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是非も無し



「……まぁ、話は分かった。お前さんも意外とちゃんと考えているようだな」


 腕組みをしながらうんうんと頷くギールさんだった。その物言いだと、普段の私が何も考えていないちゃらんぽらんみたいに聞こえるんですけど?


「噂では考えなしに女に手を出しては嫁を増やす、師匠ガルドを越える女たらしだと聞いていたんだがなぁ」


 おい。

 どういうことやねん。

 私がいつ、誰に対して手を出したというのか。いつ考えなしに嫁を増やしたというのか。いつどこで女をたらしたというのか。まったく失礼なギルド長である。


「…………」


「…………」


「…………」


 ナユハ、マリー、ラミィからとてもとても冷たい目を向けられてしまった。どうしてこうなった?


「リリアが女たらしじゃなかったら、一体何だというのかな?」


「さすがのわたくしでも『ふぉろー』できませんわ、お姉様……」


「え? まさか本当に自覚がないのかい? あれだけ手広くやっておいて?」


 追撃してくるの、やめてもらえません? どうしてこうなった?


「……なるほど噂は本当ってことか」


 ナユハたちの反応を見て納得するギールさんであった。どうして以下略。


「ま、いいだろう。竜殺しのお前の実力は折り紙付きだ。ダンジョンに放り込んでも、まぁ何とかするだろう。ここは冒険者として登録して――」


 そう言いながらギールさんがソファから腰を浮かせると、



「――ちょっと待ってもらおうか!」



 バーン! と、応接室の扉が開かれた。予想外の展開に私たちがドアの方へ首を向けると、そこにいたのは男女四人組だった。


 いかにも冒険者パーティといった風貌。

 その中心にいた、パーティリーダーらしき男性が一歩前に出た。


「話は聞かせてもらった! そんな年端もいかない少女を冒険者として認め、しかも未確認のダンジョン探索を任せるなど! ギルマスが許してもボクたちが許さん!」


 大演説をぶちまけた男性。


 そんな彼をあえて無視して、ギールさんが扉の向こう――冒険者パーティの後ろにいるギルド職員を睨め付けた。


「おい、なんでこいつらがここにいる? 裏は冒険者立ち入り禁止のはずだろうが」


「ひ!? す、すみません! でもでも! 『暁の閃光』はグランタートルを討伐しまして! 討伐場所や素材買い取りについてお話を伺おうとですね! やはり機密を考えると裏にお通ししないと!」


 早口で弁明する職員さんだった。よく分からないけど、グランタートルってのはレアな魔物らしい。


「……ちっ、あのグランタートルをか。言動はともかく優秀ではあるんだよな」


 呆れているのか感心しているのか。微妙な顔をするギールさんを置き去りにして、パーティリーダーらしき男性が剣を私に向けてきた。


「そこな少女! ダンジョンに潜るというのなら、まずはボクたちを倒して実力を示してからにしてもらおうか!」


 …………。


 お? これはあれかな!? 冒険者ギルド定番の腕試し展開!? まだ無名の主人公がその実力を認められる最初のイベント的な!?


「どこが定番なのかな?」


「お姉様ほど有名な方は、そうはいないと思いますが……」


「ドラゴンを複数倒しておいて、今さら腕試しも何もないよね」


 なぜか呆れられてしまった。異世界転生ものではお決まりの展開だというのに。解せぬ。


 ちなみにその後は演習場で腕試しということになり。冒険者パーティ『暁の閃光』は私の威圧(ズウィン)によって轟沈した。



「……あぁ、これが『ナレ死』ってやつかぁ……」



 遠い目をしながらつぶやくナユハさんだった。いいかげん愛理は雑な前世言葉を広めるのは止めるべきだと思います。




次回、8月30日更新予定です

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! まさか覗き聞きの癖に半分しか聞かないとは…そして折角のテンプレですけど威圧だけで片付けたとはw
[一言] そのグランタートルとかいうのはドラゴンよりもずっと強い魔物なのかね? 情報を聞いた時点でちょっかいかけるべきじゃないだろうに。情報に疎いのは冒険者としては致命的なのでは・・・ ま、まあ・・・…
[一言] 撲殺聖女の腕試し買って出るとはまあ気持ちもわからないでもありませんがやめておいた方が賢かったですよねぇ お祖父さまぐらいじゃないと相手にもならないわけですし
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