第7話・河原者の者たち
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■天文16年(1547)6月3日
甲斐国 山梨郡 躑躅ヶ崎館 城下町郊外
・武田三郎
府中のばずれにある広く開いた土地に大勢の人が集まっていた。約1000人ぐらい、いるだろか。どの人も疲れ切った顔をしており、着ている物も粗末なものだった。年齢は幅広く、三郎と同じぐらいもいればお爺さんに差し掛かっている人もいる。
翌日集まった民は約1000人以上だ。予想以上に集まったので驚いている。貧農の口減らしだったりと浮民がかなり多い。
飢饉が続いていることや厳しい冬が襲ったのを少しの乏しい食糧で生き延びた者たち。
しかしその食糧も少ないので明日の命をつなぐ食料を確保できる保証はまったく無い。
全ての畑などは、国衆・地侍・百姓の物なので勝手に入って、狩猟採取などをすれば殺される。もちろんそこには武田家も領地を持っているのでそういうものを殺すだろう。
しかし彼らは誰よりも強くなると俺は思う。飢えを知っているからだ。生きるために恐らく必死になるだろう。それが一向一揆などがいい例だ。
農繁期に兵に使えるので国人衆に頼らなくても戦は出来るようになるし、武田家本家の力が増すだろう。何より俺の軍になる者たちだ。その軍で武田家に反乱を起こす国衆や他国の大名を鎮圧できる。
今後のこともあるから威厳を保たねばならない。武田家の三男としての威厳だ。傅役の馬場信房の抱きかかえられて馬に乗っているが俺はまだ幼いので威厳というのは無いと思うけど。
武田菱をつけた小さい陣羽織を着て近づく。
その後ろには源四郎、源五郎、一益、千代女、保長が続く。それを見て恐怖する者や目をそらす者がほとんどだ。
途中で馬を降りて集まっている者達に三郎は発言したいがまだ4つなので大きい声はまだ出ない。その代わりに信房が言ってくれた。
「皆の者よ、もう飢えることはいやだろう?何よりここにおられる武田家の三男、三郎様は心を痛めておられる」
集まった民たちは何の反応も無いので全く信じてないのだろう。
「今からお主たちは三郎様の家臣だ、忠義を尽くしてくれることを約束してもらう代わりにしっかりと食糧をやろう、運んでくれ」
信房の言葉で一緖に連れてきていた侍女たちに事前に用意させておいた雑穀雑炊を運ばせる。米は貴重だしたかいので入っていないが、稗・粟・黍だけの雑炊だ。しかしそんな食べ物でも、彼らは貪るようにとても美味しそうに食べ始める。
「皆の者、他の物も食べたいだろう。来月あたりに城攻めがある、そこを落とせば三郎様の城になる。頑張れば飯の材料が増えるぞ!」
集まった者達は決心したような顔をしている。彼らは次も食糧が食べられるとあって三郎のためにも城を今にでも落としたいと思う者が次々と増えていくのだった。