暗躍していたモノ
大五郎から借りた書類に書かれている、エマ達の住んでる家をまずは目指した。
どう考えても、ネイサンの研究所がクロだと俺の勘も叫んでいたが、今の俺の優先順位はエマの安否確認である。
和也も轟も心配してない訳ではないが、あの2人が簡単に死ぬとも思えないし、和也の息の音を止めるのは俺以外にあってはならない。
少なくとも、俺の前で足腰立たなくなってる和也を踏むまでは俺が許さないと決めているから、無事に決まっている。
強気な事を色々考えているが、俺は、頭の片隅で囁く、もう一人の俺の言葉を必死に掻き消すのに必死だった。
そんな可能性なんて考えるに値しないと俺は被り振る事で振り払おうとする。
「エマはきっと家にいるはず……」
自分の言葉なのに、とても空々しい言葉に思え、今日ぐらい自分の勘が外れる事を祈りつつ、エマが住む住宅街へと走って行った。
エマの家は、閑静な住宅街の一軒家であった。
間違ったら嫌だったから表札を捜すと手書きの小さい看板がドアノブに掛かっていた。
『デュボア家
ネイサン
エマ 』
と書かれているのを発見する。
どうやら、エマの家で間違いないようであるが、日本というモノを明らかに勘違いしている外国人といった表札である。
筆跡から、エマが書いたようで苦笑いが込み上がる。
気を取り直してインターホンを押したが、鳴っているような気配がしないので、ドアをノックしてみようと近寄ると、ドアが完全に締まりきってない状態で開いているのに気付く。
俺は、ドアを開けて玄関に入る。
「失礼します……」
玄関に入ると生活感のない何もない玄関に眉を寄せるが、一足の女物の靴がある事に気付く。
それを見た俺は、ホッとすると玄関からエマを呼ぶが、反応らしい反応はなかった。
「本当に病気で寝込んでるのかもしれないが、悪いけど上がらせて貰うぞ」
返事はないとは思うが、俺はそう弁解してから靴を脱ぐとなんとなく2階に目指して階段を上がって行く。
2階に上がると3つ部屋があり、その内の1つが扉が開いていたのでそこから入って行った。
中に入ると玄関からここまで生活感がなかったが、この部屋はシンプルだが、誰かが生活している空気があった。
とは言っても、ベットと勉強机があるだけで、女の子してると思えるのはベットの頭の所にクマのぬいぐるみが置いてある事ぐらいである。
どうやら、ここはエマの部屋で間違いなさそうであるが、この部屋の主は不在であった。
靴があるからいるだろうと思った俺は片っ端から部屋を見ていくが、隈なく探さなくても空き部屋で何もなく、台所や風呂などの生活に必要そうなところ以外は何も使われた形跡すらない始末であった。
なんとなくは思っていたが、エマはネイサンと一緒に暮らしてた訳ではないようである。
せめて、エマの行き先や、ネイサンの事に関する事のヒントなりないかと思い、エマの部屋にやってくるが、少し躊躇する。
勝手に上がり込んでる身ではあるが、さすがに女の子の部屋を家探しするのには抵抗を感じたが、緊急事態と自分を騙して、探し始めた。
まずは勉強机から探すと机の上に写真立てがあるが寝かせてあって見えなくしてあったので起こす。
そこには、今よりも少し幼い笑顔のエマが、鼻につく笑みではあるが、笑っているネイサンの腕に抱きついている写真であった。
エマ達にもこんな時があったのかと思える。あの体育館であった出来事を思うと、信じにくい事実な事は間違いなかった。
そして、机の引き出しを開けると小さなお椀型の触り心地の良い未開封の商品が出てくる。
俺はこれが何であるか知っている。前に美紅が真剣に雑誌を読んでるな、と思った俺は後ろから覗きこむと、
『さあ、貴方も今日から1カップUP。気になるアイツも挙動不審になる事、受け合い! 思った時が買う時です。フリーダイヤル……』
俺はそれを見た時、息を殺して逃げた。
そう、俺が握っているのは胸パット!
