過去が迫る?
過去というのは、きっちりと始末を着けたつもりでも、しぶとく「こんにちは」してくるものだったりします。
だから、バイブルは控えません。パチスロの収支の記録を控えずなかった過去として忘れるようにしています(泣)
俺は、インドにやってきていた。
すまん、嘘を吐いた。
だって、カレーの匂いに包まれているんだぜ?
えっ、無理がある?大丈夫、俺自身がちゃんと気付いている。
カレー = インド、という発想が貧困な事ぐらいなっ!
まあ、聞いてくれ、俺だって現実逃避したい時ぐらい、1日に両手で数えられるぐらいあるんだ。
誰だって、俺と同じ目に合えば、きっと共感してくれるはず!
俺は、轟に連行されるようにして、行きつけだというカレー屋に連れてこられた。しかも、顔が効くと自慢げに言われた俺は、そのドヤ顔を笑う為に褐色の肌にデコの中心に真っ黒のホクロ(自前?)を持つ主に言ってやった。
「倍盛りでルー多めでっ!」
俺の言葉に轟は、「ほう、やっぱり徹はチャレンジャーだなぁ~」と嬉しげな笑みを浮かべた時、嫌な予感がした。その時にオーダーを撤回していればと俺は今は激しく後悔していた。
「俺ぁ、いつもの」
轟は、慣れた感じに注文を済ませる。
それに頷いた主は、黙って厨房へと消えた。
「で、わざわざ、大事なシンシヤさんとの食事タイムを放り投げてまで俺とカレー屋に来てるんだ?」
「ば、馬鹿野郎っ! あ、あれは、アイツが煩く言うから仕方がなく付き合ってやってるだけぇだぁ。今日は、お前と話があるから、俺の分は後で食うって言ってある」
結局、食うんだ、という生温かい視線を向けると自分がドツボに嵌った事に気付いた轟は目を逃がして舌打ちをする。
アローラでコイツがこんな感じだったら、きっと一緒に戦ってたという過去もあったかもしれないと思うが、過去は変える事はできない。少なくとも、今、ここで悪態を吐きながらでも、こうしてカレーを食べに来てる、この現在で俺は満足だ。
「まあ、シンシヤさんとラブラブで、轟、死ねばいいのにという思いは胸に秘めるとして、何の用だ?」
「秘めてねぇーじゃねぇかっ、ちぃ、まあいい。まあよ、予想通りなら重要ではあるがそこまでぇ急ぎでもない話だ。食いながらでも話せるからなぁ」
轟は、店の奥のほうをチラッと見て顎でしゃくる。
俺も釣られてそちらを見ると目が点になるのに自分で気付く。向けた視線の先には、主が凄い良い笑顔を浮かべて、山となっているご飯に負けるかと言わんばかりのル―の海という有様の大皿を運んできている。
俺は、轟って予想通りに食べるんだな、と思いつつも、もう1人の俺が「現実逃避は止めようぜ? 気付いて、気付いちゃってるんだろ?」という言葉に涙目になりがら、イヤイヤするように首を振る。
「はい、お待たせしました。倍盛り、ご飯1.5k、ル―多め、800gになります」
流暢な日本語で言ってくる主であるが、日本語間違えてませんか?というより分量を明らかに間違えてるよね?この店の通常がご飯750gなのか!
俺が想定した量より通常の量のほうが多いなんて詐欺だろ!
「えっと、これが俺が注文したのですか?」
と問うと笑顔で頷くと奥に引っ込んでいく。
キョドってる俺が面白いらしい轟は、腹を抱えて笑いながら、俺の後ろを指を差してくる。
差した方向に目を向けると激しい頭痛に見舞われる。
『貴方の胃袋に挑戦状。店主は人生を棒に振る覚悟完了済み。食べ残しは通常で千円、後は倍々に上がっていきますのでご了承ください』
人生、棒に振ったら駄目だろ!と思うが、既に俺が振りそうになっていると目の前の山を見つめる。
「この店はよ、どの量でも500円、ワンコインで食わせてくれる。だがよ、食べ残しはペナルティがおめぇーぜ?」
くっくく、と笑う轟は、「俺が驕るのは500円、割引券を使って300円だけだぜぇ」と口の端を上げてくる。
俺は、こんなの食えるかぁ!と叫んで轟のものと交換要求をしようと口を開こうとした時、ドン、と重量感を感じさせる音と共に対面にいる轟の体を隠すような大きな山が現れる。山の頂に轟の頭だけあるかのような錯覚を起こさせるその山の正体は……
「はい、お待たせしました。トドロキスペシャル、ご飯5k、ル―2kになります」
「おおっ、きたきたぁ、さあぁ、徹、食おうぜぇ」
「んっ、おうよ」
かろうじて、轟には俺の想いは届かなかったようで胸を撫で下ろす。
そして、俺は果てない戦いの幕を切って落とした。
それから20分後、轟は爪楊枝を使いながら、ほぼほぼ、スプーンが止まっている俺をニヤニヤしながら見つめていると声をかけてくる。
「さて、もう食えないだろうから、話を進めるか」
「待て、俺はまだまだ戦えるっ!」
俺はスプーンを半分にやっと減った山に突っ込むが、リバースしてしまいそうになり、手で口を覆う。
轟は、「しゃーねぇーな」と言うと、俺からカレーを奪うと掻っ込むように食べる。食べるというより飲むように食べる轟を見て、化け物かと思ったのは仕方がないだろう。
