【メイド】19枠目【殲滅作戦】
エヴァ様は何らかの法に触れそうな罠を仕掛け、ミーヤが駐車場ド真ん中でミンチマシーンと化す中、私は物流ターミナル棟の応接室でメロンソーダを飲んでいました。
サボっているかサボっていないかと聞かれたらまあサボっているという表現が正しいようにも感じますが、言い訳らしい言い訳は一応存在しています。
それすなわち、私は彼女らほどイカれてはいないということ。
死を恐れるとまでは言いませんが、私はエヴァ様ほど望んで死に奔ることはありませんし、ミーヤほど暴力に恋い焦がれているわけでもありません。
ですのでなるべく早く、楽しく、それでいて安全に仕留める策を講じるべく、こうして冷房の効いた涼しい部屋でメロンソーダを呷りつつ持ち込んだクランチチョコレートを頬張ってるというわけです。
『言い訳乙』
『結局サボってるだけ定期』
「ちッ、バレてますか」
『逆にどこをどうやったらバレてないと思えるんだよ』
『こいつ堂々と視聴者に舌打ちしたぞ』
『あの令嬢にしてこのメイドあり』
『お前もだいぶ顔で許されてるだけだからな』
「仕方ないじゃないですか、私の座右の銘は「ひたすら楽して」ですので。編集も頑張りませんよ」
『レトロゲー学会?』
『それは楽できないやつだろ』
『配信者なら編集は頑張れ』
はぁ、仕方ありません。
ここは親愛なる視聴者の皆様のために私、リリィ・グリーンデザートが一肌脱ぐことにいたしましょう。
『恩着せがましいの例文か?』
『このチャンネルで一番ヤバいヤツだろこのメイド』
「干芋にノイキャンイヤホンでも追加しておきますか」
『こいつナチュラルにコメントのことノイズ呼ばわりした?』
『結局こいつも個性の煮凝りかよ』
『メタネタも出来るプロレスも出来るビキビキビキニ123』
ということで私はリアルタイムでの文字起こしなどを皆様の画面に投影し、解説の準備を整えました。
『見たことある形式過ぎるな』
『親の顔より見たフォーマット』
『親の顔よりというか親父だろ』
『なにこれ』
『RTAでも走るの?』
さて、準備も出来たところで始めていきましょう。
リリィ・グリーンデザートの楽しい獣狩りのコーナーです。
ちなみに前回から使われている「獣狩り」という表現は何か特定のコンテンツに関連するものではなく、モンスターを漢字一文字で表すと「獣」になるというだけであり、一般的に用いられているものですのでどうぞご安心を。
必要なものは……まあ、ご自由に。
私は基本的に優勢火力なメイドですので、装備はハイカラな.30SR中心に、サブには遊び心と浪漫溢れる.50HMGの制圧射撃、サイドメニューには愛好家垂涎のテルミット焼夷手榴弾などいかがでしょうか。
『待て装備どこから出した?』
『というかこいつ突然道具出すからな』
『高次元ポケットでも付いてるのか?』
……ああ、言い忘れていました。
エヴァ様ほどではありませんが私も少々可変式かつ永久機関な体質ですので、肉体の魔力を糧とすれば武器供給は無制限、今回の装備も自家生産が十二分に可能ということになります。
「皆様お好きでしょう?HMGブン回す弾薬庫系ミリタリーメイド」
『否定できねえ……』
『正直好き過ぎる』
『やっぱちゃんとしたときの顔の良さ異常だわこいつら』
それでは、いざ実戦へと参りましょうか。
改めまして、舞台はアイスカペイド、イズヴェスティア物流センター物流ターミナル棟。
事前調査によれば今回の討伐対象であるキバオオカミ(汚染体)の頭数は200頭ほど。
そのうち90頭が屋外、30頭が事務棟で確認されたとのことですので、私は80頭ほど討伐すれば良いことになります。
しかし全7階建て、縦107m横321m延面積24万429㎡を虱潰しに探すというのは流石のリリィ・グリーンデザートでも流石に骨が折れてしまいます。
いえ、骨折とは縁が無い人生ではありますが。
『やかましいわ』
『禁断の流石二度打ち』
『どれだけ自分を買い被ってるんだ』
『でもエヴァ様とタメ張れるってすごくね?』
『もっと買い被っていいぞ』
『手のひらガトリング砲かよ』
ということですので、今回はこのようなフォーマットを用いていることもありますし、このようにして解決しましょう。
はい、賢い皆様も別に賢くない皆様もお分かりでしょう。
ありったけのテルミット焼夷手榴弾で倉庫内の商品を焼き尽くしましょう。
『!?』
『なんだお前!?(驚愕)』
『こいつ常に毒吐いてるなと思ったらそれどころじゃなくなった』
『大炎上不可避』
『もうしてるだろ』
「ちなみにですが、ここ最近はトイレットペーパーやらの紙製品の需要が高くて大量に取り扱ってるらしいですよ、ちなみにですが」
『確信犯じゃねえか』
『確信犯警察だ!』
『まずい確信犯は法律より自分の思想が正しいと確信している犯罪者のことを指すと訂正してくる確信犯警察だ!』
基本的にモンスターも野生動物の範疇を出たりはしませんので、火は怖がります。
ということは倉庫をまるごと燃やしてしまえば一発で全員出てきてくれるということ。
後は閉鎖中唯一の出入り口として解放されているここで出待ちしてこのHMGで肉ミンチというわけです。
あ、現在このイズヴェスティア物流センターはギルドの手によって疑似隔離され、獣を掃滅し次第いつでもロールバック処理が可能となっておりますので、そこはご安心を。
「じゃ、出てくるまでぐーたらしましょうか」
『倍速出来ないの草』
『っていうかSRとHMG同時に使うとか不可能じゃね?』
『あれだけで倉庫燃やしきれるはずないだろ』
「なるほど。まあ皆様ならそうでしょうね。でしたら、私の特技を披露することにいたしましょう」
私は一旦文字起こしを切り、SRもHMGも地面に放り出します。
そして右手で指鉄砲のようなものを作り、「ばーん」と引き金を引く真似をしました。
その瞬間、放り出されたはずのSRが浮き上がり、倉庫の方へと弾丸を放ちました。
『!!?』
『は!!??』
『嘘だろ』
『こっちもバケモンかよ』
『想像を越えてくるな』
『????』
『何らかの国際法に抵触してるだろ』
皆様大層驚いている御様子ですが、これは触っていないSRが撃たれたからでしょうか。
いえ、それ一つでは子供騙しにもならない宴会芸。
皆様を驚かせたのはその威力。
何せ、倉庫の半分が、抉り取られたかのように消し飛んだのですから。
「これが私の魔法。エヴァ様ほどではありませんが、多少なりとも外れ値となり得る程度の力でしょうか」
武装魔法。
武装を生成し、出力含めてそれらを自在に操る、私のみに搭載された力。
ようやく、皆様にお披露目することが叶いました。
これが御母様の傑作たる、【改良型敵対生命私刑執行機】、改め、リリィ・グリーンデザートの実力です。
ほら、──《《戦争を終結させられる程度には》》強いでしょう?
……まあ、ここがバトル漫画でないことだけは口惜しくありますが。




