第1話 エリクサー
本日二度目の投稿です
最近のリリアさん。
はいこんにちは。もう嫁(?)が増え続けることについては深く考えないことにしたリリアちゃんです。
「抵抗を止めたらさらに加速すると思うな私」
いったい何が加速するのかなナユハさん?
「ま、まぁそれはともかく! 今日はとうとう上級ポーションを越える、エリクサーを作ってみようと思います! ドンドンパフパフ!」
妖精さんがどこからか持ってきたミニマムな楽器でファンファーレ(?)を奏でてくれた。ノリがいいって大切である。
「えりくさー?」
「建国神話に出てくるポーションですわね。巷間広まっている新訳版ではなく、旧訳の外典に載っている神授の薬であり……死者すら蘇らせる力があるとか。ドラゴンの心臓で作るらしいですわ」
首をかしげるナユハにマリーが解説していた。ドラゴン云々らしいので、たぶん変竜の呪いについて調べていたときに知識を得たのだろうね。
まぁ私には前世ゲーム知識のある璃々愛や愛理がいるし、色々とチートな“左目”もあるのでエリクサーの作り方は分かる。いざとなればウィルドに聞けばいいし。
ゲームだと貴重な素材をかき集めてやっと製作できる超貴重品なのだけど、この世界ではマリーが言うような『ドラゴンの心臓』だとかの原材料に細かくこだわる必要はないみたいで……ただ『生きた幻想種から譲り受けた素材』を一定量使えばいいだけ、らしい。
うん、最高の回復薬がそんな適当でいいんかいと突っ込みたい。突っ込みたいけど、面倒くさい素材をかき集めるよりは遙かに楽なので口をつぐんだ私だった。ゲーム(遊び)ならいくらでもやってやるけど、リアルではやりたくないでござる。
最近は幻想種(不死鳥)がよく私の肩の上に止まっているので、抜けそうだった尾羽を一本もらってさっそくエリクサーを作ってみようと思う。
ちなみに引きこもり――もとい、人里に滅多に姿を見せない不死鳥の尾羽なんてレナード家の財力&ルートを使っても中々手に入るものじゃないのだけど……まぁ、タダで貰ったものなので容赦なくざくざく切り刻んだ私であった。
「幻想種の素材をあんな乱暴に……」
「上位貴族でも滅多に手に入れられない貴重品ですのに。さすがお姉様ですわ……」
なぜだか呆れの目を向けられてしまう私であった。どうしてこうなった?
詰めた視線を振り払うかのように切り刻んだ素材を鍋に入れコトコト煮込んで――完成。
完成?
完成した?
ほんとに? 最高のポーションがこんな簡単にできていいの? 爆発の一つもしないでできちゃっていいの?
「リリアはそろそろ爆発渇望症を治療した方がいいと思うな私」
奇奇怪怪な病気を創造しないでくださいナユハさん。
左目で鑑定してみると……うん、エリクサーだね。マジでできちゃったよ。こんな簡単に。失敗も障害もなく。なぜだか負けた気になってしまう私であった。
「リリアちゃん、波瀾万丈な人生を送りすぎて刺激に飢えているんだね~」
愛理に同情されてしまう私だった。どうして(ry
「嘆息。アンスールもたいがい厄介な性格をしている」
厄介の塊であるウィルドに言われたくはありませーん。
まぁいいや。完成したエリクサーはマリア様復活に使うとして――
私がエリクサーを鍋からビンに移そうとしていると、視界を何かが横切った。不死鳥さんが私の肩から飛び降り、鍋に首を突っ込んだのだ。
そのままごくごくとエリクサーを飲んでいく不死鳥さん。いやあなたの尾っぽで作ったのだから飲んでもいいっすけどね、熱くないの? グツグツと煮えたぎってますよ?
ま~身体が燃えているし猫舌なんてことはないか~なんて考えていると不死鳥さんは鍋から顔を上げ、そして――
『クケーッ!(くっそマズい!)』
白目を剥いた不死鳥さんが、突如として燃え上がった。メラメラと。ごうごうと。一瞬で肉が焼け、骨が焼け、灰となってしまう。
いや、不死鳥は死ぬときに身体が燃え上がって生まれ変わるという伝承があるけど……なに? 死ぬほどまずかったの? 自分の尾羽が原材料なのに? どうしてこうなった?
『……リリアちゃんの料理の腕が殺人級という可能性……』
失礼だね愛理。パーフェクトヒロインであるこの私・リリアちゃんの料理の腕が殺人(殺鳥)級だなんてことあるわけがないでしょう。
うん、よく考えたら料理を作ったのはこれが初めてだけどね! 貴族子女なのだから当然と言えば当然だけど! そういえばお爺さまも魔物の解体方法は教えてくれたのに料理は教えてくれなかったね。解体したあとそのままサバイバル料理を教えるのが自然な流れなのに……。
『勇者としての危機察知能力でリリアちゃんの手料理は回避したのか~』
私の料理の腕がヤバいこと前提で話を進めるの止めてもらえません?
今度愛理に手料理を振る舞ってやろうと決意していると、燃え尽きた不死鳥さんの灰の中からもぞもぞと小鳥が這い出てきた。見た目はヒヨコっぽいけど羽色が燃えるような赤色なのが特徴的。たぶん不死鳥の雛なのだろう。
雛であるせいか羽色は赤いけど燃えてはいない。私が手を伸ばすと、その手を伝わり上がって定位置(私の肩)に腰を落ち着ける不死鳥さん(雛)だった。
『クケーッ!(冗談じゃなく死ぬほどまずかった……もうリリアの手料理は食わん)』
幻想種を殺す手料理ってどんだけやねん。あと今さらだけどエリクサーって手料理判定なの? 材料切り刻んで煮込んだだけだよ? 殺人級に変化する要素がなくない?
私が助けるように視線を横に抜けると、嫁(仮)たちは気まずそうに視線を逸らしてしまうのだった。
どうしてこうなった……?
リリアの手料理(幻想種が死ぬ程度のマズさ)
次回、1月24日更新予定です。




