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【メイド】38枠目【ギャンブル】

 あらすじ。


 「緊急招集」というスフ◯ラトゥーンで言うビッ◯ラン的なレイドイベント兼配信者達の超大型コラボに巻き込まれてしまったエヴァ様。


 最前線の生贄役という同じポジションのお姉様方に可愛がられつつ出撃した彼女でしたが開始早々ターゲットの氷海龍に美味しくいただかれてしまってさあ大変。


 毒殺トラップで返り討ちにしたは良いもののお礼参りにやってきた氷海龍はなんと10倍、それに対するエヴァ様の武装はおもちゃのサイコロのみ。


 一体私、どうなっちゃうの〜〜〜??



「別に貴女はどうもならないでしょ、リリィ」


「いえ、解説がダルいなぁと」


「隠しなさいせめて」


「あ、エヴァ様、今度は右脚いかれてますよ」


「え、嘘」



 足元を見て初めてそれに気付いたらしいエヴァ様は「あっ」と情けない声を出しながら、とてっとその場に転びました。


 これだけ見ると「お、ドジっ子お嬢様だな、可愛いな」ともなりますが、エヴァ様はそのように人を勘違いさせては狂わせていく魔性の女女抜きといったところですので、皆様もどうか勘違いなされないよう。


 今目の前にいるのは脛をちょっとぶつけたのと根本から右脚もっていかれたが(ニアリーイコール)で結ばれる人外です。



「……あ、視聴者、失礼いたしました。まだ地の文でしたね」


『お前ホントに何?』

『そのスキルをこっちに要求するな』

『二周くらい回ってこいつの方が好きになってきた』

『てかエヴァ様また食われそうけど大丈夫か』



 え、また?


 あ、まただ。


 エヴァ様、今度は氷海龍に組み伏せられてます。



「エヴァ様ー、学習とかなさらないんですかー?」


「ああもう!今どうにかするわよ……!!」



 そう答えた次の瞬間、彼女はうつ伏せのまま魔力を込め、見事な手首のスナップだけで指の間に挟んだサイコロを氷海龍へと投げつけました。


 鋼鉄よりも高い硬度を誇ると言われる氷海龍の甲殻は、まるで大きな爪痕のように3つのサイコロによって抉られ、見るも無惨な姿に成り果ててしまいます。


 そして投げ上げられたサイコロは「4」「5」「6」と花火のように爆発した後、再び彼女の手に戻り、身体を再生して復活したエヴァ様は「ふふん」と相変わらずやたらと高い顔面偏差値でドヤ顔を披露しました。



「というわけで訳の分からない皆様のため、本日もこちらご用意しております。どうぞ」



◇◇◇



「ゆっくりリィです」


「ゆっくりーンデザートだぜ」


「ねえ、前回は【出血過剰(オーバーフロー)】について解説してもらったけど、エヴァ様って普段からあんなことやってるの?」


「いや、エヴァ様はかなり頭のネジが外れてるが流石にあんなものを普段遣いするほど衛生観念は低くないぜ。生身の戦闘用にはトランプやサイコロ、チップなんかのギャンブル用のあれこれを流用してるんだ」


「あら、あれってキャラ付けじゃなかったのね。最近ギャンブルの話とか全然出てこないしてっきりそういうものだと思ってたわ」


「いや、エヴァ様が配信でギャンブルの話をしないのは未成年でパチンコ打ってたりとかのあれこれがバレるからなんだぜ。流石に15でレバブル先バレ中毒だったって話は出来ないからな。ちなみに週三で4パチ打って月に50万くらいは儲かってたみたいだ」


「腹の立つ豪運ね。それで、どうしてエヴァ様はギャンブル用のあれこれを戦闘に流用してるの?」


「色々あると思うが、手に馴染むというのが一番だろうな。エヴァ様は運否天賦も好きだが、ざわざわ……するようなイカサマ勝負も好きだからトランプなんかの扱いは有名マジシャンにも引けを取らないぜ。あとちょっと厨二病を拗らせてた名残もある」


「あら、エヴァ様ってまだ17歳でしょ?拗らせてるどころかちょっと遅い厨二病でもおかしくないんじゃないかしら」


「かもな。他にも配信者の間で麻雀が流行ってるからって雀牌で戦う案もあったらしいぜ。SPバカ食いしそうだな」


「なるほど、取り敢えず理由については納得できたわ。それじゃあ、今は何が起きたの?サイコロを投げただけなのに氷海龍が倒れちゃったわ」


「それはもう見ての通り、エヴァ様がサイコロを投げて氷海龍を倒したんだぜ」


「へえ、私「賽を投げる」がガチの意味で使われてるところ初めて見たわ」


「同感だな。見たまんま過ぎて解説することもない。強いて言えばエヴァ様は見た目の割に強肩だからちゃんと投げればもっと威力が出るだろう。ちなみに2つ下の弟は高校野球最強クラスの左腕として活躍してるぜ」


「だとしたらそこは遺伝なのかしら。ということは初回の配信もそうだったけど、エヴァ様は結局普段も【出血過剰(オーバーフロー)】でもフィジカルゴリ押しが基本なのね」


「ああ、そういうことだ。ちなみに血液魔法しか使えないせいで無尽蔵の魔力もシンプルなエネルギーとしてぶつけるしかないからその方向性に一層磨きがかかってると言えるな」


「不死身で脳筋プレイしか出来ないとかそれどっちかというと討伐対象側に近くないかしら」


「まあ自認が人外だからな」



◇◇◇



『ゆっくりリィ解説たすかる』

『ゆっくりーンデザート解説すき』

『どっちだよ』

『あのファンアートの元ネタこれかよ』

『てか弟高校球児ってマジ?』

『↑158km投げる本格派左腕兼1番バッターだぞ』

『何それ贔屓にくれよ』



 というわけでいずれは定番化したいゆっくりーンデザート解説を終え、私はサイコロ片手に氷海龍の群れと盛大な格闘を繰り広げるエヴァ様を尻目に質問コーナーへと戻りました。



「はい、次の質問……あ、これとか新しいですね。『エヴァ様が一番打ってた機種教えてください』」


「「それでも!!」って叫び続けるやつよ!!あのレバブルが一番気持ちいいんだから!!」


「まあ可能性の獣可能性抜きがなんか言ってますけども笑」


「その笑は何よその笑は──」



 彼女が口答えしようとしたその瞬間、千切れた氷海龍の頭がエヴァ様に直撃しました。



 「エヴァ・グリーンデザート様、私のファールボールにはご注意くださいませ」



 発せられるのはエヴァ様に負けず劣らずの空間支配力を持つ言葉。


 そして氷海龍の屍の降り立った彼女は金属バット片手に微笑みました。



「ギルドの大砲、ベルナデッタ・マカイビーディーヴァ、ただいま合流致します」

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