこうなった?
ちなみに前世の貴族社会におけるデビュタントは18歳が多かったらしいけど、この世界では15歳、王立の魔法学園入学式後の夜会がデビュタントとなる。許嫁のいない子は学園生活と夜会で結婚相手を見つけましょうねってこと。
魔法学園は前世における高等学校みたいなもの。貴族子女に小学校や中学校はなく、家庭教師を雇っての学習が基本となる。
貴族子女は『基本的な教養』として古典に礼儀作法、ダンスや刺繍、最低でも三カ国語を習得しなきゃいけないのでかなり大変だ。けれども、その『基本的な教養』を習得したあとは比較的自由な時間を過ごせるのが家庭教師制度のいいところだと思う。
そして私は習得するべきものをそれなりに学び終えているので最近は結構な自由時間を与えられるようになってきた。具体的に言えば午前中に頑張れば午後が丸々自由時間として使えたりする。
そう、自由時間。
であるはずなのに、なぜか今日も今日とて王妃エレナ様の膝の上に乗せられて猫かわいがりされている私だった。
いやそれは別にいい。まったくよくないけどいいということにして。問題は、本日予想外の来客がレナード邸にやって来たことであり……。
『……ふむ、これはまた面白い状況になっているな』
まったく面白くなさそうな顔で発言したのは国王陛下の元正妃であり、竜列国のお姫様でもあるミヤィスン様 (幽霊)。
正確には、ミヤ様は病死しただけで離縁されたわけではないから扱いとしてはまだ正妃ということに――なるのかな? ちょっと微妙だけど、まぁ『元王妃』よりは『王妃』という方が適しているような気がしないでもない。
で。
ミヤ様がここにいるということは、そうなのだ。
私を膝に乗せる王妃エレナ様。
そんな私たちを見据える王妃ミヤ様。
あははー室内にダブル王妃様が揃っちゃいましたよーそろそろ私の胃が死ぬぞー?
しかもエレナ様とミヤ様、どことなく剣呑な雰囲気を漂わせているし。
あれですか? エレナ様からしてみれば『今はわたくしが王妃ですし。今さら出てきて何のご用かしら?』って感じだし、ミヤ様からしてみれば『後釜に座った第二婦人のくせに』って感じの展開ですか?
『いやいや違うだろー』
『エレナもミヤもそんなことで敵対しないってー』
『どう考えてもリリアを取り合う展開だろー』
妖精さんたちから総ツッコミされてしまう私だった。いやいやそれも違くない? ミヤ様はどうか知らないけど、エレナ様の旦那愛はとても有名なんだからさ。
私も(膝に乗せられながら)何度も国王陛下との惚気話を聞かされていたし、いくら天然女たらし(?)の私でもエレナ様たちから取り合われる展開は無いと思うんだけどなー。
そう、無い。
エレナ様は国王ラブな人で、私はたぶんリュース(娘)のお嫁さん候補として可愛がられているだけ。
だからナユハさんと愛理さん。冷たい目で私を見つめるのは止めてくれませんかね?
「……やっぱり人妻も守備範囲……」
『そろそろ笑えなくなってきたよねー。まさか王妃二人を手籠めにするなんて……』
私の耳に届くひそひそ話をするナユハと愛理だった。
このままだと後々が恐いから何とかして言い訳――じゃなくて釈明しようとしていると。ふと、こちらに向けられた視線に気がついた。ナユハや愛理ではなく、エレナ様やミヤ様でもない視線……。
気配の方に横目を向けると、そこには――ドアの隙間から顔を出しながらこちらを見つめるMyお母様 (幽霊)の姿が。いや幽霊率高いなここ。
『……うぅ、リリアは私の娘なのに……でも今さら母親面して出て行くわけにも行かないし、でもこのままじゃ母親の地位を取られちゃうし……』
なんかもう呪いじゃないのかってくらい重々しい雰囲気を発するお母様だった。
いや自覚があるようで何よりだけど、あなたは本当に母親面する資格はないというか……でもあのときは妄執に囚われていただけで、昔は私のことも娘として愛してくれていたみたいだし……それを考えると無下にはできないというかしたくないというか……。
ど、どうしてこうなった?
次回、10月5日更新予定です




