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猫耳と魔導師  作者: Nilvaren
始まり
2/12

プロローグ

 「ここは…どこ?何で僕はここにいるんだっけ?」森の中で、滝本優也たきもとゆうやは濡れた体を起こした。そして、折れた左腕を見て、激痛と共に、この二週間ほどの記憶が流れ、そして理解する。


「ああ、そうだ。僕は―――――――――――――



==========================================


 「は~、なんで学校あるんだろ。今日も休みにすりゃ良いのに」そういうのは隣の席の千葉空太ちばそらただ。陸上部の部長で、こないだの大会では県三位。幼稚園のころからの親友だ。


 今日は木曜日。月火水と大雨の影響で臨時休校で、明日は開校記念日。いっそのこと今日も休みにして九連休にして欲しかった気持ちは僕も良く分かる。この雲ひとつ無い空を恨みたい。

 「そう言っときながら、『明日は早苗に会えるぜー!』って電話してきたのはどこの誰だっけ?」


 本当にこの雲ひとつ無い空を恨みたい。 彼女がいないから妬んでるわけではない。ないったらない。


 途端に狼狽える空太。「ちょっ、誰かに聞かれてたらどうすんだよ」

そう言いつつも、視線は斜め前に向ける。その視線の先にいるのは、一週間前にオープンしたばかりのケーキ屋の話をしている四人の女子。

 そのうち、黒縁の眼鏡を掛けた、茶髪の女子が、空太の彼女の久保早苗くぼ さなえさんだ。

短めに切られた茶髪やすらっとした体、うるさい教室の中でも聞こえてくるその楽しげな声からは、彼女の、元気のいい明るい性格がよくわかる。

 学力もそれなりにあり、運動もできて、可愛い。ただし、ぺったんこである。何がとは言わないが、ぺったんこである。


 僕はそれの大きさをどうこう言うつもりはないが、入学式の翌日に、「絶壁」と言った先輩が居たらしい。

そして翌日、その先輩は久保さんに会ったとたん逃げていったとか。

 何があったのかその先輩に聞こうとすると、頭を抱えて「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」と繰り返し呟いていたそうだ。

 学校の七不思議の一つだったりする。

 空太と久保さんが付き合っているのは僕と卯里さん以外知らない。


 久保さんの対面にいるのは、学級委員の東上加奈子とうじょう かなこさん。

 二年生中間考査の学年一位でテニス部部長、全国大会個人戦ベスト16。しかもかわいい。

 肩までかかるストレートの黒髪、おっとりとしたブラウンの瞳、すらっとした小ぶりの鼻、あでやかな唇。「天は二物を与えず」と言ったのは誰だろうか。


 こっちに背を向けているのは、学校の三大美女のひとり、卯里粋花うさと すいかさん。

 どんなときでも笑顔で、彼女はやさしさでできているといっても過言ではなく、その立ち振る舞いは優雅さに満ち溢れている。

 金髪ロングウェーブにオキニスの瞳であり、一部の熱狂的なファン?からは『聖女』と呼ばれている。

両親はともにふつうの日本人との事だ。

 彼女の目と髪の色も、七不思議のひとつだったりする。ちなみに、三大美女の残りの二人は、東上さんと三年一組の前原先輩。


 最後の一人は、卯里さんの親友の永浦美由希(ながうら みゆきさんだ。

 将棋部の部長で、全国大会で優勝。特技は二十一手詰めを五秒で解く事と、速読。

 ショートの黒髪に、真っ黒な、どこまでも見通すような瞳、すらっとしていながら出るところはきちんと出ている体。

 これで成績がよければ文句なしなのだが、中間考査は二年生七クラス二百六人のうち百九十七位なのである。ただし、決して馬鹿なわけではない。

 テスト中にも寝(・・・・・・・)さえしなけ(・・・・・)れば(・・)、一桁には入れる。

授業中にも寝ているのに、一桁に入れるだけの力はあるのだ。ほんと世の中って理不尽。


 そして僕は、毎日彼女たちと話すくらいには仲がよかったりする。おかげで毎日のようにちょっかいを出してくる人たちが「おい、滝本!」……ほらきた。


 僕に呼びかけてきたのは、茶髪にピアスの小林健二こばやし けんじだ。

 百七十八センチの高身長に鋭い目つき、威圧するような口調は、十分不良なのだが、本人は否定している。まあ、そんなに悪いやつでもない。

 「てめぇこないだの土曜に東上と一緒に買いしてたんだってなぁ。いったいどーゆー事だ!」


 「なんだぁ?」

 「いつものやつだよ」

 「おいおいまたかよ」

 「ほんとうらやましいよな」

 「まったくだぜ」

 「こないだは卯里、その前は永浦だっけ?」

 「ほんとにあいつ何なの?リア充爆発しろ」

 「三週連続だし、もう校舎裏にでも呼ぶ?」

 「そうだな」


 なんだか物騒な話が聞こえた気がするが、無視。「いや、たまたまスーパーの前であったから一緒に見て回っただけだよ?」

 「それを『一緒に買い物する』って言うんだよ!何でてめーばっかいい思いしてんだ―――!」

あー、うん、ごめん。


 ほんとに偶然なんだよ?


 「とりあえず落ち着こうよ」みんなこっちを向いてるんだけど。

 「これで落ち着いてられっかー!」

 「皆さん、朝のSHR(ショート)を始めます。席についてください。小林君もです。」そういって 教壇に立つのは二年の数学の教師の雪枝幸子ゆきえだ さちこ先生二十五歳未婚。時々から回りするけど、生徒ひとりひとりにしっかり向き合うので、人気が高い。今日も助かった。小林君、なかなか止まらないから。

 「はいはいわかったよ先生。滝本、放課後、覚えてろよ」あ、助かってなかった。

 「起立、今日つけ、礼」

 「「「「「おはようございます」」」」」」

 「着席」

 「それでは出席を取ります。青木さん「は~い」石井君「はーい」上田さん「はいっ」─────



 このときまでは、いつもの朝だった。



 ────東上さん「はい」中川君「はい」永浦さ、え、なに?」突然、教室の床に、白、黄色、深紫、銀の四色で図形と、文字?が描かれていく。図形はものの数秒で教室の端まで描かれ、声を上げる間も無く教室は光に包まれた。

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