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猫耳と魔導師  作者: Nilvaren
第一章 異世界、猫耳、魔道師
3/12

C‐0101 召喚

 僕たちは今、どこまでも続く白い世界の中に浮いていた。

 『時間がないので簡潔に説明します。また、質問にはお答えできません。

 私は、あなたがたの世界の原型を作り、管理している、神界序列第百八十七位のクローディアです。

 あなたたちは、四種複合最上級四十二式召喚魔法、フィノスグレシアにより、レディラスという世界へ召喚されました。

 本来ならば世界を保護する障壁が召喚魔法を弾くはずでしたが、二つ隣の世界との間で起こった神力干渉の影響で障壁にわずかにひずみが発生し防げませんでした。

 皆様には私より加護を贈らさせて頂きます。この加護は、ステータスに一定の補正をかけます。

 向こうの世界には魔法があり魔物もいますが、皆さんは上位の世界の人間ですので、すぐに死ぬことはないでしょう。

 私は向こうへ干渉することはできませんので、私からできるのはここまでです』



 いきなり頭の中に響くような声が聞こえてきて一方的な説明を受けると、視界が白く塗りつぶされた。



==========================================



 「おきろ優也」体をゆすられる。目を開けると知らない天井。背中にひんやりとした石の感触がする。さっきまでのは夢ではなかったようだ。

 とりあえず、起き上がるか。「おはよう、空太」「お前が最後だぞ」

 「どこだよここ」

 「何だったんださっきのは」

 今僕たちがいるのは、床に魔法陣のようなものが描かれた一辺が二十メートルくらいの正方形の部屋のようだ。壁には大きな扉がひとつあり、窓はない。

 皆、戸惑っているようだ。そりゃ誰だって知らないところによく分かんない内に連れてこられたら戸惑うか。

 さっきの白い空間の時に話された内容をそれぞれが受け止めようとしているのか、騒いでいるのはいない。

 そうやってあたりを観察していると、大きな扉が開いた。

 そこから、護衛だと思う騎士数人に囲まれた、豪奢なドレスを着た、百六十センチくらいの青髪の女の子が入ってきた。

 「ようこそお越しくださいました、勇者様。」



 とりあえず僕たちは、エレーヌ・G・フィリスと名乗った王女の後に続いて、謁見の間、というところに来た。小さめの体育館くらいの大きさで、壁際には騎士がずらっと並んでいる。

 部屋の奥には、頭の上に王冠を乗っけた四十代くらいの男性が装飾の施された椅子に座っている。国王だろうか。

 その後ろには、ムキムキの爺さんと黒髪の眼鏡を掛けた長身の女性、王女と同じ青髪にそっくりのドレスを着た女性、たぶん王妃、が控えている。

 「我はフィリス王国国王、ダレアス・K・フィリスである。いきなり見知らぬ場所につれて来たこと、すまなく思っている」

 「は、そりゃどーゆーことだよ!」

 「ふざけんじゃねーぞ!」

 「帰らせてよ!」

 「何で私たちだけ?」

 「今日は妹の誕生日なのに」

 「元の場所に返せ!」

 「これ、ただのドッキリだよね?ね、そうなんでしょ?」

 「明日フィギュアが届くのにどうしてくれんだ」

 「あ、これラノベ的な展開じゃね?」

 「「「「「「「「良平は黙ってろ!」」」」」」」」

 「俺だけひどくね!?」

 ここまで誰に文句を言えばいいのか分からなかったクラスの皆は、一部の人たちを除いて、堰を切ったように騒ぎ出した。

 だけど、今騒ぐのは良くない。もし今のが不敬罪になったら、かなりまずいことになる。

 それに気付いているのか空太や東上さん、雪枝先生は必死に静めようとしているが、なかなか治まらない。そうこうしているうちに、壁際の騎士がこっちに来ようとしてきた。

 「陛下、このものたちを捕らえる許可を」

 「ならん。この者達は、我々の都合で呼び出したのだ。礼を失しているのは我々の方であり、彼らの言い分は正しい」

 とりあえず、最悪の事態は免れたようだ。先生が「今は分からない事だらけです。まずは落ち着いて彼らの話を聞きましょう」と言って皆を落ち着かせた。

 「我は立場があるので頭を下げることはできぬが、本当に申し訳なく思っている。だが、我々にもどうしても呼ばねばならぬ事情があった。話は長くなるであろうから、場所を移そうと思う」



