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後悔という字は

 いつものカウンターの席で、疲れた……とだらしなく額をテーブルに着けている俺に苦笑しながら言ってくる漢がいた。


「なるほどねぇ。そんな大変な事になってたのね」


 俺達はミランダに夕食を出して貰い、食べ終わって、今日あった事を報告って訳じゃないが、聞いてくれよ……と俺が泣きついて聞いて貰っていた。何故なら、


「俺はルルが女の子って知らなかったし、報酬に頬にキスを要求なんてしてないって言っても、こいつら信じようとしないんだぜ?」


 そう、俺はルルから依頼を受けて、ルルの姉にかけられた呪いを解く為に、初代勇者の謎の死が語られる神殿跡へと行って帰ってきたのである。

 呪いの元凶のオルデールの消滅させ、俺達はカラスとアオツキを携えて帰ってきた。その時、ルルにされた頬にチュッと言うのが、こいつらから見るとロリコン認定確定らしい。


 2人は俺を挟むように座っている為、両端から冷たい視線を受けて、だいぶ参っていた。


 そんな風に参っている俺を見て、ミランダは楽しそうに笑うが、どうやら今回は俺の味方になってくれるようである。

 ルナ達に微笑み、気持ちは分かるけどね、と始めて、人差し指を立てて、2人に言って聞かせる。


「この際、トールがロリコンかどうかは、さておきましょう」


 俺は咄嗟にオイッ!と突っ込むが、スル―されて話を続けられてしまう。


「ルルって子は私が見た限りでも、女の子扱いされるのを嫌うような子だったわ。それが、恥ずかしい思いを押し殺してでも、トールにお礼してきた粋な女心を汲めない2人じゃないわね?」


 ミランダに微笑まれた2人は、ウッ……と仰け反り。お互いを視線で会話するように目を合わせると溜息1つ吐くと諦めるように言ってくる。


「仕方がないの。徹がロリコン疑惑はともかく、乙女の気持ちは護るべきものなの」

「そうですね、疑惑の払拭はできませんが、あの少女の想いを否定する訳にはいきませんね。お姉さんが助かって嬉しかったでしょうし」


 本当に仕方がなく、と強調して、2人は横目で俺に言ってくる。


 ミランダが良い仕事したっと言わんばかりに俺にウィンクしてくる。


「頼むから、ロリコンのほうを何とかしてくれぇぇ!」


 俺はしばらく、カウンターに突っ伏して、シクシクと泣き続けた。



 それから、泣くのに飽きた俺は、出されたコーヒーにウンザリしていると、再び、ミランダに声をかけられる。


「それはそうと、そんな凄い武器を手に入れても、使いこなせなければ宝の持ち腐れもいい所よ?」

「そう言われてもな?」


 帰ってきた時よりはマシにはなっているが、きっと寝て、起きたらとっても酷い状態になってると俺の直感がなくても分かりそうなほど、痛い。


 そう、ミランダと話をしてると、両サイドにいる2人の目に剣呑な光が一瞬宿るが、ミランダを見ていた俺は気付かなかったが、ミランダは立ち位置上、気付いて苦笑していた。


「とりあえず、明日一日寝ながら考えるわ」


 腰が曲がって退化状態で触れるとこに触れながら、ミランダの早く、人間になるのよ?とミランダにからかわれて、俺は部屋へと戻って行った。



 次の日、目を覚ますと予想通り、全身筋肉痛に襲われた俺は、ベットの上で悶々としていた。


 ルナと美紅は目を覚ました時点で部屋にはおらず、美紅はともかくルナが寝てないのは珍しいな?と窓から漏れる陽の感じから早朝、という訳ではないが、ほっとけば間違いなくルナならまだ寝ている時間であった。


