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転生自衛隊 ~兵器も転生!美しすぎるは最強の証!?  作者: ぷよりん
第2章 マーベルロウ王国編
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可愛い彼らは転生者  #9

 

 私達団体さんを玄関先で迎え入れてくれたのは、ピンク色の可愛らしくも変わったモンスターだった。


「いらっしゃいでチュ、よく来てくれましたでチュ!」


 愛らしい声でお辞儀をするこのモンスターは、そう言いながらピョンッと後ろに飛び退いて私達のためにスリッパを並べている。

 子猫くらいの大きさで、ウサギの耳を持ったリスといったところだろうか。実によく躾けられているな。


「メイドルラビットです、喋る筈はないのですが」

 私達にモフモフの尻尾を向けている姿を見ながら、そっとノエルが耳打ちをしてくれた。このモンスターは縁側を先に歩いて私達を先導してくれている。


「こちらにどうぞでチュ」

 リスウサギが立ち止まった先には応接間があった。30畳程の広い和風の部屋には畳の床に長テーブルと座布団が置いてあり、すでにソルト君とカルピンチョ君は重ねた座布団に座っていた。


「失礼します」

 スリッパを脱いだ私達は、彼らとは反対側の座布団に次々と座っていく。私の右に菫、マリー氏、エルシーと続く。左はノエル、ジャン博士、ゴン太だ。パルスは……


 台車にお茶セットを載せようと奮闘しているリスウサギを手伝っていた。お互い通じるものがあるのだろうか、もう仲良くなっているみたいだ。それにしてもあのモンスター、あんな小さな体で頑張るねぇ。


「まずは自己紹介としようね」

 リスウサギとパルスがテーブルの上に乗ってお茶菓子を置いていく姿を見ながら、ソルト君は可愛い声でそう告げた。


「私はこの村の長、ソルト。で、こっちが副村長のカルピンチョ君だ。そこにいる彼は秘書のトッポ君だよ」

 そう言って、お茶を配り終えてパルスと一緒にテーブルの端に座ったリスウサギを、トンガリお手々で指差す。


「どうもでチュ!」

 元気な言葉と同時に敬礼をしたトッポ君。

 

 …………敬礼ってモンスターもするんだっけ?


「私達は冒険者です。今日は魔王に会いにトゥーリアからやって来ました」

 この村への他意が無い事を説明してから、私を筆頭にそれぞれが名前を告げていった。

 

「魔王に会うって言ってたけど、会ってどうするの?」

 ソルト君がお茶を飲みつつ、丸いお目々を細めて言ってきた。まだ不審に思っているのかな?


「サインを、じゃなくてこの地に転生者がいないか聞いてみたいのです」

「「転生者!?」」

 

 何故そんなに驚く?


「君達は転生者に会ってどうするの?」


「我々の仲間かどうか調べたいんだよ」

 ジャン博士が村長達とは対照的に、お茶を飲みながら落ち着いて言った。


「と言う事は、皆さんは転生者でチュか?」

 トッポ君がパルスを毛繕いしながら言ってきた。

 

「そうだよ、ゴン太以外はみんな地球ってとこからの転生者なんだよ―」

 エルシーは、そんな2匹をお菓子を食べながら面白そうに見ている。


「「地球!?」」

 

 ソルト君にカルピンチョ君よ、あんまり驚かないでくれるかな。


「地球のどこ?」

 すかさず聞いてくる。


「日本です」

「「私達も日本だ!」」

 

 い、いきなり告白しないでくれたまえ。しかも日本人……


「日本のどこ?」

「直接日本からじゃないのですよ、ある海域で……」

「「海域!?」」

 

 き、来た……


「タンカーでチュね?」

「「ええ――――――っ!?」」

 

 私達全員が仰天した。今、トッポ君からタンカーという言葉が飛び出したぞ! こ、これはやはり!?


「き、君達はテレポート実験の関係者かい?」

 意を決して聞いてみる。


「そうだよ、私が道田登1佐、カルピンチョが豪田雄一郎准尉、そしてトッポ君が望月健1尉の転生したモンスターなんだ」

「……………………」


 あまりの衝撃に固まってしまった私達。


「「それで君達は誰?」」

 

 ソルト君とカルピンチョ君が、テーブルにつんのめって勢い良く聞いてくる。先鋒を切ったのはジャン博士とマリー氏だ。


「私は元科学者の須賀屋京平だ」

「私は助手の楠岡千絵子です」

 元道田君と元豪田君の動揺も意にも介せず、二人は落ち着き払ってお茶を飲みながら正体を明かした。


「須賀屋博士……」

「楠岡女史……」


 ポカンと口を開けたままプルプル震えているが……。うーむ、これは私達に負けず劣らず彼らの中で衝撃が走っている様だな。


「「ウソォ――――――ッ!?」」


 突然大声で叫んだ2人、改め2匹。なんとか最初の衝撃は乗り越えたかのか? というか興奮してテーブルの上に乗り上がってきてるけど……そんな彼らを、


「あのね、こちらこそウソーと言いたいんだけど」

「まったくです、非常識にも程がありますわ」


 と、呆れた顔でジャン博士とマリー氏は眺めている。


「…………クスクス」


 ん? クスクス笑う声がすると思ったら菫とエルシーか。何やらヒソヒソ話をしている様だが、あれは何かを企んでいる顔だな。


「「私達は元護衛艦しらすの兵器!」」


 言いながら2人とも急に立ち上がったぞ。何をする気なんだろう?


