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「いやーごめんごめん。なかなか戻ってこないから迎えに行ったんだけどすれ違っちゃったみたい」
「最終的には助けていただきましたし気にしないでください」
笑顔で返答する丸山に思わずジトっとした視線を向けてしまうのは致し方ないと思う。
「紬さん、こちら話していた三村です。三村、この方が御影部部長の紬さんだ」
「はじめまして~。部長の御影です」
「はあ。はじめまして」
「君のことは久遠と萌音ちゃんから聞いてるよ~」
「えと……何を?」
「萌音ちゃんが助けてもらったって。けどいや~君力強いね! びっくりしちゃった」
にこにこと楽しそうに話す御影先輩に毒気を抜かれて、オレはとりあえずこの機会にいろいろ聞いてみることにした。
「さっき、オレに何したんですか?」
「ああ、あれは君の力を引き出しただけだよ。ボクはちょっとその手助けをしただけ。だからアレを倒したのは間違いなく君だよ」
「力って……」
「ん~、どう説明したらいいかな? 君、ゲームとかする?」
「ちょっとなら」
「じゃあイメージ的には、RPGを思い浮かべてもらったらわかりやすいかな? まずさっき言った『力』だけど、魔法使い以外魔法が使えないみたいな感じで使える人と使えない人がいるの。それは生まれ持ったもので、努力して手に入るものじゃないし使える力の種類も決まってる。強さは……そうだなぁ、MPの量が多い人ほど強い力が使える、みたいな?」
「う~~~ん……わかるようなわからないような」
言っていることは何となくわかる。わかるんだが。
「いまいち現実感がないです」
「またまた~。君くらい力が強いと普段からいっぱい絡まれてきたでしょ?」
「きてませんけど!? ってかさっきから強い強い言ってますけどオレ何も知らないし何もできませんよ!?」
「ありゃ? そうなの? じゃあ次の部活の時にボクがぜ~んぶ教えてあげるね」
「次の部活の時って……オレ御影部入りませんよ」
勝手に入部する流れになっているので、そこはキッパリと否定した。するとオレの答えが予想外だったらしく、御影先輩は目を丸くしている。
「えっ! 入るから今日来てくれたんじゃないの??」
「いや、オレは丸山に『今日の夜空いてるか?』って聞かれただけですけど」
「あちゃー」
御影先輩は大げさにぺちんと額を叩いている。
「久遠、ダメだよ~説明も無しにこんな危険な事やらせちゃ」
「紬さんがいたら危険な事なんてないですよ?」
「久遠」
本気で言っているであろう丸山も、御影先輩が笑顔を消して名前を呼んだことで渋々ながら「すみません」と謝った。
「三村、悪かった。結果的に危険な目に合わせることになってしまった」
「あー、うん。まあいいよ、最終的に何ともなかったし」
丸山が謝っているのを、御影先輩は子供を見守るように微笑ましく眺めていた。
「んで? 結局なんで呼んだわけ?」
「ああ、御影部について俺の話じゃ伝わり辛いと思ってな。丁度よく影もいるから体験入部してもらおうと思って」
「それを先に言え!!」
そしたら絶対来ないから!