 しばらくすると2人が入って来て、こんな俺の状態なのにルナはクレープを食べに行くと騒いだが、美紅が驕るという言葉に気を良くして、俺を置いて、市場へと繰り出した。


 俺はヤレヤレ……と溜息を吐きつつ、天井を見上げると、カラスを握った時に見たオルデールの記憶の洗い出しをすべく、目を瞑って、考えに更けた。



 夕食時前にクレープを食べたが、昼も食べてなかった俺は腹が空いていて、とてもじゃないがクレープで腹は膨れない。

 なので、ミランダに夕食を強請った。


 美紅はともかく、ルナはやはりというべきか、クレープでお腹が一杯になったようで、リンゴジュースを舐めるように飲む事で俺達の食事に付き合った。


 食事がいくらか進んだ時、カウンターに戻ってきたミランダに声をかけられる。


「どう、トール? だいぶ体は楽になったかしら?」

「ああ、だいぶ楽になったよ。筋肉痛も回復魔法で治ればいいんだけどね」


 そうボヤく俺に笑顔を見せて、回復魔法も筋肉痛には気休めにしかならないから、と笑う。


 何故、筋肉痛に回復魔法が効かないかという余談を伝えると、諸説色々あるが、筋肉痛は今ある筋肉が崩れ、新しい筋肉が生まれる、その時の崩れた痛みが後から来るというのが有力な定説である。新しい筋肉が生まれるという超回復が起こる中、回復魔法をした所、軽い追い風を受ける程度にしかならない、という問題が効かない理由である。


「体が適応しようっとしてるのだから、そんな我儘言うものじゃないわ」


 そう言いながら、何を飲むっと聞かれたので、俺もリンゴジュースっと答えると、コーヒーね?と笑顔で切り返されて、目の前にコーヒーを置かれて、涙した。

 せめて……と思い、砂糖とミルクの強奪に成功した俺を困った子だわ……と見つめるが、たまにはいいわね、と納得するとコップを磨き始める。


「それはそうと、どうするの?」

「えっ? 何の話だ?」


 その武器を使いこなす話よ、とミランダに呆れられると、ああ、それのことねっと俺は思い出して、苦笑いする。


「色々、考えたんだけど、やっぱりここは王道で修業しかないかなってさ」


 ギラリっと目を光らせたように見えた左右の2人を見た時、俺は何々??と背筋をソクっとさせるが、改めて見るといつも通りの、2人に戻っていたが、正面のミランダが苦笑しているのが気にかかる。


 ミランダを見つめて、どうなってるのか聞こうとすると美紅が、カウンターに置いた左手を優しく、両手で包むように、絡め取るように……と掴むと笑顔で言ってくる。


「そういう事なら勇者式、特別訓練法でお手伝いさせて頂きます」

「えっ? そんなのあるの?」


 そう聞く俺に美紅は優しげに頷くのを見た俺は、へぇーそうなのか……と納得すると美紅の口の端が上がったように見えたが一瞬の事だったから見間違いかもしれない。


「美紅、貴方ね、訓練なんてやった事ないでしょ? それに勇者式とかないのは知ってるわよ?」

「大丈夫です。トオル君、私に任せてください!!」


 美紅は珍しく、大声を上げて言ってくる。そのせいでミランダが何やら言っていたようだが俺には伝わらなかった。


 今度は、右手をルナが、そっと触れるようにして、ガッシリと掴んでくると、とても良い笑顔をしたルナが言ってきた。


「私達、神々に伝わる伝説の訓練法もあるの。これで徹も完璧なの」

「それは頼りになりそうだな、伝説って響きがいいな!」


 ルナは何やら、持っている本を掲げるが見えている方向が背表紙な為、何が書かれているか見えなかったが、きっと神々の訓練法とか書いているのだろうと思い、頷くが、正面にいるミランダが焦った顔して口を開く。


「ルナちゃん、それをどこで見つけてきたの? ううん、そんな事より、それは不味いわ。加減を知らないルナちゃんだとトールが最悪……」

「これで徹も間違いなく、カラスとアオツキを使いこなせるの!!」


 ルナも叫ぶように言って来て、変な感じだが、なるほど……と納得する。


 慌てるミランダを尻目に美紅は立ち上がり、俺の左腕を掴み、介助するように立たせる。


「善は急げといいます。できれば、明日、出発したいので、今日は早く休んで筋肉痛とさようならしましょう」

「私がドアを開けてあげるの~」


 そういうとルナは部屋へと駆けていき、扉が見えない位置を歩いているのに、ガチャ、という音が聞こえる。もうスタンバっているようだ。


「トール、無事に帰って来てね?」


 食堂を出る直前にミランダのセリフが気になった俺は、声をかけようとしたが、美紅に腕を掴まれて連れられていて、抵抗もできずに部屋へと連れて行かれる。


 1カ月後、生還してきた俺は過去を振り返った時、俺は後悔する。あの時、ミランダに詰め寄ってでも、その真意を聞かなかった自分を殴ってやりたいと……

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