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【メイド】29枠目【全員狂人】

「皆様、「戦争」の時間でございます」



 金色の瞳を爛々と輝かせ、高らかに言い放った彼女は、エヴァ様に負けず劣らずの美貌で、負けず劣らずの関わってはいけない感を纏っていました。


 周りを見ると「今回こいつかぁ……」という不安げな顔と「今回こいつかぁ……!!」という楽しげな顔。


 しかしそんなことはお構い無しに、彼女は話を続けます。



「このような星一つない暴力日和に皆様と共に出撃出来ること、(わたくし)大変嬉しく思っております。今回の侵略者共は「ザルカヴァ」を主とする氷海龍の群れおよそ1300匹。レッドゴッド諸島を我が物とすべく攻勢を仕掛けてきた不躾な輩でございます。これは霊長たる私共ニンゲンの威信を賭けて徹底的に叩き潰し、生物種としての格の違いを見せつけなければなりません」


「ねえリリィ、こいつヤバい奴じゃない?」


「エヴァ様は言っちゃいけないと思いますが、まあヤバい奴なのは事実ですね」


「そこの御二方、話はバッチリ聞こえておりますが、何せ私、貴女方のような頭蓋の螺子の外れた強者は染色体ガン無視ドストライクの二刀流でございますので、目を瞑ることといたします。後でプライベートで連絡先も下さると幸いです」


「そういえば私いっつも変態ばっかに好かれるんだったわ」


「あ、私の話しました〜?」


「自覚あるんですね」



 そして真っ赤なパーティドレスに身を包み、灰色の髪を揺らしながら参加者達を煽るその様子はまさに煽動者(アジテーター)


 もはや場慣れとかそういった領域ではなく、天性の才というものを感じさせます。



「皆様、武器をお取り下さいませ!「死ね」と申しているのではございません、「殺せ」と申しているのです!目指すはキルレ無限大(インフィニティ)、0デスを今回のノルマといたしましょう!御安心下さい、私はそれが出来る面子を揃えたのですから!」



 見た目だけなら有り余るほどの気品と、調子良く奏でられる台詞の数々に上がっていく会場のボルテージ。


 そして彼女が「さあ、「戦争」の時間でございます!!」と話を締めると、会議室はドッと歓声で包まれました。



「以上、国防省ギルド管理委員会第三管理官ベルナデッタ・マカイビーディーヴァ。皆様と共に死地に赴けること、大変光栄に存じます」



 その一礼に巻き起こる喝采。


 青林檎頭の紳士も「全く、これには敵わないな」と外した帽子の埃を払っています。


 そして部屋を出ようとしたベルナデッタは、去り際に「【グリーンデザート放送局】の皆様は私の部屋へ」と言い残していきました。


 嫌ですね。


 これでは私がまるでエヴァ様やミーヤと同類かのように扱われてしまいます。


 全く失礼な話です。


 しかしそんなことはお構い無しに、エヴァ様は私の手を引き摺ってベルナデッタの後をついていきました。


 ……あ、もちろん物理的な意味で、です。



◇◇◇



「さあ、皆様どうぞお座り下さいませ」


「エヴァ様私の腕取れちゃったんですが」


「適当に直せばいいじゃない」



 こうして彼女の執務室に招かれた私達。


 ベルナデッタは「こんなものしかありませんが」と少し気の抜けたコーラを注ぎ、160g入りのデカいポテチを開けました。


 本当に「こんなものしかありませんが」という感じですね。


 それに躊躇いなく手を伸ばすエヴァ様もエヴァ様ですが。


 そして彼女がもっちゃもっちゃととてもポテチを食べる音とは思えない咀嚼音を披露するその隣では、ミーヤが今まで見たことないくらい気まずそうな顔で目を泳がせていました。



「……どうかしたんですか?」

 

「……あ、いや、別に大したことじゃないんですけど〜……」



 大したことある顔をしています。


 その視線がチラチラとベルナデッタの方に向く辺り、まあ十中八九彼女絡みの話題でしょうか。


 そんなことを考えていると、当のベルナデッタはカーテンを締め切り、部屋の扉に鍵を掛けていました。


 なるほど、初対面で監禁とはこれまた随分と肝の据わった狂人です。


 しかし出会う人間がハナからこれとは、私は前世でどのような悪いことをしたというのでしょう。


 いえ、エヴァ様に限れば前世どころか今世で区切ってなお現在進行型で悪行三昧、悪人の人抜きといった感じなのですが。


 そしてかなり用心深く戸締まりしたベルナデッタは、改めてこちらの方へと瞳を向けてきました。


 何故か、その色は穏やかな緑色へと変わっていましたが。



「やぁっと会えたぁ〜!エヴァちゃんにリリィちゃん!妹がお世話になってます!」


「……え?」


「……は?」



 彼女が口を開いた瞬間、まるで、時が止まったかのようでした。


 ええ、認めましょう。


 あらゆる情報が処理しきれなかったのです。


 取り敢えずで横を向くと、そこには「いや非実在(アリエナ)いでしょ……」と目を見張るエヴァ様と、「やりやがった〜……」と目を逸らすミーヤ。


 そして彼女は「んんっ」と軽く咳払いすると、それはそれは嫌そうに口を開きました。



「ええっと〜……なんていうか……これ、私の、姉です」


「お姉ちゃんで〜す!」


「ねえリリィ、これ二重人格とかじゃない?」


「皮モノとか憑依モノかもしれませんよ」


「もしかしてえっちな話してる?」


「そうですね」



 しかし、こうして並ぶと明らかに血の繋がりを感じさせるほどには似ています。


 切れ長の目、さらりとした灰色の髪、小さめの顔、抜群のスタイル……ああ、申し訳ありません、ミーヤの外見描写はまだされていませんでしたね。



「けれど、そんなに隠したいこと?ギルドの管理官なんて超エリートじゃない」


「いや、あの……この人……」



 そして、ミーヤは顔を真っ赤にしながら言いました。



「……ド変態なんです」


「……、……え、貴女が言うの?」

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