第9章:心の対峙
充の言葉に、樹里は初めて本心を垣間見せた。
彼女は机に腰を下ろし、目を伏せた。
「母さんが…先生と会ってるの、知った時、なんか…怖かった。母さん、私のこと置いて、どこかに行っちゃうんじゃないかって。」
その言葉に、充は樹里の行動の背景を理解し始めた。
彼女の脅迫は、単なる悪意ではなく、母を失うことへの恐怖から来ていたのかもしれない。
「樹里、君の母さんは君を愛してる。僕との関係は、君を奪うためのものじゃない。」
充は穏やかに、しかししっかりと語った。
「でも、君がこんなことを続けてたら、母さんを本当に傷つけることになるよ。」
樹里の瞳に涙が浮かんだ。彼女は唇を震わせ、声を絞り出した。
「私…母さんに嫌われたくない。でも、母さんが他の誰かと幸せそうにしてるの、見るの辛い…。」
充は彼女の肩にそっと手を置き、言った。
「樹里、君は母さんを独占する必要はない。君も、母さんも、幸せになる権利がある。僕は君を傷つけるつもりはないよ。」
樹里はしばらく黙り込み、やがて小さく頷いた。
充は彼女のスマホを手に持ち、「これ、返すよ。でも、証拠は全部削除する。僕も、君の秘密を守る。それで、このゲーム、終わりにしよう。」
樹里は抵抗せず、スマホのロックを解除した。
充は動画や写真を全て削除し、樹里にスマホを返した。
彼女は静かにそれを受け取り、目を伏せたまま呟いた。
「先生…ごめん…。」
「いいよ、樹里。やり直せるさ。」
充は微笑み、彼女の頭を軽く撫でた。