「ちょっと待てぇ――っ! 今、何て言った!?」

 

 おお、2匹とも叫びながらテーブルの上で飛び跳ねているぞ。


「ミサイルセル!」

「Xバンドレーダー!」


 あらら、菫とエルシーってば部屋の中で出しちゃったよ。さては、これで驚かそうとしていたんだな。


「ミサイルでスタ―ッ!?」「レーダーでカピ!?」


 今、なんつった? ソルト君とカルピンチョ君の語尾が変だったぞ!?


「スタッ! スタッ! スタッ!」

「カピッ! カピッ! カピッ!」


 …………なにコレ? スタスタ、カピカピ言ってテーブルの上を走り回っているんですけど……


「きゃはは――!」

「クスクスクス!」


 2匹の右往左往している姿を見て、してやったりと言う顔で笑っているエルシーと菫。まったく……


「2人とも落ち着くでチュ!」

 

 トッポ君が頭から2匹に体当たりしたよ! ソルト君は天井に突き刺さり、カルピンチョ君は庭に転げ落ちてしまったが、結構パワーが有るんだな。

 手持ち無沙汰だったノエルとゴン太がそれぞれ回収したけど、2人とも目を回してぐったりしているよ。ソルト君なんか未来の魔王とか言ってなかったっけ?


「まあ、驚くのも無理は無いかな。私も最初は信じられなかったからね」

 いちおうは慰めておく私。まだまだこれから驚かせてしまうからな。


「そ、そういう貴方は誰なのさ!?」


 ソルト君が私に向き直って聞いてきた。いよいよ次は私か。

 

「覚悟して聞きたまえよ?」

 言う前に念を押しておく。


「わ、わかった……」

 とソルト君。

「ゴクリ……」

 息を呑むカルピンチョ君。

「ワクワクでチュ!」

 と緊張感の無いトッポ君。


 3匹とも興奮しすぎて私の目の前に密集している。君達、近すぎるって……


「私は、元白鳥蓮蒔艦隊総司令官だ!」

 そう言いながらグルグル眼鏡を取って、くっ付けるように更に顔を近づけてやった。


「ぎゅぴい!」「むみゅ――ん!」「チュワ――ッ!」


 彼らの鳴き声なのだろうか? なんか、いたいけな動物を驚かせてしまった気分……


「あ、貴方が司令官でスタ――ッ!?」

「いくら何でも綺麗過ぎでカピ――ッ!!」

「女神様に転生したんでチュか――!?」


 三者三様に驚き倒して、またテーブルの上を走りまくっているよ……

 


“レベルアップしました”

“レベルアップしました”

“レベルアップしました”

 

 突然頭の中に例の声が響いた。

 しかし、今はそれ所じゃ無いっての!


「きゃはは!」

「ニヤニヤ……」

 エルシーと菫は、ジタバタと走り回っている3匹を見てまた面白そうに笑っている。そんな興奮の坩堝るつぼの中、


「あの―、僕はまだ正体を言っていませんが、どうしましょう?」

 私の横に座るノエルが不安そうに言ってきた。


「ノエル君、今は放って置いてもいいと思うぞ。彼らとてもうこれ以上は驚く事もあるまいし、なにかのついでに言ったら良いと思うね」

 呆れた目で3匹を見つめながら言うジャン博士。


「それにしても、どうしてモンスターなんかに転生したのでしょうか?」

 と、マリー氏がポツリと呟いた。


「さあ、それこそ神のみぞ知る、といった所だな……」

 そう言ってジャン博士は再びお茶を飲み始めた。


「ゴッツン!」


 あらら、テーブルの真ん中でぶつかり合って倒れちゃったぞ。さて、何時までもこうしていてもしょうが無い。そろそろ彼らのこれからの予定を聞いて、さっさと出発しようかね。

 

「君達、確かこの村を出て何かの用事をするとの事だったが、それはテレポート実験の関係者を探しに行くという意味かい?」


 3匹をテーブルの上に立たせてあげながら聞く。


「そ、そうです。私達も他の乗組員がどうなったか心配で……」

 カルピンチョ君が顎髭を整えながら言う。


「随分と時間が掛かってしまいました。私達が見つけようと考えていましたのに、見つけられる側になるとは、本当に面目無い次第です……」


 まん丸お目々を潤ませながら言うソルト君。2匹とも語尾が直っているが、どうやら落ち着きを戻したらしい。


「仕方ないでチュよ。こんな体で人間の町を歩いたら、すぐに捕まって食べられちゃうでチュ」

「けどさ―、ソルト君って未来の魔王って言われてるくらいだから強いんでしょ?」

 

 エルシーがソルト君のプニプニほっぺをつつきながら言う。

 しかし、トッポ君の語尾はそのまんまだな。転生した時からこんな喋り方なのかね?


