【メイド】40枠目【失踪ごめんなさい】
さて、かれこれ2ヶ月が空いたところで視聴者の皆様ご機嫌よう。
件のアンデッド気狂い令嬢エヴァ・グリーンデザートの従者にして皆様のアイドル、リリィ・グリーンデザートでございます。
現在私達は一定以上の巨大な被害をもたらしうるダンジョン災害へ対抗するべく「緊急招集」と称されるレイドイベントに参戦し、目標地点であるレッドゴッド諸島、ネビオロ島の沖合11km地点の氷海でターゲットである氷海龍の群れとの交戦を開始したところ。
現在の首級状況は討伐数65頭のエヴァ様が頭一つ抜けており、それに次いで21頭がミーヤの実姉、ギルド管理官ベルナデッタ・マカイビーディーヴァことニーナ・アンブライドルド。
20頭が先ほどエヴァ様を可愛がっていたお姉様方の一人、ミッシェル・セントクレスピンで3位につけ、残りは10頭台前半でおおよそ横並び。
エヴァ様が極端に多いのは彼女の血液による汚染が拡大し、連鎖的な討伐が発生しているためです。
卑怯ですね。
以上、ここ数ヶ月の要約でした。
『初手からフルスロットルすぎるだろ』
『というかこいつずっとサボってるから討伐数0なんだが』
『働けバカ』
『長期休暇にもほどがある』
はあ、仕方ありません。
並の株を高騰させるよりも落とした株を上げた方が利益も上がるというもの。
僭越ながらこのリリィ・グリーンデザート、一肌脱いで一狩り赴くと致しましょう。
……ああ、いえ、この「一肌脱ぐ」というのはあくまで比喩表現でして実際にあの狂人ガールのように機構を露出するという意味ではないということはご了承を。
『やかましい』
『はよいけ』
『てか楽しんでるだろプロレス』
『それなら俺らも反撃するで、言葉で』
『それって、プロレスタント……ってコト!?』
「……仕方ありません。そんな皆々様方、一発で籠絡して見せましょうか」
「策はあるのか?」、もちろんございます。
元来兵器、武装と呼ばれるものは如何に効率良く対象、即ち他者を害せるかという趣旨の下に成り立っています。
しかしその路線を突き詰めた先に辿り着くのは必然的に「長射程」、安全圏からの一撃必殺が最適解となってしまいます。
しかしこれでは面白味も何もありません。
先行勝率の高さと駄作具合はいつの時代も比例するものです。
「つまりは何が言いたいか……そう、私リリィ・グリーンデザート、近接仕様でございます。得物は刃渡145cm、全長切り良く200cmの機械仕立ての大太刀、名は「金剛」といたしましょう。皆々様方お好みの鍔迫り合い、どうぞ御覧くださいませ」
カメラへ向けて高らかに宣言し、私は例に因って例の如く胸元から抜くようにして一振りの大太刀を仕立て上げました。
見た目は至ってシンプルなサイバーパンク風東刀と言った様相ではございますが、先日ラーニングした強化ニンバス形状魔鋼による圧倒的なHRC硬度68と最大出力1億2000万Vと落雷に匹敵する放電機構を兼ね備えたスグレモノ。
これを成し得た私のスペック、どうぞ礼讃してくださって構いません。
『すいませんそれ話してる間にも主人食われてますよ』
『金剛←シンプルかつカッコいい系なのムカつく』
『金剛杵:インド神話の雷神インドラが不死の黒蛇ヴリトラを殺害するために使用した不死殺しの神具』
『メッセージ性が強すぎるだろ』
「あら、貴女の方からやる気を出してくれるなんて珍しいじゃない、リリィ。実況、変わってあげてもいいわよ。ニーナも行っちゃったし」
「そうですか?でしたら、お言葉に甘えて」
彼女からの連絡に私がそう返事をした瞬間、隣に某プルスウルトラで見かけたようなワープ方法で姿を現すエヴァ様。
それからひょこっとカメラに映り込み、「貴方達、久々ね」と手を振るエヴァ様。
不死身どころか瞬間移動までいよいよ隠そうとはしなくなりました。
何なんでしょうかこの生き物。
「あら、そんなこと言ってる暇あるの?ほら、もう来てるわよ。お相手」
そう言ってエヴァ様が指を指した先。
どうやら氷海龍はエネルギーに反応する性質もあるらしく、私の「金剛」に反応した模様。
「それではこのリリィ・グリーンデザート。僭越ながらお相手いたしましょう」




