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Flame's Traitor −炎の反逆者−  作者: 紫月 一七
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女王への反逆

 反逆は一瞬の強襲から始まった。

 エンは訓練所のドアを開き、中へと飛び込む。

 外から確認した通り内部には三人の生徒がいた。乱暴に開かれたドアに反応して三人ともこちらを見ている。

 しかし背中越しにだ。誰もが正面で構えていない。全員が何かの実験や整頓を行っており、無防備な状態だ。

 エンは一気に三人の生徒と差を詰め、最寄りの振り向きかけた生徒を横薙ぎに斬り付けた。生徒は防御もままならず、力無く地面へと崩れる。


《迷うな、小僧!》


 その生徒の姿を注視していたエンに、魔剣の声が飛んでくる。

 ほんの一瞬だったが攻撃しながらも相手を心配していた。やり過ぎてはいないか、と。

 だが魔剣の一喝で意識は再び戦闘へと向いた。エンは奥の二人に向かっていく。

 二人の生徒は正面に向き直り、魔法の構えを取っていた。

 横向きで若干体勢を整えるのが早かった左の生徒に接近すると、その腹部に剣の柄頭を打ち込んだ。痛みで怯む生徒の顔を柄頭で殴り付ける。

 吹っ飛ぶ生徒。エンは殴った勢いそのままに剣を真横に向けた。半身を捻って左の生徒に身体を正面に構えると同時に、魔力を集めていた腕に回し蹴りを放つ。

 そして剣を振り抜く。胴体を狙って斜め下の右脇腹から斬り付ける一撃だ。

 だが生徒も対応していた。右手から魔力を収縮した魔法の剣で、こちらの剣の軌道を遮る動きを見せている。

 剣戟が響く。エンは構わず全力で振り切った。

 向こうの剣を砕くと、胴体にまで剣が届いた。


「そ、そんな馬鹿な……」


 男子生徒が倒れる。視線はエンにではなく、右手に持つ砕かれた剣に向いていた。あってはならないことだと、その目は語っていた。

 エンも魔剣を見て驚いていた。普通の剣ならば例えこちらの刃が立っていても相手の魔法で作られた剣を破壊するなど不可能だったからだ。

 魔法の剣は実物の剣よりも遥かに強固であり、また使用者の気力が続く限りは、破壊されようと何度でも再生できる。それが現在の剣と魔法の常識だった。

 しかしこの魔剣は違う。

 こうも容易く魔法の剣を打ち破ることで、もはやそんな常識から逸脱した存在となっている。

 エンは同時に二つの感情を得ていた。

 改めて知る魔剣の凄さに、勝てる希望が込み上げてきたこと。反対にこの魔剣は一体何なのかという猜疑だ。

 だがそこで後者の感情を振り払った。

 魔剣はこうして協力してくれている。余計な疑いを持つのは良くない。そう自分に言い聞かせる。

 訓練所を制圧したエンは一息をついた。


《のんびりしてる場合ではないぞ。これからが本番だ》


「ここを守るための準備をするのか?」


《馬鹿か貴様は。こんな狭い場所でネリスの勢力を迎え撃っていくなど不可能だ。それに奪回はあくまでも一時的なもの。完全に達成するにはネリスを倒して勢力を黙らせる以外に方法はない》


 言われてみればその通りだ、とエンはすでに取り戻した気持ちになっていたのを切り替えた。

 それから魔剣の指示で三人を目立つ位置の柱に縛り上げて拘束すると、魔法の実験器具を使って何かの製作を始めた。

 魔法の知識に乏しいエンには何をしているのか解らなかったが、魔剣曰く『贈り物』だそうだ。

 二つの魔法アイテムの錬成に成功したのも束の間、おそらく見回りが来るはずだと魔剣に急かされ、それをすぐさまドアの取っ手にとりつけると静かに閉める。もう一つは廊下の天井に取り付け、訓練所から離れた。

