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【メイド】27枠目【緊急招集】

「……っと、取り敢えずこんなもんかしら」



 最後にテレビを運び終えると、エヴァ様はそう言って一息つきました。


 結局新居のための買い物はトラック1台分程度にはなりましたが、その甲斐あってそれぞれの部屋にそれぞれの望む家具を用意できたと思います。


 私もめちゃくちゃ良いベッドを買ってもらいました。


 やはり持つべきものは金のある主人です。



「それでリリィ、今日の晩御飯はどうするの?」


「焼肉なんていかがでしょうか。流石にそろそろ自炊するべきかと思って材料は買ってきてますので」


「自炊か怪しいラインってことを除けばかなりいいわね」


「私もお肉食べたいです〜!」


「でしたらホットプレートを──」



 私がそう言いかけた、次の瞬間でした。



「!?」


「……?何でしょうか?」


「あ、まさか……」



 けたたましく鳴り響くエヴァ様のスマートフォン。


 通常とは全く違うサウンドです。


 「ちょっといいですか?」とエヴァ様のスマートフォンを覗き込んだミーヤは、「あ、やっぱり」と小さくため息を吐きました。



「お二人共、ダンジョン行く準備とかしてもらえますか?なるはやで、今すぐ出ないとなので」


「待って、一言で説明できる?」


「まあ、とにかくヤバいことです。なんてったって【緊急招集】ですから」



 緊急招集。


 インフラに致命的なダメージを与えかねないほどの災害級のダンジョン、あるいは将来的にそれほどの規模まで拡大しかねないダンジョンが確認された際、合計100人を目安として、「「難易度10相当」のダンジョンから生還可能である」とギルドが判断した一定範囲内の冒険者を緊急で招集することでダンジョンの早期消滅を図る、というシステム……。


 とインターネットに書いてありました。


 にしてもまさか、エヴァ様がもうそれほどと認識されているとは……いえ、「生還」が条件なら確かにエヴァ様は無敵ですが。



「それで、ダンジョンはどこなの?」


「レッドゴッド諸島のネビオロ島です。エクリプスの南方貿易の拠点になっていて、そこが壊滅するとかなりの被害が出ますね。集合場所はファンタスト軍港です」


「了解。お留守番頼んだわよ、マル」


「わんっ!」



 なるほど、こうして見るとやはり中央の受付嬢だったこともあり真面目な時は流石といった感じです。


 とはいえ私もダンジョンに向けて特別に準備するようなことはなく、ネクタイを締め直し、カラコンだけ入れ直して家を出ました。


 先にPhPHEVに乗り込んでいたミーヤは既に車のエンジンを吹かしており、最後に準備を終えたエヴァ様が乗り込んだ瞬間、強くアクセルを踏み込みました。



「ミーヤ、どこに向かうおつもりで?」


「まずオーエンテューダー空港の方に向かいます。1時間後にブラッシンググルーム行きが出るので、それに乗って1時間、後は空港に車を用意してもらったので、それに乗ればファンタストまでは合計2時間半、リミットの3時間には十分間に合います」


「リミット?」


「はい。基本的に緊急招集の猶予は3時間、3時間経過した時点でパーティメンバーを確定してダンジョンへと向かうという規定です。そうでもしないと最悪のケースに間に合わないんですよ」



 「本当に、緊急招集があるのはヤバい事態なので」と普段のアレは鳴りを潜め、真剣な表情で言うミーヤ。


 高速道路に乗った瞬間、彼女はさらにスピードを上げました。



◇◇◇



「失礼、緊急招集なのだけれど」


「……確認できました。ビジネスクラスに3席空きがありますので、どうぞそちらをお使い下さい」



 出発ゲートにスマホをかざし、機内へと向かう私達。


 席についたのは出発10分前というギリギリでしたが、なんとか間に合いました。


 私は集合前最後の腹ごしらえとして機内サービスでハンバーグサンドイッチを、エヴァ様は海鮮太巻を、ミーヤはカツサンドをそれぞれ注文し、離陸の時を待ちました。



◇◇◇



「まさか20分近く遅れるとは……」


「A1口!A1口でギルドの車が待機してますから、お二人共急いで!」


「そんな急かさないで……と言いたいけれどちゃんと急かすような状況じゃない!」



 私達はほぼ走っているような速度の早歩きで、空港内を驀進しました。

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