 「フェリス王国宰相のリエラ・M・シャネルです。わたくしより皆様を召喚した経緯について説明させていただきます」謁見の間で国王の後ろに控えていた黒髪の女性はそう言った。

 謁見の間の三つ隣の部屋、四×二十メートルくらいの長テーブルが置かれた部屋で、僕たちは説明を受けることになった。

まあ、この国が危機に瀕してるから助けてください、とか言うんだろうなー。

 「今から二千年以上前、このフリス大陸は魔物の大氾濫によってほとんどの場所が魔物に覆いつくされました。

大氾濫は収まる気配を見せず、さまざまな町や村が地図の上から消えたそうです。

 当時この地域を治めていたエルネア王国は、未完成の異界召喚魔法を使い、見たこともない生地で作られた服を着た黒目黒髪の青年を召喚しました。


 彼は五人の仲間とともに大氾濫の発生した場所へ行き、元凶を断ち切ったとされていますが、その元凶が何だったのかについて、彼らは一切語ろうとしませんでした。

 そして彼は『私が死んでから八百七十三年後、三つの街がドラゴンに襲われ消える。その六百三十九年後、さらに三つの街がドラゴンに襲われ消える。それから六百六十四年後、再び大氾濫が起こるだろう』と言い残し亡くなりました。


 皇国暦六百二十三年にガリ、ウレスタートル、モストの三つの街が、千二百六十二年にオラーク、ナフロシア、ハリスの三つの街が実際に襲われました。そして、今日から七百二十日後が、大氾濫が起こるといわれている日です」

そこでいったん話を切ると、僕たちを見渡して、「異世界から召喚された方々は強大な力を持つと言われています。どうか、この国をお救いください。勇者様!」と言って頭を下げてきた。

 あー、うん。てんぷれだなー。てことは、「俺たちが皆さんを守ります」とか言うやつが現れたりして。

 「任せてください。俺たちが必ず皆さんを守って見せます」そういったのは加藤勇気かとうゆうき

 正義感にあふれ、いや、あふれすぎている学級委員だ。皆良い人だと思っている、夢を見すぎなやつで、それで今まで何とかなってきている。ヒーローにあこがれる子供をそのまま大きくしたとでも言えばいいのだろうか。

 まあ、助けてといわれて、僕たちにしかできないとなれば、助けないとは誰もいえないだろう。「ありがとうございます。衣食住についてはこちらですべて用意しますし、レベルが上がるまでは戦闘の補助もします」



 その後、この世界の情勢や何かについて説明された。分かったことは、

・大陸は二つある。

・このフリス大陸には七つの国と小国家群がある。今いるのがフィリス王国。

・隣のガラスト帝国と戦争中。

・魔法があり、魔物もいる。

・科学は発達してないが、そのぶん魔法が発達している。

・種族は大きく分けて人間、獣人、魔人、亜人の四つ。

・文字は日本語と英語。言葉も通じる。算用数字だけはアラビア数字じゃない。

・トイレは和式、風呂はある。

・一日は二十四時間、一時間は六十分、一分は六十秒。

・三十日で一ヶ月、それが十一ヶ月と、年末年始に十日間、零月れいげつがある。

・元の世界に戻るには転移魔法を使うしかないが、召喚魔法よりも難しい。召喚魔法は、すべての条件を完璧な状態に整えて宮廷魔術師五十人が全魔力を使って、それでも成功確率はわずか0.01パーセントくらい。いまのところほぼ不可能。

といったところだろうか。



 「皆さんのステータスを確認させていただきます。その後、今後のことについて、お話したいと思います。」

 そういって、ひょろりとした頼りなさそうな男(財務大臣)は青く光った水晶玉を持ってきた。

 この世界には、ステータスがあるらしい。あの、ゲームなんかでよく見る、レベルやスキルを表示するやつ。なんか神様が僕たちは上位の世界の人間だとか言ってたし、この世界の人たちより強かったりするのかな?チートステータスで俺TUEEEEできたりして。




   ―――そんな甘い考えができたのも、自分のステータスを見るまでだとは、思っても見なかった―――



 

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