「うにゅ~、しょ、所詮は多勢に無勢だよ。私達3匹が規律を持った兵士や集団に立ち向かった所で時間の問題、いずれはやっつけられてしまうさ。それに、民間人を傷つける事など出来ないしね」


 ほう、モンスターに身をやつしても正義の心は失わなかったか、天晴れな奴。


「じゃあ、どうやって探索しようと考えていたんだね?」

 すかさずジャン博士が突っ込む。確かにそれは謎だな。


「人間の行商人に頼んで、小道具を作って貰ったんでチュ」

 そう言って素早く隣の部屋から何かを持って来たトッポ君。


 あれはフード付きマントだな。顔には仮面、袖口には手袋が取り付けてあるが……

 これで一体何をしようと考えていたんだ?


「さあ、練習の成果を見せてやるでチュ!」

「「おう!!」」


「いち!」

 カルピンチョ君が四つん這いになって、

「にいでチュ!」

 トッポ君がその上にまた四つん這いで乗っかって、ほうほう……

「さん!」

 ソルト君がマントを持ちながら2匹の上によじ登って、ヨイショと二本足で立って……それで?


「「コンプリート!!」」


 マントをすっぽりと被ってから、袖口にトンガリお手々を通して出来上がり! って何だコレは!?


「この擬態で何とかなる筈だ!」

 自信満々で宣言するソルト君。


「……………………」

 皆さん目が点になってるよ。言葉も出ないみたい。

 

「ねえ、これってヤバくないかな?」

「同感、即ミサイル発射」

 

 エルシーの問いに物騒な答えをする菫。言われてみれば、いや、言われなくてもこの姿は怪しすぎるぞ。

 まるで身長1mくらいの両手を広げたムンクの叫びだよ。こんなんで人間の街中を歩いた日にゃ、すぐに兵士がすっ飛んで来るぞ。


「そうですわ! 私達のメンバーって事にすれば怪しまれずに何処にでも行けると思いますの!」

 突然言い出したマリー氏。博士も、

「うむ、それはいいアイディアだよマリー君」

 と、賛同している様だ。


 2人は嬉しそうに顔を綻ばせているが、こっちも怪しいぞ?


「マリー女史、それはどういう事ですか?」

 合体変装を解除して、テーブルの上に降りたソルト君が聞いた。

「私達はパルスを主役に大道芸で世界を周っていたのですよ。あなた達もメンバーに加われば自由に行動できますわ」


 成程ね、パルス達は人気者らしいから、一緒のメンバーって事にすれば無闇に拘束されたりはしないだろう。


「それは凄い、是非ともお願いしますよ」

 とはカルピンチョ君。

「パルス、これから宜しくでチュ!」

 トッポ君も乗り気だ。


「ウニャニャン、ニャン!」

 パルスも嬉しそうに飛び跳ねているよ。早速トッポ君とじゃれ合い始めちゃった。


「チュッ、チュワワッ!」

「ウニャニャン!」


 仲睦まじき事は良き事かな……って、トッポ君てば中身も人間辞めてないか?


「しっかり働いて頂こうかね、ハッハッハッ!」

 そんな光景を見ながら怪しく笑うジャン博士。成程、この爺さんも調子がいいな。


「では、村の者達に出発の知らせをしてきますので、ここで暫く待っていてくれませんか?」

 ソルト君が私に言ってきた。


「大丈夫かい? 君達は随分と慕われていたみたいだし、無理をしなくてもいいんだよ?」

「心配ありませんよ、この村を作った当初からずっと言い続けて来た事ですからね」

 

 そういうモンかねぇ……まあ、彼らもいずれはこの村に戻ると言っていたし、少しの間は住民達に我慢して貰うとするか。

 そうして、やっとテーブルの上から降りたソルト君は、可愛い両手とまったく同じ両足で外に出かけようとした。

 だが、その時1匹のモンスターが慌しく応接間に入って来たのだ。


「ソルト様、大変ですよ――!」

 

 声の主を振り返ると見覚えのある猿がいた。

 このモンスターは私達を発見した猿だな。確かプラウモンキーといったか。大きな目を更に広げてナニやら急いでいる様だが、どうしたんだろう?


ふもとに魔王軍が来ています!」

「ナニ――ッ!?」


 飛び上がって手をパタパタしているソルト君。驚き方も可愛らしい。


「何故、こんな所に魔王軍が来ているんだ!?」

「それが、ソフィアとか言う少女を出せとか言ってます」


 わ、私!?


「ソフィア君」

「司令官」

「司令官殿」


 ジャン博士やソルト君達、おまけにノエルと菫とエルシーが私に詰め寄ってくる。


「「何かした?」」


 何もしてないっちゅ――の!!


 

 

 

 

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