ダンジョン攻略(ほぼ瞬殺)
話は何とかまとまったので、さっそくダンジョンへ。
別に転移魔法を使っても良かったのだけど、ここはあえてマリー(ドラゴンver.)の背中に乗っていくことにした私である。
もしも世界の終わりが起こったらマリーに対処してもらうけど、街の近くにいきなりドラゴンが現れたら大混乱に陥るからね。ここは今のうちにマリーに変身してもらって『このドラゴンは味方ですよー』と知らしめておかないとね。
というわけで、マリーにドラゴンに変身してもらう。相変わらずの美人ならぬ美龍である。
「おぉ、噂は聞いていたが……」
「でっけぇ……」
「こんなもんを倒したのかよリリア様とラミィ様……」
ギルド長や冒険者パーティ暁の閃光の皆さんがあんぐりと口を開けて驚いていた。まぁドラゴンを前にして驚くのは想定内なんだけど……なんで私とラミィが怖がられているんだろう? こんなにも美少女&美少女だというのに。どうしてこうなった?
「リリアは自覚がなさ過ぎる。ドラゴンなんて『国』が相手にしてやっと倒せるかどうかって存在なのに」
ナユハから呆れられてしまった。どうしてこうなった?
まぁとにかく。マリーの紹介も終わったので、マリーの背中に乗ってダンジョンへと移動だ。同行するのはナユハとミリス、ラミィ、そして(シナリオライターとしての知識を期待して参加してもらった)愛理だ。
しかし、ダンジョンか。
とうとうこのときが来たか!
転生者にとってダンジョン挑戦はもはやテンプレだからね! 知恵を振り絞ってのギミック解除! 続々と現れる敵! 危機の中で育まれる友情とか愛情! 愛と勇気とチートの力で倒されるダンジョンボス! 乙女のロマンだよね!
「乙女?」
「乙女?」
『乙女?』
続々と首をかしげるミリス、ラミィ、マリー(ドラゴンver.)であった。私が純真無垢な乙女で何か問題があるとでも?
『わかる。ダンジョンはロマン』
ただ一人、愛理だけが深く頷いてくれた。ガッシリと握手を交わす私と愛理である。
『いいよねダンジョン攻略! ボク☆オトでは出さなかったけど、やっぱり異世界ものなら一度は挑戦されたいよね! 【――こうしてリリアたちは南部ガングード領に存在するダンジョンに到着した。岩と岩が連なった何の変哲もない場所。しかし、目ざといリリアは気づいていた。その岩の一つに、明らかな人工物である三つの窪みが存在していることを】……』
おぉ、原作ゲームのシナリオライターがダンジョン攻略編(?)を語り始めた。これはかなりレアなのでは? なにせこの世界にとっては創造神による語りみたいなものだし。いや創造神は別にちゃんといるけどね。
私が感動している間にもマリーは順調に進む。
ミリスに案内された場所は、ガングード領都の外、石とレンガで作られた城壁を越えた先にある砂漠のど真ん中だった。
広く広く砂漠が広がる中。小高い丘というか岩山がそそり立っている。どうやらこの地下にダンジョンが広がっているらしい。
ほうほう? いかにも扉として動きそうな岩が。これがダンジョンの入り口ってところかな?
お、扉(暫定)の表面に三つの窪みが。RPGとかならここに三つのアイテムをはめ込むと扉が開くという展開。う~ん、どこかにモンスターとか、物を隠せそうなところは……。
まるでゲームのような展開を前にして私がウキウキしながらアイテム探しを始めようとすると――
『ふんっ』
ドラゴン姿のままだったマリーが岩の扉を力づくで引っぺがした。なんというパワープレイ。ギミックを力で解除するって……。
そしてそのままダンジョンの入り口に首を突っ込んで、竜の息吹を吐き出すマリー。一度だけじゃなく何度も何度も。
これは、あれかな? 蟻の巣穴に水を流し込むやつの炎バージョン。魔物たちの阿鼻叫喚が聞こえてくるかのよう。
あー、ダンジョンの中に入るのは禁止されたから、ならば外から燃やし尽くしてしまえ的な?
倒したというか焼いた魔物の魔力を吸収し、さらに威力アップしたブレスを叩き込むマリー。
一撃で町を焼き尽くす威力を持つ竜の息吹をドラゴンって連発しちゃうんだよねー。そんなドラゴンを刀でぶった切れるラミィ、やはりどこかがおかしい。
「ラミィ様も、リリアだけには言われたくないんじゃないかな?」
どうしてこうなった?
「……ん?」
なんだか愉快な音が聞こえるなーっと思って鑑定眼を起動すると、ダンジョン内部にいる魔物をマリーが倒している判定が出ているのかマリーのレベルが凄い勢いで上がっていた。テレレレッテッテレー♪ テレレレッテッテレー♪ マリーは聖龍に進化した♪
ちなみにマリーは(竜人なのでドラゴンの分類が当てはまるか分からないけど)アイス・ドラゴンだと思う。普通は氷のブレスを吐くはずなのだけど、今吐いているのは炎系のブレスっぽい。どうやら炎のブレスも吐けるみたいだね、理屈はよく分からんけど。
『ぷはっ』
疲れたのか、それとも燃やし尽くしたと判断したのかマリーがダンジョンから首を引き抜いた。
一応鑑定眼でダンジョンも鑑定。……うん、ダンジョンのほとんどの区画が焼き尽くされているね。もはやドロップ品も燃えカスになっているのでは?
「…………」
こうして。私にとって初めてのダンジョン攻略はそのほとんどが一瞬で終了したのだった。どうしてこうなった?
次回、10月10日更新予定です




