【受付嬢】34枠目【開戦準備】
「じゃ、ミーちゃんも頑張ってね〜!」
「うん。後でね、ニーナ姉」
そろそろ約束の時間ということで、少し早起きしてニーナ姉と話していた私は、彼女と別れて食堂の方へ。
到着するとエヴァさん達と、あと同じロールに分けられたミッシェルさん達が同じテーブルで仲良く朝食を食べていました。
「あら、ミーヤ。朝からお疲れ様」
「あ、もしかして私がおまたせしちゃった感じですか〜?」
「大丈夫よ。みんな勝手に食べてるから」
「ですよね〜」
そして私はカウンターの方からぱぱぱっと手早くスイーツ関連をかき集めて速攻でエヴァさん達のテーブルの方に戻りました。
「お、朝から甘党キメてんね笑」
「味覚だけは学生の頃から進化しなかったんですよ〜。前まで朝ご飯昼ご飯は5割くらいの確率でドーナツでしたし、同様に確からしい確率で」
「うわチャートみたいなこと言ってる……」
「止めて。戻るから、トラウマ」
そんなことを適当に話しながら各々が各々の朝ご飯を平らげていると、何かを思い立ったらしいエヴァさんが「そういえばなんだけど」って口を開きました。
「さっき聞こえたのだけれど、「ロール」って何なの?私初めて聞いたわ」
「あ、「ロール」ってのは緊急招集の時にそれぞれの参加者に割り当てられる役割です。最前線で殴り合う【先魁】、回復もバフもデバフもなんでも駆使してサポートする【相槌】、止まった相手を殲滅し続けるメイン火力【真打】……もうちょっと細かいこともありますけど、まあ大体はこの3つですかね〜」
「で、この集まりは……」
「え【先魁】に決まってるじゃん笑」
「逆に不死身をこれ以上活かせる場とかなくない?」なんてニヤニヤ笑うミッシェルさん。
リリィさんも「返す言葉もございません」なんて言わんばかりにブンブンと首を縦に振っています。
「まあ別にいいよ、気楽にして。私達だけだし」
「それでも緊張……する時はするけど……」
「……待って、今回の参加者はギルド込み95人で確定よね?なのに7人しかいないの?」
「あ、ニーナ姉も来るから8人ですね」
「あの変態戦うんですか?」
「バカ強だよ〜♡」
「いや8にしても足りなすぎるでしょ。12分の1よ12分の1」
「しゃーないよ。【先魁】が一番ヤバいもん笑」
「っていうか【先魁】ってそもそも条件が厳しいんですよ〜。上の依頼は効率重視で先手必勝遠距離火力で吹き飛ばすことも多いですし、リスク激高の近接戦闘なんてしてるような冒険者は並程度じゃどこかで行き詰まりますし〜」
そんな説明を聞いたエヴァさんは少し考えた後、「貴女達何やってるの?」とミッシェルさん、サーシャさん、シオンさん、ネイラさんに1人ずつ尋ねていきました。
「【予知演算】+【完全反射反応】、要は100%回避笑」
「フルオート【回復】連打。要はダダ被り、エヴァ様と。死にたいかな、正直」
「あ、えっと……音ゲーとかの要領で、タイミングドンピシャで攻撃そのものに【入れ替わり】使うと実質ノーダメいけるから……」
「ネイラ【両成敗】+【食いしばり】+【逆襲】のメンヘラスタイル〜♡」
あ、少し補足しておきます。
【予知演算】が自分の持っている情報から最も高い確率を計算する魔法。
【完全反射反応】が脳と身体全体のタイムラグを無くす魔法。
【回復】は一瞬の間治癒力を爆発的に強化させる魔法。
【入れ替わり】は近距離の二つの物体の位置座標を入れ替える魔法。
【両成敗】はダメージを対象と使用者で共有する魔法。
【食いしばり】は発動中ダメージによる外傷、身体機能低下が無くなる魔法。
【逆襲】は発動時にダメージを受けていればいるほど身体能力、魔力、治癒力などを大幅に向上させる魔法。
……といった感じです。
「何これ、チート揃い?」
「エヴァ様鏡見ます?」
「いやー、これでもスーパールーキーだったんだよ、ウチら笑」