 訓練所の様子が窺える正面の草むらに身を潜めて待つこと数分。本当に見回りがやってきた。

 五人組で和気藹々と雑談しながら歩いている。見回りというよりは散歩に近い。油断しきっていた。

 だが不意にその中の一人が訓練所の方に目をやると、空気が一辺する。気絶し、縛られている三人を見たからだ。

 見つけた生徒が急いで助けようとドアを開けた。その時だった。

 音の爆発と共に衝撃が広がり、辺りは一瞬にして砂煙が立ち込めた。衝撃だけならこちらにまで届いてくるほどの威力だった。

 煙が晴れたときにはドアの前にいた生徒全員が地面に倒れていた。

 仲間で釣って罠に嵌める。陰湿な手口だ。


《安心しろ、建物には無害だ》


 唖然としているエンに、魔剣は事もなげに告げた。


「いや……あれ生徒は平気なのか?」


《問題ない。ここの生徒の多くは魔力による抗体で守られている。あの程度なら数時間もすれば回復する》


「そうか。それでこれを繰り返すのか?」


《いや、我の推測が正しければもうすぐ動きがあるはずだ》


 魔剣の言葉に少し遅れて動きがきた。校舎側の渡り廊下から数十人が慌てて飛び出してくるが、


《今だ!》


 叫ぶと魔剣が刀身から赤い光を出したと同時に、天井のアイテムから衝撃波が炸裂し、駆け付けてきた連中も全滅した。

 くくく、と笑い声を出す魔剣。もはや訓練所の前は大惨事となっていた。

 暫くするとまた数十人が出てくる。しかも今度は重厚な服に身を包み、辺りを厳重に警戒しつつだ。

 訓練所の前までたどり着くと、扉の前の生徒の介抱や、室内の生徒の拘束を解くなどをし始めた。


《やはりか》


 確信めいた口調の魔剣に、エンは首を傾げ、


「何がだ?」


《解らんのか? あの集団はネリスの救護班だろうが、奴らの対応はいくら何でも迅速過ぎる。ということは、だ。見ているんだ。この光景をどこからか見て、指示を送っている人間がいる。おそらくそこにネリスもいるはずだ》


 魔剣の的確な論にエンは感心した。

 また、こうも思う。

 ……敵に回すと恐ろしい奴だな……。

 頭が切れるだけでなく、知識を吸収させたせいか魔剣としての驚異的な能力を遺憾なく発揮しているように思えた。

 エンは救護班に運ばれていく生徒たちを見てから、


「それで次はどうするんだ?」


《ネリスはここの警戒のために部隊を送ってくるだろうから、そこで……》


 息を呑み、魔剣の言葉を待つ。

 ここまでネリス勢力の上手を行く奴が、次はどんな作戦でくるのか。


《――突撃するっ!》


「急に手抜きになった!?」


《策を用いるよりは暴れた方が手っ取り早いだろうからな。我もその方が性に合っている》


「じゃあさっきまでの罠とか推察とかは何だったんだ……?」


《罠は気晴らし! あと踏ん反り返ってる連中に一泡吹かせてやったぞ、ぐっへっへ……ざまあみろ、バーカ!》


「もうなんというか色々と酷いな、おまえっ!」


 そこでまたしても魔剣の言った通り部隊が派遣されてきた。二、三十人くらいは居るだろうか。誰もが制服の上に青い装甲を付け、魔法で生成した得物を携えて戦闘態勢となっていた。

