表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女ヒロインは女の子を攻略しました ……どうしてこうなった?  作者: 九條葉月
第九章 剣劇少女編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

194/229

閑話 黒いドラゴンの悪あがき




 今年。ヴィートリアン王国は災難に見舞われ続けた。死者の王(ノーライフキング)による王国転覆こそ事前に防げたものの、レナード領へのワイバーン襲撃、王妃を呪っていた悪魔の登場、『漆黒』によるドラゴン召喚、王太子の暗殺未遂に、黒いドラゴンによる王城破壊。と、一年もしないうちに災厄に襲われすぎた。


 隣国である神聖ゲルハルト帝国は『偽物の聖女を擁立した報いだ』としきりに宣伝しているが……愚かしい話だ。そもそも聖女リリアがいなければ国が何度滅んでいたか分からないのだから。


 王城の再建と、結界の修復。

 漆黒の捜索。


 現在魔導師団はこの二つに全力を傾けており、緊急性の低い黒ドラゴンの御魂封じなどは後回しになっているのが現状だった。

 もちろん理想を言えばすぐにでも封印してしまった方がいい。しかし、余裕がないのだからしょうがない。


 黒いドラゴンが再び魔力を集めて復活するためには年単位の時間が必要であるし、宮廷魔導師が魔力遮断の措置をしているので当分復活する心配はない。それよりは王権の象徴である王城の修復を優先するべきであるし、漆黒の痕跡が残っているうちに捜索追跡した方がいい。そういった判断での後回しであった。


 そんな、未だに騒然とする魔導師団の庁舎の中。慣れた足取りで廊下を進むのは王宮大神官でありリリアの姐御でもあるキナ・リュンランドだった。


「――よ~う! まど~師団長どの! 調子はどうだい!?」


 ノックすらせずに師団長執務室の扉を開けるキナ。そんな彼女に胡乱な目を向けるのはこの部屋の主、魔導師団長にしてリリアの姉弟子であるフィー・デファリンだ。


「良いように見えるかしら?」


「はははっ、まるで見えねぇな」


 フィーの目元にはくっきりとしたクマが浮かんでいるし、机の周りにはポーションの空き瓶が転がっている。せっかくの銀髪美女が台無しだ。


 そんな『はーどわーく』ばかりしているから結婚できないんだ。

 ポーションに睡眠不足解消の効果なんてあるのか?


 と、軽口を続けられない程度にはフィーの目は据わっていた。


 変に刺激すると容赦なく攻撃魔法が飛んでくる。長い付き合いからそう察したキナはさっそく本題に入ることにした。


「漆黒の調査はどうだい?」


「手がかり無しね。さすが元魔導師団長さま。手抜かりないわ。黒いドラゴンに王宮を破壊された混乱がなければ尻尾くらい掴んでみせたのにね」


「そっちもダメか。こっちもさっぱりだわ。『網』の広さには自信があったんだがなぁ。こりゃあ協力者がいるかな?」


「……あなたたちの目をくらますことができる協力者、だとでも?」


「となると、やっぱりあいつら(・・・・)かねぇ」


「ここまで痕跡がないと逆に不自然だものね。かなり強力な組織が後ろに付いていると考えた方が良さそうね」


「となると、手詰まりだな。こりゃあ漆黒の捜索は一旦諦めた方が良さそうだわな」


「陛下に上奏して決めてもらわないといけないけど、まぁ納得してもらうしかないわよね。これ以上探しても見つかる可能性は限りなく低いし。通常業務にも支障が出ているもの。というかそろそろ休暇の一つでももらわないとぶっ倒れるわ。私が」


「お前さんに倒れられると困るから、しょうがねぇか。……陛下の威信とやらは傷つくがな。ったく、なにかうまいこと民の意識を逸らしてくれる話題があればいいんだがなぁ」


「……そうねぇ。ありそうといえば、ありそうかも?」


「あん? またリリアが何かやらかしたか?」


「珍しく、リリアちゃんじゃないわよ。珍しく。まだ公表していないのだけど、最近また『竜殺し』が誕生したの」


「あぁ、アレか。リリアと同い年だったか?」


「…………」


 一応あの件に関しては最大級の箝口令を敷いているのだが、当然のように知っているキナを怒るべきか、呆れるべきか……。


 まぁ、我が国の諜報能力が優れているのは喜ばしいわねと現実(魔導師団の情報秘匿能力不足)から目を逸らしつつ、フィーが言葉を続ける。


「リリアちゃんやナユハちゃんだけでなく、『剣劇少女』までもが竜殺しを達成した。我が国だけにこれだけの竜殺しが誕生しているのは、我が国を主神スクナ様が庇護してくださっているからであり、まさしく聖女リリアの正統性の証なのである。なぁんて感じでどうかしら?」


「……ま、悪くはねぇな。じゃあそういう感じに噂を流させて――」


 フィーとキナが悪巧みをしていると、ノックもそこそこに執務室の扉が開け放たれた。


「師団長! 失礼いたします! 緊急事態です!」


 血相を変えた魔導師の様子を見て、やっと寝不足から解放されるかも、と希望を抱いていたフィーの顔が曇る。


「……なに? 漆黒でも見つかったかしら?」


 もはや狂気すら感じられるフィーの目を見て魔導師の頬が引きつる。


「いえ。そのですね……大変申し上げにくいのですが、王城の中庭に『ダンジョン』が発生しまして。まことに申し訳ありませんが、現地を確認していただき対応の指示をいただければと」


「…………」


 どうしてこうなった、と。妹弟子のように天を仰ぐフィーだった。



次回、11月20日更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これはどうなんだろう…? もともとあったのかそれとも黒龍さんのせいなのか… まぁ… 大体リリアが悪いそれで問題ないですねっ! ( ^ω^)
[良い点] あれだ、実はヒーローが居るだから怪獣が来るという説ですねw 竜殺しの量産体制に移行しますかw そもそも黒いドラゴンをリリアさんに預ければ安全の筈でしたw
[一言] 城の中にダンジョンはまずいなあゲームじゃないんだから
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