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ギルドマスター(?)



 冒険者さんたちの微笑ましい交流は見なかったことにして。


 私は酒場に隣接する受付スペースへと視線を移した。どうやら壁一面に張られた依頼書を見て、受付で受注処理をするという形式らしい。なんというか、これまたテンプレだね。


 今回は冒険者登録がメインだし、依頼主ミリスが同行しているのでそのまま受付してしまいましょうか。


 というわけで、複数ある受付の中、空いている受付へと向かって歩を進める私である。


「ひ、ひぃいいい!?」


 なぜか私を見て悲鳴を上げる受付嬢さん。見た目だけなら眼鏡の似合うクールビューティーさんなのに、なんか色々と台無しだ。


「……あんなに怖がって……」

「お可哀想に……」

「殉職だね。せめて墓所には綺麗な花を飾ってあげよう」


 大聖教式祈りを捧げるナユハ、マリー、ラミィだった。どうしてそうなった?


 受付に到着すると、『もはやこれまで!』系の壮絶な顔をした受付嬢さんがキッと私を見つめてきた。


「せ、せ、せ、聖女様! ほ、ほ、本日はどのような、ご用件で!?」


「はい。冒険者登録をしようと思いまして」


「…………………………………、…………………冒険者、登録?」


「はい」


「……あ、あぁ! 後ろにいるメイドさんや護衛の方ですか!? そうですよねそうだと言ってください!」


「私です」


「へ?」


「私が、登録しようと思いまして」


「…………………………………勘弁してください」


 受付嬢さんの姿がカウンターの影に消える。どうにもよく見えないけど、どうやらその場で土下座してしまったらしい。


 どうしてこうなった?







「ギルド長! 零号案件です!」

「大丈夫よラーラ! 気を強く持って!」

「代わりはしないけど応援しているわ!」


 と、他の受付嬢さんたちが騒ぎ始めた。なんというかギルドに魔王でもやってきたと言わんばかりの騒ぎ具合だ。


「あながち間違っていないのでは?」

「間違ってないね」

「リリア嬢はもうちょっと自覚するべきだね」


 魔王の自覚って何やねん。どうしてこうなった?


 私が遠い目をしていると、受付の奥の扉が激しい音を立てながら開き、中から一人の男性が現れた。


 スキンヘッド。

 マッスル。

 顔に残る古傷。


 いかにも『ギルド長』って感じの見た目をした男性だ。これで事務員だったら逆に面白いね。


 そんなギルド長(?)は未だに土下座する受付嬢さんを見やり、私を睨め付けてきた。


「おうおう、うちの職員に土下座させるたぁ、大聖教の聖女様ってのはずいぶんと偉ぇみてぇじゃねぇか」


 ポキポキと拳を鳴らずギルド長(?)。


 なんというか、姐御の口調をさらに乱暴にしたような感じのしゃべり方だった。むしろギルド長(?)にそっくりなしゃべり方をしている姐御(見た目は美女)、もうちょっと生き方を見直した方がいいのでは?


 まぁ、姐御の生き様は今さらどうにもならないとして。


 勘違いされたままなのも何なので、私はギルド長(?)に向けて猫かぶりスマイルを向けたのだった。


「いえ、土下座させるつもりはなかったのですが……ちょっと、冒険者登録をしたいと申し出たら土下座されてしまいまして」


「冒険者登録だぁ?」


 ギルド長(?)は周りの受付嬢さんを見て、本人に確認し、どうやら私の発言が事実であると認識したらしい。


「――冒険者登録くらいで騒ぐな! このド阿呆が!」


「ぎゃひん!?」


 土下座した受付嬢さん(ラーラさん?)に拳骨を喰らわすギルド長(?)であった。パワハラというか体罰というか。現代日本的な感覚だとドン引きするしかないけれど、まぁこの世界だと普通というか穏当な対応だと思う。こわいな異世界、悪い意味で。





次回、8月10日更新予定です

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやぁ、リリアさんに近付かれるだけで殺されると思うのは流石に失礼でしょう。ヤバい戦力と権力を持つヤバい女の子ですけど、絡まなくても殺されるというのはちょっと風評被害じゃんw 確かに、聖女と…
[一言] そりゃあ聖女が国に一人しかいない人が冒険者ギルドに登録とか一般人には荷が重いやろう
[一言] ラーラさん本当ろくな目に合わないッスねえ・・・。 どこぞの魔王は反省しなさいよ。何?聖女だって? やってることが魔王みたいなんですよ・・・分かって。 つ鏡
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