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幼女ヒロインは女の子を攻略しました ……どうしてこうなった?  作者: 九條葉月
第九章 剣劇少女編

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06.ダンジョン攻略(瞬殺)




「――この! アホッ子ーーーーっ! 聖女様に告白するとか! 殿下の婚約者に愛を囁くとか! なにをしとるんじゃーーーーーーっ!?」



 ガッツーンっとラミィ様の頭に拳骨するケリィ様だった。いくら妹とはいえ、手甲(鋼鉄製)で殴るのはやり過ぎなのでは?


 ドン引きする私だけど、相変わらずラミィ様にダメージはなさそうで……。今さらながらよくもあんな頑丈な子を倒せたよね私。


「……掌底で身体の内部への直接ダメージだし。むしろよく内臓破裂しなかったよね」


 と、呆れ顔のナユハだった。この子、お爺さまに鍛えられているので格闘に関する知識もあるのだ。


「リリア・レナード様! このたびはうちの愚妹が大変な失礼を!」


 腰を直角に曲げて謝罪してくるケリィ様だった。リーンハルト公爵家の長女からの全力謝罪とか何のイジメだろう? 気の弱い子爵家令嬢ならあまりの事態に失神してもおかしくないですよ?


 もちろんというか何というか、ラミィ様も姉であるケリィ様に頭を押さえつけられ、無理やり頭を下げられていた。つまりはリーンハルト家の公爵令嬢姉妹によるダブル謝罪。どうしてこうなった?


「……すごい、ケリィ様が常識的に謝っている……」


 ボソッとつぶやくナユハだった。そういえば面識があったんだっけ? まぁ、ケリィ様はラミィ様と比べれば(社会人である分)常識的ではあるけど、それでも一般人からしてみれば十分非常識だものね。



『リリアが言うか~?』

『ラミィと比べても非常識なのに~』

『世界で一番非常識なのに~』



 ふよふよと近づいてきた妖精様がツッコミを入れてきた。いや確かに私は非常識な自覚はあるけど、ラミィ様に比べれば常識的だし、そもそも世界クラスの非常識ならスクナ様とか師匠とかいるでしょうに。


「――あ~、まぁまぁ。ケリィ、そんなに妹さんを責めなさんなって」


 ケリィ様の拳骨を見かねたのか姐御が仲介に入った。公爵令嬢相手でも普段の乱雑な口調とか神経図太すぎませんか姐御。


 対するケリィ様は『うげっ』という顔をする。


「……責めてないわよ。お説教しているだけで。まったく、冒険者になると聞いてやっと安心できる(・・・・・)と思ったら、まさか聖女様を口説こうとするだなんて……」


 いや妹が冒険者になって安心するって何ですかケリィ様。まさか妹が冒険中の事故で、というのを狙って――いや、ケリィ様はそういう人じゃないな。


 ラミィ様は堅苦しい公爵令嬢とは向いてなさそうだし、やっと自由に生きてくれるのかと安心したというところだろうか?


「はははっ、まぁそう言いなさんな。リリアは女好きの上に手が早いからな。ラミィが落とされてもしょうがねぇって」


 気安げにケリィ様の背中を叩く姐御だった。いくら何でも気安すぎるので、たぶん前からの知り合いとか、友達なのだろう。


 いやそれは置いておいて。私のどこが女好きなのか。いつ手を出したというのか。姐御からの私評価はどうなっているのか。


 どうしてそうなったと文句の一つも付けてやろうとしていると、なぜかラミィ様が、姐御に対して胸を張った。


「勘違いされては困ります、リュンランド大神官。リリア嬢がボクを落とすのではなく、ボクがリリア嬢を落とすのですから!」


 ものすごいミュージカルっぽいポーズを決めながら宣言するラミィ様だった。今さらだけど私、女。ラミィ様も、女。どうして落とすという前提で話が進んでいるのだろう? どうしてこうなった?


「……ほぉ、意外とリリアの周りにはいなかったタイプだな……」


 なぜか感心する姐御だった。落とす落とさないに関してのツッコミはないらしい。





 私たちがそんなやり取りをしている間。姉弟子と魔導師団の皆さんはちゃんと仕事をしてくれていたらしい。つまりは王宮に突如として現れたダンジョン調査。


 鑑定眼(アプレイゼル)による鑑定や、集まった冒険者による斥候の結果判明したのは……このダンジョンがかなり性格悪いってことだ。


 まず第一層。

 何の変哲もない広間なのだけど、次の階層へと繋がる扉が開かない。


 こういうときはクイズに答えるとか、ダンジョン内で何らかの鍵を入手するなどの『条件』を満たすと扉が開くのがテンプレだ。


 で、第一層の扉が開く条件が、『一年の時が経つ』というもの。


 うん、まぁ、どんな強力な門番(モンスター)を用意したところで、絶対に突破されないという保証はないものね。対してこの条件だと『敵』を一年待たせることができると。


 たぶん二階層目も三階層目もそんな感じの時間稼ぎばかりしているんだろうね。


 ダンジョンとしてそれはどうなの? と思うけど、この場合はたぶん黒ドラゴンが魔力を貯めて、またまた復活するまでの時間稼ぎが主目的だろうからね。こんな条件でもいいのだろう。


