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【受付嬢】30枠目【血は争えない】

 ベルナデッタ・マカイビーディーヴァ。

 

 本名、ニーナ・アンブライドルド。


 2歳上の、私のお姉ちゃん。


 びっくりするくらいの天才で、びっくりするくらいの変態。


 ……正直、こんなところで会うとは思いませんでしたけど……。



「ええっと、もう一回言うんですけど、ニーナ姉……お姉ちゃんはド変態なんです」


「うわリリィ、この子二回も言ったわよ」


「だからエヴァ様も全く言えたことではありませんからね?」


「ミーちゃんのおっぱいは私が育てました〜!」


「うわシンプル変態じゃない!?」


「ここに来て頭部にドストレートですか!?」


「どこの投げる国際問題よそれ!」



 好き放題に言われてますが、ぶっちゃけ仰る通りとしか言いようがありません。


 面食い、色狂い、レズのマゾヒスト、それがニーナ・アンブライドルドという人間です。



「……ってことはまさか……」


「あ、こっちが主人格ですよ?」


「うっわ……」


「ちなみに悲しい過去とかある感じでもないです」


「そらそうよね。そうは見えないもの」


「というわけでちょっとだけ回想シーン入りますね」


「急ね、話が」



◇◇◇



 それは今から10年前、私が学院1年生で、ニーナ姉が3年生の時のことでした。



「うぁ〜!また成績落ちたぁ〜!」


「あ、ええっと……大丈夫?」


「あらあら、そんな落ち込んだら駄目よ?」


「うう……お姉〜〜!!」



 うにゃうにゃ喚きながら、私の6個上、当時社会人1年目だったアーニャ姉に抱きつくニーナ姉。


 あらあら系ママならぬあらあら系お姉ちゃんのアーニャ姉はニーナ姉に抱きつかれ、おっぱいに顔を埋められても「幾つになっても甘えん坊なんだから」なんて優しく抱き返しつつ、頭をなでなでしていました。


 今思うと、ある意味で彼女もおっとり巨乳に脳を焼かれた被害者なのかもしれません。


 いや、そんなことないか。



「それでニーナ姉、今度はなんで成績下がったの?」


「ええっと……あの、最近教育実習生が来てね?その……すごく、顔と身体が好みで……」


「あらあら……それは仕方ないわね」


「いや全然仕方なくなくない?」



 たまにノッた時はとんでもない成績を叩き出す分、オブラートに包んで……素行だけがもったいないと言われ続けていたニーナ姉。


 私は「あ」なんて声を漏らし、冗談交じりにそれを口にしたんです。



「もう……普段のニーナ姉とは別に真面目なニーナ姉がいればいいのに……」


「……、……そ、それだぁ〜〜〜っっっ!!!」



 それを聞いたニーナ姉は、パラダイムシフトでも起きたみたいな盛大な歓声を上げました。


 ニーナ姉の騒ぎようといったらまさしく「目から鱗」って感じで、そのままカートゥーンアニメのような走り方で「ちょっと待ってて!!」と自分の部屋まで走っていった彼女。

 

 そして30分くらいした後、「出来た〜〜〜っっっ!!!」というさらなる大歓声とともに部屋を飛び出してきたのです。



「お姉ちゃん!!ミーちゃん!!すごいのできた!!!」


「ふふっ、そうなの?お姉ちゃんにも見せてくれる?」


「もっっちろん!!!」



 ものすごい勢いの返事をしてから、ニーナ姉は顎の左側と額の右側に手を当てました。


 そして彼女が力を込めると、ズレたパーツを嵌め直すような、ガコッという音がして、目の色が変わってしまいました。


 あ、いえ、慣用句的な用法ではなく、本当に瞳の色が緑色から金色へと変わっていたんです。


 私があっけにとられ、アーニャ姉が「おお〜」と拍手する中、ニーナ姉は得意げな顔を見せて言いました。



「というわけで本日より私、人為的な二重人格でございます。これにより思考速度は二倍、お茶目さ二倍、魅力二倍の最強乙女となりましたのでどうぞ御理解御協力の程」


「……えっと、もう少し詳しく説明出来る?」


「要は首をガコッとすることを発動条件として人格を切り替える魔法を開発しました」


「まあ、すごいわね」


「また変な魔法作ってる……」



◇◇◇



「……で、その二重人格に名前がついたのが……」


「はい。ニーナ姉オルタことベルナデッタ・マカイビーディーヴァです」


「うっわ頭おかしいわね」


「残念ながら同意せざるを得ません。控えめに言わずとも狂ってます」



 間違いなく妥当な反応をするお二人。


 うん、私もそう思ってます。



「にしてもそこから良くギルドのお偉いさんまで上り詰めたわね……それも10年そこらじゃない」


「あ〜……なんか地元では「キャラ変成功したね〜」くらいに思われてて〜……」


「あきれかえるほど平和な地元?」


「いや時々食べ物独り占めしようとするやつとか出てきますよ?」


「それはもうあきれかえるほど平和な地元じゃない。……あ、ちなみに一番上の……アーニャさん?だったかしら。彼女は今どうしてるの?貴女達と同じように受付嬢?」


「あ、いえ、学院の時は保育士のバイトしてて〜……今は小学校の保健室の先生やってます」


「おねショタのおね側過ぎるでしょ」


「ショタおn」


「リリィ」



 そんなこんなで話していると、どうやら出港準備が出来た様子。


 人格を切り替えたニーナ姉が「皆様の健闘を祈っております」と送ってくれた言葉に私はサムズアップ、エヴァさんはピース、リリィさんはダブルピースで応え、ニーナ姉の部屋を出ました。



「……そういえばどれくらいで着くの?目的地」


「……1日?」


「思ったより遠いわね」

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