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プロローグ 月追う狼
――泣くな主よ。
太陽には太陽の、月には月の良さがある。
太陽のまばゆさに目を焼かれ、自らを卑下する必要などない。
たとえ世界を救う聖女であろうとも。たとえ歴史に名を残す英雄であろうとも。あのとき、我を救ってはくれなかったのだ。
あのとき、あの場所で。我を救ってくれたのは、貴女なのだ。
だからこそ我は貴女を主と定めたのだ。
貴女だからいいのだ。
貴女でなければ、駄目なのだ。
自信を持て。
涙をふけ。
前を向いて、もう一度立ち上がれ。
そうすれば、きっと――
――我は月を追いし者。
天の花嫁の手を引いて、永久なる幸せを願う者。
ゆえにこそ。
貴女が『運命』を変えるのなら、我が力を貸すとしよう。
本日もう一話投稿します。