どうやら、勢いで買ったようだが、使うのを踏み止まっているようである。
「頑張れ、エマ、まだ試合終了には早過ぎる……」
俺はそっと、危険物を元の場所に戻す。
次の引き出しを開けると、『Diary』 と書かれた物を発見する。
「日記か」
そう言うと取り出すとパラパラと捲り、真っ白の紙になったのでそこから遡る。
遡ると、最後の日付は2日前であった。悪いとは思ったが読んでみようと思ったが母国語で書いているから読めないと諦めかけるが、ビックリする事が起こる。
なぜだか、分からないがなんて書いているか分かるのである。
どうして読めるのかと不思議に思わない訳ではないが、今は、どうでもいいと割り切り、日記に目を走らせる。
『日本に来る前から段々、おかしくなっていった兄さんは日本にくると妹の私から見ても別人かと思えるほど変わってしまった。私は兄さんに嫌われるのを恐れて、何も言わずにきたが、学校の体育館で我慢できずに思い切って話しかけた時の兄さんの目は、路傍の石を見るようにして私を叩いた。また私は目を耳を塞いで、また逃げようと思った時、日本に来てできた友達、ルナ、美紅……そして、トオルと出会った。きっと、相談したら全力で応えてくれる気がする。だから、相談する前に私はもう一度、兄さんと対話をしようと思う。思い切って、兄さんに電話をして会って話をしたいと言うと、初めは私なんかを相手にしてる時間などないと叫んだが、突然、会う事を了承してくれた。何が理由で気変わりしたのかは分からないが、明日の夜に会ってくれると約束してくれた。しっかりと話をすれば、きっと兄さんも分かってくれる。それで、きっと、トオルの兄さんの和也さんとも和解して、日本での新しい生活が楽しいモノになるはず。だから、明日は私は頑張るからね?』
続きに、『ト』と書かれているが射線を引いて消されていた。
最後に何を書こうとしたのかは分からないが、エマなりになんとかしようと頑張っていたようである。
だが、ネイサンと会おうとしていたエマが消息が分からない。どう考えても嫌な予感ばかりが募る。
「やっぱり、全てはアイツの研究所に行かないと話は進まないか……」
俺はそう呟くと日記を机の上に戻すとエマの家を後にした。
そして、俺はネイサンの研究所として利用されている使われてない灯台にやってきた。
視界に入る距離で、女神の毒の気配がビンビンに伝わり、ネイサンがあそこにいると確信すると同時に、体育館の時の漏れ出たように感じさせられたが、あれはブラフだったと理解する。
灯台だったモノに近づいて行くと、まるで俺を歓迎するように扉が勝手に開く。
罠臭はプンプンするが、向こうが来るのを気付いている以上、不意打ちは無理だし、出たとこ勝負と覚悟を決めて、中に入る。
中に入ると黒い球体があり、その中に人の姿を確認する。
上半身を惜しげもなく晒し、豊かな胸は荒い息を吐くのと連動するように上下し、苦痛からか、汗を滴らせていた。
俺の姿を認めると笑みを浮かべる。
「囚われのお姫様ごっこか? 俺は胸が大きい子が好きとは良く言うが、オスには興味はないぞ? 轟」
「それは、僥倖だぁ。男でもいいとか言われたら、お前を殺すところだったぁ」
俺の安否確認に轟は軽いジョークで無事と伝えてくる。
後ろから、濃厚な女神の毒の気配に気付き、ゆっくりと振り返ると人間止めたかと聞きたくなる位置から俺を見下ろしているネイサンがいた。
俺の身長ぐらいの高さに浮いた状態で俺に2歩近寄って見せると話しかけてくる。
「ようこそ、歓迎するぞ? そちらから来てくれるとは思ってなかった。これから招待状を出そうとしてたんだがな?」
と小馬鹿にした風に言ってくると、俺を見て嘆息をする。
「どうして、この低能が一番の要注意人物なんだが、訳分からねぇ」
その言葉を聞いた瞬間、悪寒が走り、ネイサンに問いかける。
「誰に言われた?」
「低能に説明する言葉なんて持ち合わせてないってよ」
即答で答える気がないとネイサンが口にするが、聞き覚えのある耳障りな笑い声がする。
「ふぉふぉふぉ、ならば、私がお答えしましょう。お久しぶりですね、hero of Goddesses のトール君」
「生きていたのか、トランウィザード」
最初に会った時と同じように魔法使いのような格好をしたトランウィザード厭らしい笑みを浮かべて現れた。
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