閑話 お姉様へのお願い(マリー視点)
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お父様が黒幕だろうとお姉様から聞かされました。
いえ、一体何の『黒幕』なのでしょうか? ……普通に考えれば王家への復讐に関してのことですが、しかし、“金瞳”を持つお姉様がわざわざそんな、わたくしでも推測できているようなことを伝えてくるでしょうか?
お姉様は完璧なまでに完璧ですけれど、強いて欠点を上げるなら説明不足なところになるでしょう。自分は“金瞳”ですべて視えるのかもしれませんが、こちらとしては何のことだかさっぱり分かりません。
わたくしの考えなど“金瞳”を使うまでもなくお見通しなのでしょう、お姉様はわたくしの疑問について解説してくださいました。お父様がわたくしを騙していたであろうこと。わたくしが『変竜の呪い』で苦しんでいることを知っていたのに、それでも解決方法があると教えてくれなかったに違いないと。
それはきっと復讐のためなのでしょう。
今は亡きお母様のため。王家に復讐するため。ドラゴンに変身できるわたくしの力を使おうとしたのでしょう。利用しようとしたのでしょう。
怒るべき場面。
憤るべき事態。
だというのに、わたくしは、なぜだかお父様を恨めませんでした。
口汚く罵っても許されるはずなのに。
一発くらい殴っても許されるはずなのに。
それでも、わたくしは……。
「……お姉様」
自分でも驚くほど畏まった声を発すると、お姉様も居住まいを正してくださいました。
「うん、なにかな?」
甘えすぎだと自覚していますが。
都合良すぎだとは思いますが。
それでもわたくしは、その願いを口にしました。
「――お父様を、助けてくださいませんか?」
バカなことを言うなと叱られてもおかしくはありません。呆れられても不思議ではありません。
なのにお姉様は、どこか嬉しそうに微笑んでくださいました。
「恨んでないの?」
「自分でもよく分かりませんが、恨んだり憎んだりといった感情はありません。ただ、ただ、悲しいだけで。何とかして欲しいと思うだけで」
「優しいね、マリーは」
お姉様はまるで聖女のように慈愛溢れる笑みを浮かべて――
「――よし。とりあえず、ぶん殴ろうか」
……どうしてそうなった?
思わずお姉様の口癖が移ったわたくしでした。
次回、2月3日更新予定です。