食べ終えると新しい爪楊枝を取り出し、咥えると俺を見つめて、話始める。
「今日の初代とのあの白髪野郎との一戦の話だ」
轟がそう言ってくるから、「白髪じゃなく、銀髪だろ?」というと、「どっちでもいいだろ?野郎なんだから」と言われて、激しく納得した。
「俺も見てたがよ、徹はアレを見てどう思ったよ?」
そう言われて、あの一戦を最初から思い出してみる。よくよく思い出してみると凄まじい違和感に囚われる。一回、おかしいと思うと色々、あの時は流して気にもしなかった事に気付き始める。
「やっぱり、気付いてなかったみてぇだな。今の問いかけで思い出したようだが、ギリギリだぜぇ? 平和ボケし過ぎも考えモンだな」
「と言う事は、あのガントレットの違和感か?」
腕を組んだ轟は、「ああっ」と頷いてくる。
そうだ、確かにおかしい。どう考えてもネイサンは学者肌で体を鍛えてないのが外見からで良く分かった。
なのにだ、あのガントレットを着けた途端、俺達に当てるのは無理ではあるが、あれだけの速度が出るものだろうか?何より、ガントレットの自重はどこに行った?科学はそこまで進んでいるという話はないであろう。
「なんか気持ち悪いな」
「ああぁ、俺もそう思うぜぇ。だがよ、俺は、あの気持ち悪いモンに心当たりがあったりするんだなぁ」
胸糞悪そうに目を反らす轟を見て、もしかして、と俺の中で解答が浮かび上がってくる。
俺の顔色が変わったのに気付いた轟は、頭をガシガシと掻いていってくる。
「多分、今、徹が思った通り、おそらくは、女神の『毒』だろうなぁ」
やっぱりか、と俺は思うが、何故、まだ『毒』が存在しているのかが分からない。最後にヨルズに会った時の会話からすると俺が戦った女神の完全消滅を感じさせるものだった。
考えに耽る俺を見つめていた轟は、言われたら当然そうだな、と頷ける事を言ってくる。
「その真偽を確認するにゃ、初代に確認を取るのが手っ取り早いだろ?」
確かにその通りだが、和也に物を教わる状況がどうしても嫌だった俺が考えから外していた事を突っ込んでくる。
それがどうやら、顔に出てたらしく、呆れた顔した轟に言われる。
「なんでよぉ、徹は、初代とそんなに仲が悪いんだぁ?」
轟は、「敵だった俺となら分かるがよぉ」と言ってくる。
「とことん、魂のレベルでお互い気に食わないんだろ」
とそっぽ向く俺に呆れながら、店に設置されている時計に目を向けた轟が少し慌てた顔をする。
「いけねぇ、そろそろ、戻らねぇーとシンシヤが半泣きになってる気がするぜぇ」
「お前、本当にシンシヤさんにべた惚れだよな?」
俺の言葉に嫌そうに顔を顰めるが口元がいつもより緩んでいる気がする。
「いいから出るぞ。先に出ないならお前に支払いさせっぞ」
「御馳走様でしたっ! 嫌だけど和也に会ってくるわ」
そう言って立ち上がった俺は、「シンシヤさんによろしく言っといて」と言うとおざなりに手で追い払うようにされる。
本当にウンザリするがそうも言ってられない俺は仕方がなく和也に会う為に学校へと急いだ。
支払いを済ませて店を出ると既に徹の姿はそこにはない。轟は、先程の徹との話で思った事があったが口にしなかった事がある。
それを笑みを浮かべて独り言を洩らす。
「初代と徹が仲が悪いのはなぁ、お互いに魂レベルで似てて、ほんのボタン掛け違いで大きな差が出ちまっただけの、まさに兄弟のような存在だからだろうよぉ」
フッ、と格好を付けるようにズボンのポケットに両手を突っ込んで佇んだが、シンシヤの事を思い出した轟は目の色を変えて学校へのショートカットを使って全力で学校へと戻って行った。
結局、チャイムと同時に帰ってきて、捜してる間にお昼休みが終わってご飯が食べれなかったと涙目のシンシヤにお説教された轟の話は余談である。
俺は3階の和也の教室に飛び込む。3年生の教室に入るのが普段なら多少なり緊張しただろうが、今の俺はそんな事を構う余裕はなかった。
周りも俺が和也の弟であると認識してたので、チラ見しただけで放置される。
和也の席を見ると真理亜とミラさんに挟まれてお昼をしてて、まったりと会話をしてたのか、俺を見ると目を細めてくる。
「和也、話がある。顔を貸してくれ」
和也に近づくと用件もすっ飛ばして声をかけるが、和也は何の話だと聞き返さすに返事をしてくる。
「ああ、俺もお前にイヤイヤだが会う予定だった。だがっ!」
目力を強めて睨むように俺を見る和也にちょっとびっくりした俺に畳みかけるように言ってくる。
「お前、今日、碌に授業受けてないだろう? 生徒会長として見逃せない。話は放課後にだ、分かったか?」
言われてみればと思い出す。まともに受けたのは1時間目だけだったと思い出すと、さすがに不味いかと乾いた笑いを浮かべる。
それを横で見ていた真理亜には嘆息され、ミラさんには「駄目ですよ、トールさん」と人差し指を立てて、メッを頂く。
「えーと、出直してきます……」
俺は負け犬のように自分の教室へと肩を落として戻って行った。
感想や誤字がありましたら、気楽に感想欄へお願いします。




