国ざかいのレモン
戦が好きな国と、お金持ちの国と、食べ物が豊かな国が、隣り合っていました。
3つの国はとりたてて仲良しでもありませんでしたが、いがみあっているわけでもありません。国同士訪ねあって、お祭りを開くことや、3国が一緒になって遠くの大きな国に対抗することもありました。けれどもいつもは、自分の国のことで頭がいっぱいで、となりの国のことは気にかけませんでした。
3つの国のさかいには、1本レモンの木が生えていました。その木には毎年たくさんのレモンの果実がなりましたが、どの国のだれでも、その実をとっていいことになっていました。
ある時、たった1つだけ、宝石のように透き通り、きらきらと金色に光り輝くレモンがなりました。木の近くに住んでいた3つの国の人々は、めいめい自分たちの王様に知らせにいきました。
王様たちが木の周りに集まると、争いになりました。だれが__どの国が、この宝物のようなレモンを手に入れるのでしょうか?
争いは長く続き、とうとう戦にまで発展しました。戦好きな国はここぞとばかりに激しい攻撃をしかけましたが、お金持ちの国は武器商人からたくさんの武器を買って対抗します。また、食べ物が豊かな国は、他の国への食べ物の輸出を止めて、兵糧攻めにしました。いくら戦っても、なかなか決着はつきません。
どの国の王もへとへとに疲れたころ、レモンの木が語りかけてきました。
「1つの実を、3人で分けなさい」
王たちは顔を見合わせました。食べ物が豊かな国の王が、まっさきに言います。
「私は種がほしい。種を土にまけば、やがてレモンの木になるから。種さえもらえれば、後は何もいらない」
そこで王たちはレモンを切り、種をみなとりだして渡しました。
続いて、戦が好きな王が言いました。
「私は、果汁がほしい。兵隊たちの疲れを和らげるために」
戦が好きな王のために果汁をすっかりしぼった後で、最後に金持ちの王の番がきました。
「では、この光り輝く皮と中身は、私のものだな」
すきとおって固い皮と中身をもらい、王はにんまりと笑いました。
3人の王は戦をやめ、満足して帰っていきました。レモンの木の近くに住んでいた人々はほっとして、また元の生活にもどりました。
けれど、それっきり、レモンの木に新しい実はなりませんでした。




