第一話 最近のリリアさん
※本日二度目の投稿です。
はいこんにちは。今日も健気に正直に日々を過ごしているリリアちゃんです。
「開き直ることを健気とか正直とは言わないと思うな私」
いや開き直るって何ですかナユハさん?
「お姉様が開き直ってしまいましたものね。わたくしも古株の嫁として気を引き締めませんと」
いや開き直ったって何ですかマリーさん?
「だよねぇ。生粋の女たらしが自覚したものね……。こっちも覚悟を決めないとかな」
ナユハさん、女たらし扱いは止めてもらいません? 私はほら、あれだから。好きになった人が偶然女の子だった系ヒロインだから。
「お嫁さんの数も二桁で済めばいいですわよね」
マリーさん、嫁がドンドン増え続ける前提で話すの止めてもらえません? 私はほら、あれだから。運命の相手が偶然にも複数人いた系ヒロインだから。
「……開き直ったね」
「……開き直りましたわね」
なぜか二人から冷たい目で見られてしまう私だった。どうしてこうなった?
二人の視線から逃れるように馬車の窓から外を眺める私。ちなみに馬車に他の嫁たちはいない。今日はマリーのお母様・マリア様に呼び出されてヒュンスター邸に向かっているためだ。いくらマリーの実家とはいえ、高位貴族の家にぞろぞろ大人数で向かうわけにはいかないからね。
◇
「歓迎するわ! よく来たわね義娘よ!」
ヒュンスター邸に到着するとマリア様が熱烈に(?)歓迎してくれた。具体的に言うと庭先までのお出迎え&お爺さま(ガルド)を彷彿とさせるタックル抱きつき。
お爺さまとマリア様は邪神討伐を共にした仲間らしいし、このタックルも直伝の可能性が……もうちょっと伝授する技を選べ勇者パーティ。
というか、マリア様って侯爵に復帰しましたよね? 現役侯爵ですよね? いくら娘の嫁 (予定)とはいえ子爵家の令嬢を直接お出迎えするのはいかがなものかと……。
「いや、聖女様で王太子殿下の婚約者を当主が出迎えないとかそんなアホじゃないのだから」
心を読んだかのようなマリア様のツッコミだった。きっと竜人は心を読めるに違いない。
「いえお姉様が分かり易すぎるだけかと」
この竜人親子はもうちょっとツッコミに優しさと容赦を込めていいと思います私。
ちなみにこのやり取りの間、マリア様はずっと私の頭をなでなでしていた。妃陛下といい、なんで私の周りの『母親』は私のことを猫かわいがりするのか。
とうとう頬ずりまでやり始めるマリア様。
「復帰の挨拶をした際、妃陛下から可愛がっているという話を聞いてはいたけど……分かるわ~。『母親』として、この子は放っておけないものね」
そんな、よく分からないことをつぶやくマリア様だった。私がやらかしまくるから目を離せないってことですか?
「鈍い」
「鈍いですわ」
そっくりな反応するの止めてくれませんかナユハとマリー。私鈍くないよ? “左目”を使えば世界の真理から他人の心の機微まで百発百中だよ?
「使わないと、アレだよねぇ……」
「使わないと、アレですわねぇ……」
なぜ同情を込めた目で見られるのか理解できないでござる。
「といいますか! お母様! いつまでお姉様に抱きついているのですか!」
私からマリア様を引っぺがすマリー。尻尾が出ているので竜人パワーを使ったのだろう。
しかし、抱きつきこそ解除されたものの、私の腕を放すつもりはなさそうなマリア様。そんなマリア様に対抗してか私の空いている方の腕を掴むマリー。
あれ? これはアレかな? 大岡裁きが始まる予感? さすがの私も竜人パワー×2で引っ張られたら裂けるんじゃないのかな?
「義娘との大切な時間を邪魔するとはいい度胸ね、実娘!」
私を掴んだ腕に鱗が生えてくるマリア様。え? もしかしてドラゴンに変身しようとしてます?
「わたくしとナユハお姉様を差し置いてイチャイチャなどさせませんわ!」
イチャイチャはしてないんじゃないかなぁ? 一方的に撫でられていただけで。
あと、マリーの腕にも鱗が生えてきた。ドラゴンに変身しかけてる? かけてるよね? 私の腕を掴んだままですよ~?
あのちょっともう親子喧嘩(ドラゴンver.)は止めませんからせめて私の腕を放してからにしてくれませんかね?
そう言っている間に二人の姿はドラゴンに変身していって――痛い痛い裂けるマジ裂けるって! ヒロインがヒロ/インになっちゃうって!
「……『もてもて』で凄いねーリリアはー」
棒読みで視線を逸らすナユハたんであった。正妻なら助けてくれませんか!?
ど、どうしてこうなった!?
次回、6月10日更新予定です。




