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幼女ヒロインは女の子を攻略しました ……どうしてこうなった?  作者: 九條葉月
第六章 悪役令嬢編

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閑話 7年前のこと(ガイサン視点)


 




 ――戦友。


 ――俺と“彼女”は、戦友だった。




 たった一度。


 ただ偶然居合わせただけ。

 言葉を交わしたわけでもない。

 共に酒を飲んだわけでも、夢を語り合ったわけでもない。

 名前を知ったのすら“事件”からしばらく経ったあとのこと。


 そんな“彼女”に対して戦友などという言葉を使うのはおかしな話だ。道理が通らない。“彼女”――マリア・ヒュンスター侯は歴史と名誉を持った貴族であり、俺は騎士爵ですらないただの庶民。地位も、実績も、並び立てるはずがない。


 だが、共に黒いドラゴンに立ち向かった。

 民を守るために戦った。

 命を賭けて、守った。立ち向かった。――打倒した。


 ならば俺たちは戦友だ。

 誰になんと言われようが。批判されようが。怒られようが、嘲笑されようが。それでも、俺たちは戦友だ。


 ――その戦友は、殺された。


 人間としてではなく。

 貴族としてではなく。

 人里を襲った、蒼い悪竜として。


 自分勝手な名誉のために。

 彼女には、まだ幼い子供がいたというのに。


 もはや“彼女”に戦う力は残っておらず、そもそも、危険性はないことは――民を守るために戦っていたことは誰が見ても明らかだったのに。あの男は事情を聞くことすらせず、“彼女”の首に剣を突き立てた。


 戦友だ。

 民を守るためにその身を盾にした“良き女”だ。


 戦友を殺された。

 良き女を殺された。

 そして何より……幼い青髪の少年から『母親』を奪い、その身を、心を、復讐の悪鬼へと変えさせた。



 ――殺さなければならない。



 俺は決意した。

 たとえこの手が罪過にまみれようと。たとえ国家への反逆になろうとも。必ず。必ずやあの男を殺さなければならない。復讐は、俺の手で行わなければならない。


 ……そして、せめて、復讐を誓った蒼髪の少年の手が汚れることのないように。


 敵は伯爵となった。

 現役の騎士団長だ。


 一人きりになる場面などそうそう無いし、あの男は根っからの小心者で、用心深かった。気づかれない距離から隙をうかがい続けたが『機』は訪れず……。


 一週間。

 一ヶ月。

 隙は無い。

 護衛も減らない。

 俺の肉体強化であれば護衛を倒しての暗殺もできるだろう。しかし、万が一にも逃げられる可能性があるし、何より、護衛には何の罪もないのだ。そんな彼らを殺すのは気が引ける。


 機を待つしか無い。

 ヤツが一人きりになる瞬間を。油断した瞬間を。待って、待って、待ち続けて……。そうして。一年が経過して。ついにその時が来た。


 狩猟を兼ねた遠乗り。

 森に身を隠した俺は確かな『機』を見いだし、そして――







 アグスト・ミレッジ(元)騎士団長。

 王国史上稀な、下級貴族出身でありながら騎士団長にまで上り詰めた傑物。

 ヒュンスター領ドラゴン襲来事件における活躍により伯爵へと陞爵。


 事件からおよそ一年後、狩猟中の事故により死亡。その死に不可解な点があったため後任の騎士団長・ゲルリッツ侯爵によって調査が行われたが、事故死と断定。


 一説には魔物に襲われ死亡したが、『騎士団長が魔物に負けた』との悪評を恐れてその死の真相が隠されたという。



 参照、

 第85部分 ヒュンスター領 ドラゴン襲来事件概要。(騎士団長の報告書より抜粋)

 第89部分 8年前のこと(ガイサン視点)


 今の国王 (リージェンス)は能力さえあれば要職に取り立てます。良くも悪くも。



 ※ちょっと、帯状疱疹の療養のため少しお休みします。(軽傷)


 次回、11月14日更新予定です。


 今後の予定ですが、とりあえずガイさんの話でこの章は一旦区切り、すぐ悪役令嬢編その2を始めます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 意外にガイサンさんはずっとその事件を思った以上に気にして、心に抱えていましたね。良くやったと言えばそうかもですけど。 確かに今の国王、これまでの事件から見れば、そこまで有能かつ賢明ではあり…
[一言] ヒュンスター家の今後の扱いとかも考えると前騎士団長の罪を立証するのが正解っぽいけど、時間が経ち過ぎてるのが……。 更新は待ち遠しいけど、どうかお大事に。
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