太陽のような
バイブル、頑張ってるお! 結構、疲労困憊ですが(笑)
ネイサンは暗さを隠さないニヒルな笑みを浮かべながら灯台のほうへと戻り始める。
「所詮は三下。パワードスーツを着た俺に勝てる訳がねぇ」
そのパワードスーツを再び、エマを通してしまう為に移動していた。
パワードスーツは確かに強い力を発揮できるが、重量的に今のような動きは今の科学では不可能である。
それを可能にしているのが毒の力であるが、これが想像以上に消耗するのである。
だから、安心できる保管庫が必要でそういう意味ではエマの存在はネイサンにとっては嬉しい誤算であった。
そんな事を思い出していると背後から強い光が弾けたのに気付き、振り返る。
「な、なんだ?」
そう言うネイサンであったが、言いながらもその答えに自分で行き着いている。何故なら、その方向に吹っ飛ばしたのは自分なのだから。
エネルギー砲の直撃を受けても、戻ってくるのか、と手が震える。
その震えに気付き、思い出す。トランウィザードが言ったセリフが蘇る。
「何度も言っているでしょう。彼は幾度も出来る訳がないという状況を引っ繰り返し続けてきた少年。数字では語れないイレギュラーなんですよ。数字的には初代と轟君を戦力外にした事で勝ちが動かないように思うんでしょうけどね」
その言葉を思い出しながら、後ずさる。
まだ生きていたというだけでなら、丈夫過ぎるとゴキブリだと笑って終わる。
だが、先程の光ほど強い光が落ち着いているとはいえ、徐々に上がってくる光の存在が生きてただけという話は有り得ない。
崖下からゆっくり上がるその光を見たネイサンが呟く。
「le soleil (太陽)」
崖下から五体無事の徹の姿が現れる。
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崖下から輝きながら戻り、地面に降り立つ徹を見つめて、2人がエマに笑いかける。
「ねっ? 言った通りなの」
そう言って、ルナと美紅はエマを見つめるが強張った笑顔が心配をした事を知らせていた。
いくら信じてるとは言っても不安がない訳ではないらしい。
エマも徹の無事は嬉しいがこの後、どうなるかと思うと不安で一杯であった。
何故なら、徹が勝つという事はネイサンを失う事になると思った為である。だが、ネイサンは口で言って止まるような生易しい存在ではない。
だったらどうしたらいいか、エマは必死に考える。そして気付くとルナに縋りつく。
「ルナ、お願い。私にしたみたいに兄さんにもしてあの黒いのを取り除いて!」
必死なエマを見て悲しそうにするルナは首を横に振る。
ルナの態度から本当に無理と感じ取ったエマが「そんな……」と言って項垂れようとするのを防ぐように美紅が肩を押さえる。
「諦めないで、トオル君を信じてあげて。トオル君は、1人の女の子の涙を止められないほど甲斐性なしじゃないです。何せ、世界を救った英雄ですからね」
えっ? と呟くエマは自分の頬に手をあてると濡れている事に気付く。どうやら自分でも意識せずに泣いてたようである。
「トオルが世界を救った?」
「そうなの、徹はアローラという世界を救った英雄、女神達の英雄 (Goddesses of hero)。信じる力、想いの力をどこまでも昇華させるの。きっとエマの願いも叶えるの」
そう言われてネイサンと向き合う徹を見て、今まで疑問に思ってた答えに辿り着いたような気がした。
世界大会で兄のネイサンに勝利した和也が最後に競った兄を見ずに他の誰かを見てるようで腹を立てていた。
ネイサンは馬鹿にされたと思っていたようだが、きっと和也が見ていたのは、遠い場所に居る者は徹だったのではないかと気付かされる。
以前、徹に思った、世界一の兄を持つ事に劣等感を抱かないのかと思った事がある。
事実は逆だったのだ。
和也が世界を救った弟の傍にいる為に世界一の称号を手にしたかったのだと今、理解する。
だから、ネイサンを見てなくて当然だったのである。
そして、今、兄であるネイサンは和也すら傍にいるのに肩書を求めた相手と対面している。
きっとそれを理解してないはずだが、ここから見えるネイサンが後ずさる姿を見て、本能的には理解しているのが見て取れた。
ルナと美紅の言葉がどこまで本当か分からない。でもそれ以外に縋る言葉を持ち合わせないエマは手を組んで跪く。
「どうか、兄さんを助けて、お願い、トオル!」
祈るエマの両傍らではルナと美紅は心から信じる少年、徹を見つめる。
きっと成しとけると……誰かの想いに応え続ける自分達が心を預けた、たった一人の人だから
▼
ネイサンと再び向かい合った俺はゆっくりと地面に降りるとネイサンに向かって歩き始める。
左手に持つアオツキが俺に期待に応えて見せるというイメージを放つ。
まったくこっちの思いは筒抜けかよ、と自嘲したくなる。
「沙耶さん、戻ったばかりだけど力は使えそうかい?」
「うむ、完璧だ。徹との魂の波長もピッタリ、徹のお宝がどこに隠してるというプライベートまで既に網羅している!」
おいおい、全て、筒抜けかよ、って、待ってぇぇぇ!!! その部分にはノ―タッチでお願いしますぅ!!
俺は知ってるんだからな? 美紅とコンタクトを取った事があるのを、お願いしますから、美紅達には是非、ご内密にぃ!!
「あははっ、やっぱり徹さんは楽しい。いつも自然体というか、最高だよね」
「笑ってる場合じゃない。沙耶さんを阻止してくれよっ!」
…………
黙るなぁ――!
既に戦う前に疲労困憊になる俺は、深い溜息を吐く。
「その辺の話は全てが終わってから話し合いをしような?」
「ふん、望むところだ」
「我も参加希望だ」
楽しげな沙耶さんとカラスの声が応答する。
俺の身辺整理を律儀に待っててくれたのかと思えば、顔を強張らせてこちらを見てるネイサンを見て、怯え出している事に気付く。
そんなネイサンとの距離が10mといったところに来るとカラスとアオツキを仕舞うと片膝立ちになる。
「ネイサン、俺がお前を解放してやる。抵抗するなとは言わない。好きなだけ足掻いてみせろ、後悔がないようにな?」
カラスの柄に手を添えて俺は精神を集中を始めた。
俺が呼吸を浅く長くしていくのを見守るネイサンは恐慌状態に陥ったようで狙いもつけずにエネルギー砲を放ち始める。
動かずとも当たる場所に飛んでこないエネルギー砲を恐れる理由もなく、俺は黙って精神を磨ぎ済ませていく。
時折、掠るような攻撃もあるが服が破れる程度なら無視し続け、一度、頭に直撃しそうになるエネルギー砲があったが首を傾げるだけで避ける。
まずはネイサンの心の拠り所を奪う!
足元に電撃を発生させると俺の体が地面から僅かに浮く。
ネイサンを睨むように見つめながら、「行けっ」と呟くと自分が弾丸になったかのような錯覚を覚える速度で飛び出す。
「くるなぁぁぁ!!」
直線的に動く俺目掛けてエネルギー砲を放ってくる。
それを俺は肩で受け止めるようにして雄叫びを上げながら突進して行った。
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