表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
192/229

02.写真館



 ずっと放置していたし、元々の目的だった『ナユハの救済資金を稼ぐ』という目的も必要なくなってしまったけれど、それでも店舗は借りてしまったのであの計画を実行に移そうと思う。


 そう! 写真館を!


 王都の貴族街の端っこにある貸店舗にやって来たのは私とナユハ、ミリス、貧民街の顔役であるタフィン。そして――なぜかついてきてしまったわが弟・アルフ。


 いや分かるけどね。タフィンに会えるからついてきたんだよね? 情報漏洩は愛理あたりか……。


 ちなみになぜミリスとタフィンを呼んだかというと、ミリスには前世知識を活用したアドバイスをもらおうとしたのであり、タフィンには人材紹介を頼もうと思ったからだ。想定するお客さんは貴族なので接客は無理だけど、カメラの操作や衣装管理なら貧民街の子たちにもできそうだし。


 と、私がかなり真面目に考えているというのに、タフィンとアルフは人目も憚らずイチャイチャしていた。リア充爆発しろ。


「まず真っ先にリリアが爆発してしまうんじゃないのかな?」

「まず真っ先にリリアが爆発してしまうのではないですか?」


 ナユハとミリスからの冷酷無比な同時ツッコミだった。


「…………」

「…………」


 なぜか見つめ合うナユハとミリス。

 なぜか握手を交わすナユハとミリス。


 その瞳が『あなたも大変ですね』、『いえいえあなたこそ』と語り合っていたのは気のせいかな?


 なんだか私の将来的な肩身がどんどん狭くなっていく気がするけれど、きっと気のせいだと信じることにして……。さっそく店舗の中に足を踏み入れた私たちだった。


 まず目に付くのは木製のカウンターと、何の飾りもない真っ白な壁面。この壁にサンプルとして額に入れられた写真が飾られていくことになるんじゃないのかな。


 キョロキョロ室内を見回していたミリスが私に視線を定めた。


「リリア、写真館らしいですが、カメラを開発したんですか?」


「え? 無理ですよ理屈とか知らないし。ちょっと妖精さんに頼んで日本製のカメラを仕入れてもらったんです。ちなみに報酬は私の血ね」


「…………、……もうどこから突っ込めばいいのか」


 諦めないでミリス! ナユハに続く貴重なツッコミ役なのですから!


「リリアがボケなければいいだけなのでは?」


 私はボケているつもりはないんだけどなぁ。


 首をかしげながらアイテムボックスからカメラと三脚を取り出す。ちなみにカメラは妖精さんに新たに用意してもらったフィルムカメラで、お店には暗室も完備してあります。


「写真館へのアドバイスはあとでじっくり書面に纏めてもらうとして……。とりあえず今日はサンプル写真を撮っちゃおうかな? 聖女である私や公爵令嬢であるミリスが使っているとなれば宣伝効果も抜群だし」


「……リリア? もしかしてそれが主目的ではないですか?」


 はははっ。何のことか分からないでござるよ。


「……その腹黒さ、そして商売に対する情熱……やはり『気弱笑顔の悪魔』ダクス・レナード様の娘ですか……」


 なにやらお父様のあだ名がまた増えたようだった。

 そして私はお父様と同列扱いらしい。どうしてこうなった?


 自分の生き様を振り返りつつ奥にある衣装室へ。ここには貸衣装がしまってあって、写真館のメインターゲットが『お見合い写真を撮る貴族』なので結婚式に使うような白を基調としたドレスが多めだ。貴族は子供の頃から婚約者を決めることも多いので、子供向けの衣装も充実。


 これだけの衣装を揃えるのはかなりお金をかけなきゃいけないはずなのだけど……まぁお金の心配はしなくていいと思う。だって経営者はあの『笑顔の腹黒大魔神』であるお父様だし。基本的に赤字を出すことはないし、たとえ赤字を出すようならそれは別の方面で『利益』を得られているはずなのだから。


 さ~てさっそくミリス様に適当な衣装を着てもらって――と考えていると、気づいた。気づいてしまった。


 タフィンとアルフが、キラキラした目で衣装を見つめていることが。

 そのキラキラした目を私に向けてくる。


 あははー、わかったぞー。衣装を着て二人で写真を撮りたいんだなー? ツーショット写真が欲しいんだなー? まるで結婚式で使うような衣装を着てー。


 まだ早いです! お姉ちゃんは許しません!


「……写真くらいならいいのでは?」

「そもそも『まだ早い』ということは、いつかは許すってことだしね」


 ミリスとナユハのダブルツッコミだった。あかん、二重ツッコミとか威力が凄い。心がポッキリ折れそう。


「折れそうなのは弟に結婚相手が見つかったからでは?」

「今の時点でこれでは、実際の結婚式では大変なことになりそうですね……」


 もうちょっと優しさをくれてもいいと思います……。どうしてこうなった?




 もう開き直った私はアルフとタフィンの写真を撮り、ナユハとのツーショットを撮り、ミリス様とのツーショットを撮って、店頭のショーウィンドウにデカデカと飾ることにしたのだった。


 もちろん、その後はマリーが羨ましがったりウィルドが拗ねたりミヤ様が『わらわとはいつ撮るのだ?』と期待の目を向けてきたりしたので結局嫁(?)全員とツーショットを撮ることになった。


 改めて私の嫁が多すぎである。どうしてこうなった?


「……お父様の娘ですし」


 アルフから諦めの目を向けられてしまった。どうしてこうなった?




次回、11月1日更新予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] そういや銭湯ってどうなったんだっけ?
[一言] 聖女の写真って何か聖なる波動だとか御加護とか出てません? ゆんゆんゆん~って感じで。 お守りとして売れたりして。
[一言] リリアのカメラはレーザー出るからなあ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