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【メイド】32枠目【群島崩壊前夜】

「はぁ……はぁ……やぁっと出来た……!!」


 あれから数時間、先輩配信者方に囲まれノートパソコンに向かっていたエヴァ様はようやっと作業を終えると息を荒くしながら食堂の机に突っ伏しました。


 良い感じにエヴァ様に指導してくれていた彼女達は完成作品を前に割れんばかりの拍手を送っています。



「エヴァちゃん凄い!!超可愛い!!天才!!」


「うわ……原石磨かれちゃった……」


「エヴァ様上手〜♡」


「いいじゃん。結局こういうのだし、みんなが好きなの」



 綺麗なお姉様方に囲まれ、褒められまくって猫可愛がり状態のエヴァ様は「だって私天才だもの」なんて少し得意げにしながらも頬を赤くしてまんざらでもなさそうにしています。


 思えば学院の頃から後輩気質だったなぁ、なんて考えていると「つくづく若さっていうのは羨ましくなるものだ」と背中から声を掛けられ、振り返ると青林檎頭の紳士が中折れ帽を上げて挨拶してきました。



「あ、ルネさん、ご無沙汰しています。ちなみに私もエヴァ様と同い年ですよ。実は」


「失礼、そうだったな。彼女よりも随分と大人びて見えたものでね」


「……あ、もしかしてナンパですか?」


「おや、その自信家は主人似かい?まるで姉妹のようだ」


「ま、今は苗字も同じですしね。ぶい」


「はは、うちの娘も君くらい活発だと良かったんだけどな」



 そう言って笑う彼の薬指には上品なシルバーが。


 「ご結婚されてるんですか?」と尋ねると、ルネは「かれこれ20年になるかな」とその言葉を肯定しました。



「良いですね。エヴァ様には縁のない話です」


「それは興味深い話だな。彼女、良いところの令嬢だろう?縁談なんて引く手数多に思えるが」


「常識的に考えればそうなんですけどね。でも非常識なんですよ、エヴァ様」


「はは、確かに、エヴァさんに釣り合うような白馬の王子様なんてそう見つかりそうもないか」


「ええ。王子様側の台座がドカーンってかちわりメガトンパンチしますから」


「ちょっとリリィ!今私に失礼なこと言ったわよね!?」



 相変わらずのおっそろしく強いカクテルパーティー効果。


 自意識過剰なんじゃないですか?


 そんなことを思いつつも「いえ、シンとか付く方です」と誤魔化したりしていた私だったが、次の瞬間「ぴんぽんぱんぽーん」と数時間前に聞いたような声のチャイムが響きました。



「『親愛なる冒険者皆様、ベルナデッタ・マカイビーディーヴァでございます。現在本艦は氷海龍共の制圧するネビオロ島へ向けて巡航中ですが、想定以上の活動の活発化、それに伴うダンジョン圏の拡大に伴いまして到着予定時刻が23時12分から9時間17分の前倒しとなる13時55分に変更となります。また、配信などの情報解禁については規定通り到着後の開戦準備期間からとなりますので御理解のほどよろしくお願いします。以上、ベルナデッタ・マカイビーディーヴァでございました』」


「9時間……今回は骨が折れるな。「10許可(オバテン)」だろうと気は抜けないか」


「そういえば他の方も「10許可」なんてことを言っていましたけど、実際どういう意味なんですか?」


「「レベル10ダンジョン攻略の参戦権利保有者及び緊急招集対象」、つまりは「その地域の最上位層の冒険者」ってことだ。各県でも100人そこらしかいない、文字通りの怪物揃いと言って良い。もちろん、君達もその一員だとも」


「へー、これコメディなんですけどね」


「わ〜、またメタいこと言ってる〜」



 いつの間にか戻ってきたらしいミーヤはそう言ってクスクスと笑います。


 そして彼女は食堂で注文したらしいミルクスムージーを啜りながら「一回部屋戻りません?」と私と、お姉様方と一旦別れたらしいエヴァ様に提案しました。



「海龍種って耐久高いし正直そこそこの長期戦になると思うんで、ここらで一回ガチ寝しといた方が良いと思うんですよ。……あ、エヴァ様に睡眠欲とかあったらの話なんですけど」


「一応あるわよ、一応」


「まあ寝落ちしてましたもんね笑」


「何が笑よ」



 「ま、悪くない提案ね」とお姉様方にもらったデカ目のペロペロキャンディを舐めながら食堂を出るエヴァ様。


 私達もそれに付いていき、割り当てられた301号室へと向かいました。



◇◇◇



「あ、案外豪華なんですね」


「わんっ」


「もともと客船になる予定だったのが流れて仕様変更して戦艦になったみたいな話聞いたことありますから。3人と1匹でも快適に寝れますよ」


「ええ、そうね。3人と1匹でも……」



 広い部屋のリビング、私達は顔を見合わせ、足元で嬉しそうに尻尾を振るキバオオカミの赤ちゃんと互いの顔を交互に眺めています。



「……マルジュ、ついてきちゃったの?」


「わんわんっ!!」


 

 エヴァ様が尋ねると、彼女は心底楽しげに吠えました。

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