 まったくもって性格悪い。


 こんな性格の悪いドラゴンは早急に撃滅するべきだろう。しかも、マリーを傷つけたと言うし。手加減する必要はなしと。


 黒いドラゴンはどうせダンジョンの一番深いところに陣取っているから、ここはさっさとぶち抜いて(・・・・・)やりましょう。


 私が思い出したのは屋敷の庭で『ウォーターカッター』を使ったときのこと。岩を切断しようとしたらついついウッカリ地面を撃ち抜いて温泉を掘り当ててしまったことがあったのだ。


 温泉を掘り当てるほど深く地面を掘れるのだから、ダンジョンの最奥にも届くでしょう。きっと。


 ダンジョンの入り口があるという王宮の中庭、その中心部へと移動する。


 中心部から周囲を見渡すと、ちょうどいい池を発見。その池の水を魔力で操り、空中に水球を作り出す。


 水球の大きさは直径二メートル程度。その水球の周りを風魔法で包み込んで――



「――風力水圧かぜのちからはみずをあっし万物切裂刃ばんぶつきりさくやいばとなる



 たしかこの前使った呪文はこんな感じだった。はず。いや呪文とかいつもテキトーに考えているので自信はないけれど。


 まぁそれはとにかく。それっぽい呪文を唱え、風で水球を圧縮する。無詠唱で魔法を行使できる私がわざわざ呪文を唱えたのは少しでも威力を高めるため。無詠唱より呪文を唱えた方が威力が上がるのはテンプレだしね。


 直径二メートルほどあった水球は風魔法によってすでに私の拳ほどの大きさにまで圧縮されている。この状態で水球を包んでいる風の一部に穴を開ければ圧縮された水が『びしゅー!』と噴射されるのだ。前に一度やっているので威力は折り紙付き。


 しかし私は容赦しない。


 だって私のマリーを傷つけたのだからね。万が一の取りこぼし(・・・・・)もないようにしなくては。


 というわけで今回はさらに魔力を注ぎ込み、思いっきり水球を圧縮する。もうギュッギュッと。ビー玉くらいの大きさに。


 思う存分魔力を込めた私は、呪文と共に水球を包んでいる風に穴を開けた。



「――ぶち抜け! 流圧風破刃(ウォーターカッター)!」



 ちゅっどーん。と。


 かなり地面が揺れた。体感で震度4くらい? ウォーターカッターで地震を起こしたのはたぶん私が初めてでしょう。


 一応“左目”で戦果確認。……よしよし、ドラゴンの“魔石(コア)”をぶち抜いた。いくら何でも魔石が砕けたらもう復活はできないはずだ。


 ふっ、他愛ないもんだぜ。


 私がキメ顔でナユハやミリスに振り返ると――



 ――地面が揺れ始めた。



 あれ? ウォーターカッターは撃ち終えたんだけどな? まさか本物の地震かな?



「そ、総員退避!」

「ぼ、防護結界展開! 各自! 自分の身は自分で守りなさい!」



 ケリィ様や姉弟子が慌ただしく指示を出している間にも中庭の地面にはヒビが入り、中心部から崩れていって――


 あれ?


 これ、崩落してるよね?


 中庭の中央から崩落しているということは、真っ先に巻き込まれるのは中央にいた私になるわけであり……。


 ど、どうしてこうなった……?



誤字脱字報告ありがとうございます

随時訂正したいのですが、現在一人で1500件以上の誤字報告(漢字変換)をしてくる人がいるので、それに紛れてしまうと見逃してしまうかもしれません。すみませんが誤字報告はまた後日お願いします。


次回、2月10日更新予定です


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― 新着の感想 ―
[良い点]  残念ながらラミィさん。あなた既に落とされてますヨ。  やっぱリリアは大概マリー好きだよなあ。 [一言]  そりゃあそうなるに決まっとるやろがい!!  1500件!?……暇なんかな?(…
[一言] どないすんねんこれ
[良い点] 震度4程度…マグニチュード4~5ぐらいなら小型核弾頭~長崎原爆に相当します。それがビー玉サイズにまで収束して放つとか…リリア恐ろしい子!!!
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