ヤマダが小道でメインヒーローに遭遇しました
5.ヤマダが小道でメインヒーローに遭遇しました
「ヤマダがチャリを漕ぐ~ヘイヘイホ~ヘイヘイホ~」
私は上機嫌でペダルを漕ぐ。学園までもう少しの距離だ。このままイベントスルーで到着できれば、私は勝者に なれるのよ。
この時、私は調子に乗っていたと思う。いや、間違いなく乗っていた。そう、2度あることは3度あるわけでーー。
小道にあった大きめの石に気付かず、思い切り車輪が乗り上げた。その勢いで私の身体は投げ出され1回転した。暗転後、ー着地。そしてモコモコモフモフ・・・え、何この感触?目を開けて見ると。
「ウギャーッ!また羊ですか!!どうしてこうなった!?」
あろうことか私は羊に跨がっていた。しかも羊は元来た道を戻って進行しているではないか。
ーそこに1台の馬車がこちらに向かって来る。この展開は嫌な予感しかしない。しかも羊は、馬車が向かって来ても止まる気配も避ける気配も見せない。まさか、こいつ(羊)このまま突っ込む気なのか!?
「うわぁ~ん!ストップ!ストップ!ストップ!ザ・羊!」
馬車に激突すると思われた、その瞬間ーー羊は軽やかに跳ね上がり、馬車を越える程、天高くジャンプした。そして天空で、背中にしがみつく私を容赦なく振り落とした。
本日2度目の 暗転後、ー着地。暖かい温もりを感じる。何かにスッポリ嵌まっているような気がする。
目を開けて見ると、非常に近い距離で綺麗な人と目が合った。漆黒の髪がサラサラと風になびいている。菫色の瞳はただ美しく煌めいている。
ーやばい、やばい、やばい。冷や汗が吹き出してきた。この人、王子だよ!何で私は王子に抱き抱えられてるんだよ。お姫様抱っことか意味不明過ぎるだろ!
あれ?確かストーリーでもこんなシチュエーションあったな。馬車に轢かれそうになって、転んで立てないヒロインを王子がお姫様抱っこしていた。ーーいやいや、この状況は無理があり過ぎるでしょ?
羊に振り落とされた私が、馬車から降りて来た王子に見事キャッチされました、って強引すぎて引くは・・・。
私が考え事をしていると王子は怪訝そうに呟いた。
「・・・お前、何者だ?」
その時、頭上に何かが浮かんで見えた。
『選択肢を選んで下さい。
a.「すいません、ご迷惑をかけて」
b.「大丈夫です、降ろして下さい」
c.「重くないですか」』
もしかして、これはコマンド出現なのか!?力業でイベント発生させやがった!この状況でこの選択肢は違和感しか感じられないよ。
「(aでもbでもcでもない)怪しい者ではございません。只の想定外の事故なんです。信じられないとは思いますが、本当なんです。私も羊の被害者なんです。私は普通に自転車で学校に行こうとしていただけです。それがあの羊がー。」
私が一気に話し出すと、王子は眉を寄せ、ため息をこぼした。
「とりあえず降ろしてもいいか?話はその後だ。」
ご感想いただき、ありがとうございました。
嬉しくて涙が出そうになりました。
これを励みに、これからも頑張っていきます。