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プロローグ・ 天目山

新しく書き直させていただきました。内容も違いますが何とか続けていきます。

ブックマーク、ユーザー登録、感想など宜しくお願いします。

■天正10年(1582)甲斐国 山梨郡 田野


「申し上げます!織田軍の先鋒約4千がこちらに向かって来ております!」



天目山の麓、田野に陣を敷いていた武田軍の所に物見に出していた家臣が転がり込んでくる。背中には3本の矢が刺さっており、転がり込んできた家臣はその言葉を最後に眠るように息を引き取った。


「そうか…。勝資!昌恒!準備は良いか⁉︎」


甲斐武田家20代当主、武田四郎勝頼が叫ぶ。

武田信玄と諏訪姫の間に生まれた子である。戦国最強と言われた武田軍団を率いて織田・徳川連合軍と戦ってきたがそれも今日までとなった。


「「はっ!」」


最後まで付き従ってついてきた家臣、跡部勝資と土屋昌恒が返事をする。

勝頼は勝資以下43名を率いて織田軍が坂を登ってきている道へと向かう。


「昌恒、お主はある程度戦ったら小夜姫さよひめと信勝を上州の安房守(真田昌幸)のところへ逃がせ良いな!」


勝頼の正室、北条夫人。正式な名前は不明であり、この物語では小夜姫とする。小田原・後北条氏4代目当主・北条氏政の妹である。


「お館様⁉︎それがしも最後まで戦いとうござりまする!」


昌恒は当然、最後まで勝頼と一緒に戦うと思っていたので勝頼の言葉に驚く。


「昌恒、その気持ちは充分に伝わった。しかし武田家を滅ぼさぬためじゃ、頼む!」


勝頼は昌恒に頭を下げる。

それを見た昌恒は慌てて


「お館様⁉︎頭をどうかお上げください!……わかりました。この土屋右衛門尉昌恒。必ずや、上州までお送りいたします」


「すまん、昌恒……」


勝頼は申し訳がなさそうに昌恒に言った。



➖ ➖ ➖ ➖ ➖ ➖ ➖ ➖ ➖ ➖ ➖ ➖



勝頼率いる43人の武田軍と織田軍の先鋒・滝川一益隊が衝突する。

最初は昌恒たちの活躍もあり少数ながらも優勢だったが、さすがに多勢に無勢。次々と討ち取られていく。昌恒は周りで戦っていた3人の味方にこの場を頼んで勝頼の頼みを果たすため本陣に向かう。


ちょうどその頃、勝頼と息子・信勝は次々と敵を倒していた。


「信勝、見事な槍裁きよ!」


信勝は槍を突き出し、瞬く間に4人、5人と突き伏せた。5人目を突いたときに父、勝頼の言葉を聞いた。

初陣で父に褒められ、嬉しかった。

一方、勝頼は大刀を持って周囲の敵を斬っていた。


「ありがとうございます父上!」


信勝はさらに突き伏せる。

勝頼は敵を斬りつけながら周囲を見渡す。

周囲にはまた6人の味方が戦っていた。その中には秋山源三郎景氏の姿もあった。


「信勝、源三郎?お主たち上州へ逃れよ!」


「なにゆえですか⁉︎父上!」


信勝が勝頼に叫ぶ。


「ここで武田の血を絶えさせる訳にはいかんのだ、早よう行け!」


「ですがっ!」


それで信勝は喰い下がらない。


「早よう行け!たわけが!」


その勝頼の言葉を聞き信勝はしぶしぶ上州へと向かう。

その後信勝、源三郎は武田残党狩りにより討ち取られた。


ちょうどその頃、昌恒は本陣にたどり着いた。

昌恒が本陣にたどり着いた時、全身血だらけになった阿部 加賀守が駆け込んできた。


「奥方様、申し上げます。お館様以下10名は立派に戦死なされました!敵をこれ以上食い止められません」


そう言って加賀守は戦場に戻っていった。

本陣からも敵が観えた。2百人ぐらいだろうか、槍、刀を持って坂を勢いよく登ってくる。


「お急ぎなさいませ、敵がせまってきておりまする」


昌恒は小夜姫に言う。

それを聞いて小夜姫は落ち着いた態度で


「昌恒、私は逃げません。ここで勝頼様と共に…」


その小夜姫の覚悟に昌恒は何も言えなかった。


小夜姫は自決の準備に取り掛かる。

彼女は小田原から付き添いとして来ていた、甲野 内匠助、剣持 但馬守、清六庄衛門、清又七郎の4人に自分の黒髪を切って落とし、一束ずつ4つに分けて渡した。


「いいですか、私の死に様をよくよく見届けてからこの場を逃げてください。そして4人のうち誰かが必ずこの黒髪を小田原にいる兄上に届けてください。それと北条家を恨みますと伝えてください。昌恒、介錯わをお願いします」


(勝頼様…もうすぐ私もそちらへ参ります…)


小夜姫は懐剣を抜く。心臓があるあたりを確かめて突き立てようとした時だった。


またもや血だらけの阿部 加賀守か本陣に駆け込んで来た。


「申し上げます。敵方の軍勢が総崩れです!」


本陣にいた小夜姫や女中、昌恒らは驚く。


「何が起きたのだ⁉︎」


昌恒は加賀守に詰め寄る。


「援軍でございます。旗印は四つ割菱、武田左京大夫信義様の軍勢です。数はおよそ1万」


信義の軍勢は織田軍を瞬く間に押し返し、織田軍の兵は次々と逃げていく。

しばらくして本陣に家臣を引き連れた立派な鎧と兜を来た信義が入ってきた。


そして小夜姫の前で地面に片手をついて


「小夜姫様、遅れて申し訳ありません。武田左京大夫信義、助けに参りました。それと四郎は何処に?」


武田左京大夫信義、武田信玄の三男武田三郎信之であり勝頼の兄、のちに改名して信義と名乗っている。


信義が尋ねる。すると突然小夜姫が泣き出し、代わりに昌恒が、


「お館様は、先ほど立派に戦死なされました」


昌恒も目元から涙が溢れていた。


「そうか……少し遅かったか…兄より先に行くとは、すまぬ四郎」


信義は手を合わせて涙をこぼしながら謝るのだった。


脱字、意見などありましたら知らせてください。

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