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幼女ヒロインは女の子を攻略しました ……どうしてこうなった?  作者: 九條葉月
第五章 聖女と○○○○編

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閑話 原作ゲームのマリーさん(マリー視点?)




 8年前。

 我がヒュンスター侯爵家は領地に出現したドラゴンを討伐しました。


 もちろん生まれたばかりだった『私』に当時の記憶はありませんが、討伐の際に大魔術師であったお母様は名誉の戦死。その他、相応の犠牲を払った薄氷の勝利だったと聞き及んでいます。


 そして受けたのは竜の呪い。

 思い出すのは“竜化”の昔話。


 昔々。聖剣によってドラゴンを退治した少女は、竜となる呪いを受けたとされています。何百年も前の、我がヒュンスター家に伝わる昔話です。


 もちろんそんなものはただの昔話ですし、ヒュンスター家の女が代々竜になったという記録もありませんが……。今回、その昔話が現実になってしまったのです。


 現在、ヒュンスター家の女は私一人。

 必然的に、竜化の呪いは私へと降り注ぎました。



『可哀想に』

『呪いさえなければ幸せな結婚ができるだろうに』

『どうしてこの子が不幸にならなければ……』



 周りの大人たちは表向き同情し、裏では私のことを恐れていました。


 どうして私が怖がられなければならないのでしょう?

 私は、何も悪いことはしていないのに。


 いつドラゴンに変身するか分からない私は、人間社会で生きていくことは叶わないでしょう。


 私は、何も悪いことはしていないのに。


 私と同じく竜の呪いを受けた昔話の少女も、結局は竜化の呪いに苦しんで自ら命を絶ったとされています。


 私も、彼女も、何も悪いことはしていないのに。


 ドラゴンになんてなりたくない。


 ヒュンスター家に残された文献や、王宮に残された資料なども調べ尽くしましたが、結局“竜化の呪い”を解く手がかりすら見つけることができませんでした。


 成果と呼べそうなものは、何の役にも立たない情報だけ。

 ドラゴンについて調べを進める中で見つけた、当時、わずか7歳の少女がドラゴンを倒したという王国公式の戦闘記録。


 お母様が命を捨て、領兵や領民に多大な犠牲を払ってやっと討伐できたドラゴンを。たった一人で。無傷のまま倒してしまった『神に愛されし』少女。


 リリア・レナード子爵家令嬢。


 新たなる神話を築き上げるであろう金の瞳。

 万物の裁定者たる赤き瞳。

 伝説の勇者と同じ、銀の髪。



 ――不公平さに不満を抱きました。


 ――理不尽さに怒りを覚えました。



 なぜあの場所にいてくれなかったのかと。なぜお母様が死ぬ前に倒してくれなかったのかと。私は少女を恨んでしまいました。


 どうしてお母様を助けてくれなかったのでしょう?

 特別な力があるのに。


 どうして私を助けてくれないのでしょう?

 特別な力があるのに。


 なぜ彼女ばかりが神様に愛されて。私が、私だけが、こんな理不尽な目に遭わなければならないのでしょうか?


 …………。


 こんなにも苦しいのは。

 こんなにも辛いのは。

 きっと、私が神様に嫌われているから。


 きっと神様は私のことが嫌いであり。

 どうせ神様に嫌われているならば……。


 いっそのこと、と思いました。


 どうせ最後には人としての心を失い、ドラゴンとして討伐されるのなら。

 汗臭く野蛮な騎士に殺されてしまうくらいなら。


 その前に。


 この世界に復讐してやろう。

 お母様を殺した騎士団を滅ぼし、王家を滅ぼし、悪竜となって死んでやろう。



 そう。

 私は、悪い子になってやろうと決めたのです。








 マリーが今よりほんの少し不幸で、ほんの少し余裕がなくて。とある夜会でリリアを目にせず、スクナ様に抱きしめられなかった。そんな世界の物語。



次回、27日更新予定です


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― 新着の感想 ―
[一言] こんな事になっても中身がどうしてこうなったさんならどうしてこうなったしてくれるはず
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