 その部隊は周囲に散開し探索を始めた。

 ネリスの指示だろうか。こちらが近くに潜んでいると決め付けるような探し方だ。ここもすぐに見つかるだろう。

 一人の生徒が草むらに近付いてくる。

 エンは剣を構えた。深呼吸して切り込むタイミングを見計らう。

 段々と土を踏む音が大きくなる。

 しかし、まだだ。まだ早い。言い聞かせるように飛び出しそうになる自身を押さえ付ける。

 音が草地を踏むものに変わり、頭上の草が揺れた。

 その直後。

 エンは草むらから一歩を飛び出した。踏んだ一歩目で剣が行き、生徒の装甲ごと砕き切り裂いた。


「おおおっ!」


 気合いの叫びが加速の合図となって駆け抜ける。

 前方。魔法の槍を構えた生徒との距離を一瞬で無くし、剣を振り払った。防御に出してきた槍を破壊し、装甲すらも吹き飛ばす。

 反転。飛んできた火を剣で防ぐと、走り出す。次の魔法を撃たせる前に接近し斬り付けると生徒が地面に倒れる。

 これで三人倒した。まだたった三人だ。

 正面ではこちらに気付いた残りの生徒が陣形を組み、迫ってくる。十人単位での突撃だ。一本の剣では到底対抗できない。

 だからエンは炎を解放した。

 剣を一薙ぎするとそこから炎が溢れ、前方の陣形全てを飲み込む炎の壁を生み出した。

 直撃に数人が倒れ、陣形が乱れていった。

 エンは炎の突き破り、剣を進ませる。

 突然のことに怯む生徒を正面から、混乱する生徒の不意をついて側面から襲い掛かっていく。

 孤立した二人の生徒の前に上空から飛び降り様に斬って叩き伏せると、正面へと走った。

 炎が僅かに薄い渡り廊下に近い場所。そこには遠距離魔法を準備していた後衛たちがいた。誰もが戦況が解らずに戸惑いを隠せないでいる。

 エンが炎の中から突っ切り姿を見せると、驚いて魔法を構えるが、

 ……もう遅い!

 剣に灯った熱の塊と共に一閃。後衛の十人は高熱の衝撃波を浴びて吹き飛んでいく。

 炎の壁が消える。

 そこにはもうエン以外の者が立っていなかった。

 殆どの者は装甲を砕かれ、地面に這ったまま動けないでいる。

 ……勝てる! 勝てるぞ!

 エンは戦闘に於いて、かつてないほど高揚していた。

 それほど魔剣の力は圧倒的だった。相手が何だろうと負ける気がしなかった。

 正面にまた増援が向かって来ていた。

 エンは剣を構えるが、そこで気が付く。

 正面だけではなかった。横からも背後からも足音が響いてくる。

 周囲を見回すと、そこは青で埋め尽くされていた。

 先程の部隊など比べものにならないくらいの量だった。人が作り出す青の壁が、エンを完全に取り囲んでいたのだ。


「マジかよ……」


 エンは気圧され、一度構えを解いて中央へと引き下がる。

 向こうは魔法の武器を持った生徒が先頭にじりじりと差を詰め、背後では遠距離魔法を準備をしていた。

 四方から徐々に狭まって行く人の壁。

 この時点で勝機は無いに等しい。だがエンは再び剣を構える。

 そこで声が掛かった。魔剣からだ。


《おい小僧》


「なんだ魔剣」


《諦めてはいないだろうな?》


 魔剣からの問いに、エンは力強い瞳を向けて言い放った。


「当たり前だろ! オレは絶対に諦めない!」


 返すと魔剣は、そうか、と呟き、


《いい答えだ。そして、そろそろ頃合いだろう》


 魔剣からの言葉の意味が解らず、疑問を投げようとした瞬間、魔剣が強い光を帯び、


《聞け! 氷のネリス! 我々は貴様との一対一での決闘を望む!》



 ネリスは画面を眺めながら、はっきりと聞いた。


《いいか、よく聞け! 貴様は卑怯者だ! こそこそと安全な場所から我々を眺めて悦に浸ってる異常性癖者め! 貴様は勝者を気取ってるだけの愚か者だ!》


 声は続き、


《違うと言うのなら直接姿を見せて自分で戦ってみたらどうだ! 別に怖いのなら逃げても構わんぞ? なぜならば、それが腰抜けの貴様にはお似合いの選択だからだ! どうした? 怯えて立てないか? さすがは腰抜けだな! 学園中が貴様を笑っているぞ!》