「今のエヴァ様ほどじゃないけどね〜♡」
「あ……でもエヴァ様のおかげで近接ブーム再燃したのは感謝です、マジで……」
「あら、そんなこと起きてたのね」
「流行りかけてたんだよ、超遠距離狙撃ワンパン。不死身に掻っ攫われたけど」
そんなことを話していると、「ぴんぽんぱんぽーん」とニーナ姉の声が響きました。
「『親愛なる冒険者皆様、ベルナデッタ・マカイビーディーヴァでございます。現在時刻は7時55分、到着想定時刻より6時間前となりましたため、戦闘準備室及び調整シミュレーター室を開場致します。どうぞ万全を期して開戦を迎えられますよう、奮ってご利用ください。以上、ベルナデッタ・マカイビーディーヴァでございました』」
「調整シミュレーター室?」
アナウンスが終わり、聞き慣れないらしい単語を尋ねてくるエヴァ様。
どうやら気になっているらしい彼女に私は「行ってみますか?」と声を掛けました。
「ええ、そうね。初のコラボで無様な姿晒せないもの」
「無様な姿でバズった人がなんか言ってますね」
「リリィ」
「あ、ちなみに私はコラボの相談の方があるのでいけません。どうぞいってらっしゃいませ」
そうリリィさんに送り出され、私とエヴァさんは食器類を下げた後にアナウンスされた戦闘準備室、そして調整シミュレーター室へと向かいました。
◇◇◇
戦闘準備室、調整シミュレーター室があるフロアに到着すると、私と同い年くらいか少し下に見えるくらいの子が、タブレット片手にその片隅で機械をいじっています。
そして彼女は私達に気がついたらしく、タブレットを切ってこちらへと向きました。
「あ、エヴァ・グリーンデザートさんにミーヤ・アンブライドルドさん。準備エリアへようこそ」
「あたしはここを管理してる、ギルド管理委員会のアンナ・ケイティーズって言います」と彼女はぺこりと頭を下げ、ゆっくりと私達の方へと近づいてきます。
少しの幼さと、どこか俯瞰したような雰囲気を感じました。
「初参加ですよね、あたし案内しますよ」
そう言ってタブレット片手に、彼女は私達についてくるよう促しました。
行き先はフロアの中央に設けられたエアロック。
どうやら魔力濃度の管理のためらしい。
「パスワードとかはないんですけど」なんて言いながら、彼女は手順通りに扉を開いた。
「どうぞ。ここが戦闘準備室です」
そこには魔導触媒純液で満たされた大量の水槽と、それに漬けられたこれまた大量の武装が。
ハンドガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、対物ライフル、サブマシンガン、ヘビーマシンガン、挙げ句の果てにはロケットランチャーにレールガンなんて代物も。
弾薬なども同じように魔導触媒純液に浸され、対モンスターにおいて最高火力を発揮可能なように調整されています。
アンナさんは「必要だったら好きに持ってっていいですよ」と言いつつ、水槽を尻目に更に奥へと進んでいき、私達もそれに付いていきました。
「多分、こっちがお目当てですよね」
戦闘準備室の先、ガラス張りのトレーニングルームのような部屋が見えました。
中には普通のトレーニング器具の他に、駅とかにあるリモートワーク用のワーキングスペースのような箱が幾つも並んでいます。
一足先に調整シミュレーター室に入った彼女が箱の前で「どうぞ」と手招きしていました。
「コールドスリープのやつみたいね」
「そうですね〜、理論的には近いかも……」
「個々のスペックに合わせて自動調節されるので、1箱1人でお願いしますね」
その言葉に従い、それぞれの箱に入った私とエヴァさん。
真っ暗な中身はどこか落ち着きました。
「それでは始めます」
そして箱の中に彼女の声が響いた瞬間、私の身体は全く覚えのない草原へと放り出されました。




