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【盤外】幕間【親の心子知らず】

「あの子達、随分と楽しそうじゃない」



 ミルリーフ州、ブランドフォード邸。


 家の掃除を終えたミナは今晩の夕食のため、コロッケの材料となる蒸したジャガイモを潰しながら愛娘達の配信を見守っていた。


 エヴァもリリィも、家にいた頃と同じくらいかそれ以上に楽しそうで、彼女からすればそれ以上望むことは無い。


 しかもこんなに愉快なお友達まで作って、と誰が見ているわけでもないけれど、ミナは嬉しそうに微笑んだ。



「ふふっ、私が母親になってから……17年、いえ、もう18年の方が近くなっちゃった?もう、そんなに経つのね」



 エヴァもリリィも、彼女によく似ている。


 少し捻った性格も、どこか不器用なところも、美貌も。


 似ていないのは胸くらいだろうか。


 ミナは結構ご立派である。



「それにしても、本当、昔から無茶が好きな子ね」



 潰したジャガイモに牛ひき肉を混ぜ、コロッケのタネを作りながら彼女は呟く。


 ミナは想像以上に普通の母親だ。


 子供達の将来を深く想い、家族を何よりも大切にする、愛情に溢れた、そう珍しくもない普通の母親だ。


 少し軍事工学なんかを専攻していただけの、たまたま読モにスカウトされた、ちょっとだけ、人並みに捻くれた普通の女子術生が、そのまま母親になっただけなのである。


 そこに名家がどうだか、生まれがどうだか、というのはあまり介在していなかった。



「うん。そうそう。随分と上手になったわね」



 ちょうど、画面の奥ではリリィが倉庫を消し飛ばしたところ。


 その火力に満足そうに頷く彼女は結構な脳筋寄り。


 「弾幕はパワーだぜ」、なんて言葉に心打たれたのはかれこれ40年近く前のことになる。


 そして彼女は、灰色のしなやかで艷やかな尾を揺らしながら、出来上がった5人分のコロッケのタネを冷蔵庫へと入れ、心地良さそうに背伸びした。


 外した頭の三角巾から、猫耳がぴょこんと跳ねた。


 

 彼女達の配信を見る度、ミナはエヴァが初めて死んだ日のことを思い出す。


 別に大した話じゃない。


 相変わらず好奇心旺盛だったエヴァ・ブランドフォード(3)が道端に紛れていたオオスズメバチの巣を突っついたのである。


 そして当然の結果として刺されまくったエヴァはアナフィラキシーショックもガンガン起こしてたし、ギャン泣きもしていたが、一向に死ぬ気配はない。


 それどころかエヴァを刺したハチがバタリバタリと死んでいく。


 それで術院付属病院で調べた結果、不老不死が発覚したという経緯だった。


 それを知った時、彼女も夫もびっくりするくらいびっくりしたが、まあそんなこともあるか、とその日の内に納得した。


 というのも、ミナ自身が不老体質だったから。


 流石にこれはエヴァもミナも極端な例ではあるが、この世界において怪我が治りやすいとか、肺活量がとんでもない、みたいな特殊体質はあまり珍しくもない。


 魔力が遺伝子に影響をきたしている、なんて説もあるが、【変異】含めて、「まあそれが多様性だよね」、って感じの流れになってるのがこの世界だ。



「……いえ、この辺りで止めておきましょうか。これ以上話していると、読者さんが帰ってしまうもの」



 ついでに、彼女達のメタ発言もめちゃくちゃ母親譲りである。


 そして、エヴァ達の配信が終わると同時に、彼女はMetubeアプリを閉じた。



「それじゃ、おつエヴァ〜」

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