 全てを聞き終えるのとほぼ同時に紅茶入りのカップが砕け散った。カップの破片が床に散乱するが、しかし中身の紅茶が落ちない。

 紅茶は氷漬けとなって空中で停止していた。ネリスの放つ冷気によってだ。

 ネリスは怒りに身を震わせる。指に残ったカップの取っ手も氷り付き、それを握り潰した。氷の取っ手も跡形も無く砕ける。

 立ち上がると凍りついた紅茶も爆ぜる。後には何も残らない。凍てつく力と共に大気へと消えていった。

 かつてない屈辱に顔を歪め、奥歯を噛み締めていた。

 画面を睨め付ける。そこに写る自分の軍勢の中心に立っている一人の少年を。底冷えするような突き刺す視線だった。

 少年は囲まれても抵抗を止めてはいなかった。四方から迫る敵を剣と炎で薙ぎ払っている。

 その忌々しい姿を見ながらも、ネリスは腕を振って大声を張り上げた。


「攻撃を中止! わたくしが行くまで逃がさないようにしなさい!」


 飛び出すのは怒りを隠そうともしない声。

 画面を操作していた女生徒が身を強張らせて、軍勢に命令を送った。

 ネリスは踵を返すと、指令室への出口へと向かう。

 そこに一人の男が割ってくる。

 レイだ。彼の表情は焦っているものではあったが、疑問も含んでいた。

 何が起こったのか事態が飲み込めない。そんな顔をしていた。彼にしては珍しいことだ。


「ネリス様……! いかがなされましたか……?」


「いかが!? いかがですって! あなた先程のわたくしへの侮辱の言葉を聞いていませんでしたの?」


 食ってかかりそうな剣幕のネリスだが、それでもレイには伝わっていない様子だった。怒っているのは解るがその原因が解らない、そんな態度だ。


「言葉……ですか?」


 呟いて反芻している様子だが、やはり最後には首を傾げてしまった。

 明らかに会話が噛み合わずおかしな状況ではあるが、今のネリスに推し量る冷静さは欠けらもなかった。道を塞ぐように立つレイを退かし、


「もういいですわ。とにかくわたくしは今から戦いに行きますわ」


「お待ちください。これは何かの罠かも知れません」


 戦う意志を見せてもまだ食い下がるレイに、ネリスは行動はただ一つだった。

 腕を組み、自信に満ちた瞳でレイを見つめ、


「レイ。あなたもしや、このわたくしが負けるとでも思っているの?」


 胸を張ったネリスには負の感情が一片すらもなかった。不安。畏れ。迷い。その他の一切のマイナス部分が存在しない。自分の能力に揺らぎない絶対的な自信を持っているからだ。

 そんなネリスに応える行動も、レイにはただ一つだった。

 背筋を伸ばし、腕を胸の前で構え敬意を示す。


「ネリス様にお仕えしてからこれまで、一度たりともネリス様の勝利を疑ったことなどありません」


「よろしいですわ。それでは行って参ります」


「はい。お気を付けていってらっしゃいませ、ネリス様」


 頭を下げて見送るレイに対し、ネリスはそれ以上は何もせず前だけを見据えて出口へと進んでいく。

 ネリスは思う。

 こうやって部下に見送られるのは気分がいいことだと。

 だがそれ以上に自分に盾突いた少年を八つ裂きするという陰惨な感情が、その上をいっていた。



 エンは敵の攻撃が止んだのを確認した。

 どうしたんだ、と思いながら周囲を見る。壁を作る生徒は誰もが敵意を持った眼差しだったが、攻勢に出る気がないようだった。何かを待つように、壁としての役目に従事している。

