表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/229

14.解決(パワープレイ)


「親だからと言って、全員が例外なく素晴らしい人であるとは限りません。むしろ、そうでない人の方が多いでしょう」


 夫人は語る。平坦な声で。考えるまでもない事実を告げるように。


「もちろん、立派な親もいることでしょう。ですが、その人は親だから立派なのではありません。元々立派だからこそ、親となっても立派であれるのです」


「…………」


「親だって、人間です。機嫌の悪いときもありますし、出来ないことは出来ませんし、やりたくないことはしたくありません。子供のためと頑張っていますけれど、それだって、無限に力が湧いてくるわけでもありません」


「それは……」


「親だって怒ります。泣きます。怖いものは怖いですし、叫びたいときだってありますし、――嫉妬することも、あるのです」


「…………」


「リリア様はご立派な人間です。二百年ぶりに任命された聖女にして、神と等しき金色の瞳を有しておられます。その歳で多くの国難を排除し、多くの人を救ってきたことはわたくしの耳にも届いております」


「……私はそんな、立派な人じゃないです」


 思わずそう答えると、夫人はどこかもの悲しそうに目を細めた。


「立派じゃないと言えるリリア様だからこそ。本気でそう思っているリリア様だからこそ。――本当に平凡な人間の『弱さ』を理解できないのです」


「弱さ……」


 だからこそ、と夫人は続ける。


「強き御方。どうか。どうか人間の弱さを理解してください。『親』の不完全さを許してあげてください。親だって、一人の人間なのですから」


「…………」


「聖女様に対しての数々の無礼な発言、伏してお詫び申し上げます」


「……頭を上げください。私はそんな、頭を下げられるような人間じゃありません。……こんな簡単なことに、今まで気づかなかったのですから」



 そう、何も気づかなかった。

 何も知らなかった。

 理解しようともしなかった。


 前世の記憶。

 チート。


 そんなものがあったって、私はしょせん子供。10年しか生きていないガキだったということらしい。







 家に帰る馬車の中で、私は悩んだ。どうしたものかと。どうすればいいのかと。


 結論。よく分からん。


 よく分からないので、とりあえず突撃することにした。


「どうしてそうなるのかな?」


 なぜか呆れるナユハさんと、


「まぁ、リリア嬢だからね」


 なぜか馬車に同乗しているラミィだった。


 家に到着。


 メイドさんに、お母様(幽霊)の居場所を聞く。


 肩を回しながら、お母様のところへ。


「――ひっ」


 私の姿を見つけて、小さく悲鳴を上げるお母様。ちょっと前の私なら少し傷ついただろうけど、今の私は大丈夫。――なぜならもう、決めたから。


 動きを止めたお母様に、一歩一歩近づいていく。


 お母様の眼前で立ち止まり。


 存分に暖まった肩を回し。右腕を振り上げて。


 渾身の力を込め。


 今までの不満を。怒りを。悲しみを込めて。



 ――お母様の脳天に、空手チョップを叩き込んだ。



「!? !?」


 幽霊になっても物理ダメージが有効なのか、涙目で頭を抱えるお母様だった。


 そんなお母様に対して、私は満面の笑みを浮かべて――


「――とてもスッキリしました! 色々と言いたいことはありますが、これでチャラ(・・・)にしましょう!」


 心の清々しさを表現するように親指を立てる私であった。





「……う~ん、どうしてこうなった?」


「やっぱり面白いねぇリリア嬢は」




次回、5月30日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リリアさん、大変でしたね、私個人の感想としては今回のリリアさんはギャグ抜きでご立派でしたと思います〜
[一言] これはいつかぶつかる問題だったのだと思う。有名な言い回しで「王は人の心が分からない」というやつかな。 超人でも偉人でもない平凡な母親に教わる大事なこと。サーガの間章の演目にピッタリだね。 …
[一言] チョップで昇天させるのかと思った
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