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第4話.詰問

いつもと変わらない朝。


「おっす、拓!」


優はいつもと変わらない様子で僕に声をかけてきた。


「あ…あぁ、おはよう!」


「拓、聞いたか?」


「ん、何が?」


優は目を輝かせて話し始めた。


「数学のピカリが昨日から行方不明何だってさ!」


「へ〜そうなんだ」


僕はたいして興味の無い返事をするが胸中は穏やかでは無い。


…実際、途中からの記憶が無いが、僕がこうして生きているという事は、僕の中の彼、アシュレイがピカリを殺したんだろう…。


殺すという言葉に僕はドキッとした。

実際、日常でよく冗談で使ったりはするが、普通はそんなことしない当たり前だが。


だがもしかしたらこの手でピカリを手にかけたのかも知れない…そう思うと急にいいようの無い不安感がつのった。


「どうした拓、顔色が悪いぞ!」


優が心配そうに僕の顔を覗き込む。


「いや、何でもないよ、大丈夫だよ!」


僕は慌て優に答える。


「そうか、さては俺の名推理にショックを受けてたんだな♪で俺が思うに犯人は…」



…いつまで続くんだこの話。


僕は上機嫌で話しをしている優から目を逸らした。


ちょうどその時教室のドアが開き外から丸々と太った日焼け顔のオヤジが入ってきた。


…アレって確か校長だよな?


校長は誰かを探しているか教室内を見回す。


…嫌な予感がする。


そして僕と目が合うと手招きをした。


やっぱり!


「…だと思うんだよ…って…アレどうしたんだ拓?」


僕は優の呼び掛けを無視して、校長の元に向かった。


「どうしたんだ、アイツ…まぁ、いっか♪おい、武司!俺が思うに…」



優はターゲットを他のクラスメートに変えまた同じ話しをしている。


僕は優の話し声を背中に聞きながら、教室を出た。


「君!拓哉君だよね?」


教室のドアを閉めるなり校長は僕に話し掛けてきた。


「はい…そうですが」


僕は警戒しながら答える。


「私について来てくれ」


それだけ言うと校長はさっさと歩き出した。


…なんだこの人!


何となくムッとしたが大人しく校長の後についていった。


…間違いなくピカリと関係のある事なんだろう。



校長の後ろを歩きながら僕は考えた。



やがて校長は一つの部屋の前で立ち止まった。

部屋のネームプレートには校長室と書いてある。



「さぁ…入って」


校長はドアを開け中へと入って行く、僕もその後に続いた。




…何も無い!


校長室の中は、机以外に何も置かれていなかった。

その為、見た目以上に広く感じられる。


日頃からこの部屋が使用されていないのが容易に伺える。


その机の近くに二人の人物が立っていた。


僕と校長が室内に入ると、スーツ姿の二人の人物はコチラを振り返った。


「君が桐生君かな?」


年輩の小柄な男の人が僕に話し掛けてきた。


「…はい」


「少し聞きたい事があるんだけど、いいかな?」


そう言うと、懐から手帳を取り出した。


「…警察の方ですか?」


ドラマで観るワンシーンを思い出す。


「昨日、君は学校に居たらしいが何をしていたんだ!」


背の高い若い男は、少し強めに僕に問いかける。


「え…あの…」


「まぁまぁ…和田君、そんな言い方したら桐生君も話しにくいじゃないか」


「…すいません」


和田と呼ばれた若い男は年輩の男に頭を下げた。


「まぁ、君も仕事を幾つも抱え込んで大変だなのは分かるが…それで桐生君何をしていたのかな?」


年輩の刑事はもう一度僕に尋ねる。


「昨日は…」


僕は昨日の出来事を二人の刑事に話した。


…ただしピカリが襲って来た事については話さなかった。



「学校を出ようとした時の記憶が無い…か」


年輩の刑事は僕の話を一通りメモに取った。

「桐生君も、もう知ってると思うけど狩野先生が行方不明なんだ」


年輩の刑事は校長の方をチラリと見る。


校長はというと、額から止めどなく流れる汗をひたすら拭いている。


刑事は話を続けた。


「…それで現場に来た警官に君の事聞いたんで、何か分かるかと思ってね♪」


「そうですか…スイマセン」


僕は頭を下げた。


「何んでもいいから思い出したら事があったら、後で私に連絡をくれるかな?」


そう言うと年輩の刑事は僕にメモを渡した。


「そこに私の連絡先が書いてあるから、それじゃあ…お邪魔しました」



二人の刑事は校長室を出ていった。



「桐生君もう教室に戻っていいよ」


校長は、少し疲れたような様子で僕に言った。



「はい…失礼しました」



僕は校長室を出た。


「さて…困った」


ドアを閉める時校長の声が聞こえた。



…大変な事になったな


僕は刑事から貰ったメモを丸めてポケットにねじ込んだ。


そして自分の教室に向かって歩き出した。

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