 一度構えを下げて一息を付くと、


「なあ、どうなったんだ?」


《おそらくこちらの挑発に乗ったのだろう。ネリスがくるぞ》


 あんなあからさまな誘いに乗るのか、と考えているそれを察してか魔剣がまた光を出す。


《奴はお前が挑発したと思っている。こんなただの剣士風情にあのようなことを言われたら誰でもくるだろう。それもこんな大騒動の最中だ。おそらく学園中の人間がこの光景を見ているはずだからな》


 なるほど、と口にしたエンだったが、そこで魔剣の思惑を知った。突撃すると言っておきながら最初からこの展開に持ち込むつもりだったとは。

 せめて本当の狙いを打ち明けてもいいではないかとの不満も出てきた。だがそれは置いておき、次の疑問を投げかけた。


「じゃあもし仮に来なかったらどうしてたんだ?」


《その方が後々楽だった。ここから撤退してネリスを探し出して軽く捻り潰せばいい》


「……どういう意味だ? 解りやすく言えって」


 魔剣の不思議な物言いが気になり、エンが詳細を求めると魔剣は浅く溜息をついてから、


《来ない理由があるとすればただ一つ。我の『声が聞こえていない』ということだ。そのくらいの実力なら楽だと言っている》


 エンは数瞬固まった。

 ……魔剣の声が聞こえない? 何を言ってるんだ?

 実はもうこの時点で一つの結論が出ていたが、エンには信じがたい事実だった。もしもこの魔剣の言ってることが本当ならば、それは……。

 息を飲み、気持ちを落ち着け、魔剣を見てからゆっくりと口を開いた。


「あのさ。もしかしてだけど、お前の声って普通は聞こえないの?」


《条件はいくつかあるが、主に高い魔力を持った者にしか聞こえん。まあ殆どの人間には聞こえてないだろうな》


「いやちょっと待て! オレ学園でお前と話しまくってたよな!? というか今も大勢の前で喋ってたー!」


《安心しろ。傍から見れば貴様は剣に話し掛ける危ない妄想に取り付かれた変質者なだけだ》


「安心する要素がどこにもねーよ! もっと早く言えってそういうこと!」


《聞かれなかったからな》


「じゃあ今更だけど質問。お前その状況知ってて楽しんでたな?」


《うむ! 勿論だ!》


「最悪だー! ほんっとに最悪だよ!」


 発覚した衝撃の事実。

 エンはふとこれまでの行動を思い返してみた。

 確かに変な場面があった。クレイル先生の態度もそうだけど、寮でも喋ってた時に周囲の生徒のこちらを見る目がおかしかった。

 どうしてあの時の視線を『魔剣が物珍しいから羨望の眼差しを向けられている』などと都合のいい解釈をしてしまったのか。

 今となっては滑稽だ。そして恥ずかしい。

 そのちょっと誇らしそうにする顔は本当に止めてくれ過去のオレ!

 現在も周りから「なんだあれ……?」やら「気でも狂ったか?」などといった声が飛んでくるが、エンには聞こえていなかった。


《小僧。おい小僧!》


 精神的に大ダメージを負ったエンの耳に声が届いた。


「なんだよ、お前とはもう会話しないからな?」


 自分をこんな状態に追いやった元凶からのものに、エンはふて腐れた対応をする。


《いいから前を見ろ》


 だが魔剣はどうでもいいことのように流した。その声には若干の焦りを含んでいた。

 エンが何かと思い前を向くと、円形に囲っていた生徒たちの中に陣形を乱している一団が見えた。

 道を空けるようにして外側の景色が全開だったが、そこに一つの影がある。

 ロングの金髪と制服につけた豪華な装飾を揺らしてくる女生徒だった。青い装甲服の生徒の誰もがその生徒へ敬意と畏れを抱いている。

 女生徒から殺気が溢れ出ていた。その冷たい気は発するだけで生き物を自然と死に誘うような温度だ。

 エンと魔剣は確信した。

 間違いない。こいつが氷のネリスだ。

 ネリスリッド・エトワルド。この学園最強と言われる四人の内の一人である。

 エンたちの反逆において最大の障壁となる者と対峙した瞬間であった。

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