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第42話 「大規模戦闘~マスコンバット~」


それから3日後、ついに【黒森】からの襲撃があった。

それまでここでの戦い方の練習ができたので、期間があったのはありがたい。


さっそく常設軍は戦闘に入っているようで、俺たちも持ち場である東へ走る。

爆発音や、なにかの器械の操作音。人、魔物双方の叫び声。


魔物は、おおよそ三角形の形で群れをなしてやってくる。

指揮官はおらず、種類もバラバラ。

とにかく物量でもって攻めてくる。

この攻め方は1000年以上、まったく変わらないらしい。


もし彼らに戦略や戦術というものがあったら、人類はとっくの昔に滅ぼされているそうだ。


「森の中はまったく見通せないからね。

 攻め方を変えたり奇襲をするメリットがあちらにしかない」

「魔物がアホでよかったよ!」


走りながら会話をするが、息はまったく乱れなかった。

冒険者生活の賜物だろう。


「【闇生み】さんも、長く生きてるわりにはおバカなんですね!」

「そのままもうろくしててくれ!」


所定の位置の、裏階段までたどり着いた。

すでに先に着いてたものもおり、さっそくドンパチ聞こえる。


階段を駆け上がると、壁の上に30人ほど。

この区画の担当は約60人だが、俺たちは出遅れ組。

判断が遅いというわけだ。


森をみると、ぞくぞくと魔物が溢れ出していた。

だが、近いモノでも谷の坂道の中ほどまでで、それも足をやったのか。引きずるような歩みだ。


事前に聞いたように、魔物はまず森側の崖から落ちてそれなりに負傷する。

そうしたところに、飛び道具を浴びせる。

壁から谷の坂道は一直線で、誤射しても後ろは崖だ。


この壁と谷の構造は、黒森への誤射による射手の即死避けと、魔物の負傷をかねた一石二鳥の構造である。


「ザリードゥ!」

「おう、先に始めちまってるぜ!」


彼は手にした長弓で先頭をすすむゴブリンを仕留める。

続々と崖の上から魔物が飛び降り、あるモノは無事着地し、またあるモノは足を折っていた。

そのまま動かなくなるモノもいる。


「……うわぁ」


事前に聞いていたとはいえ、こうして直に見るとゾッとする。

まったく躊躇いもせずこちらへただひたすら行進してくる。

アリやゾンビのようだ。


急いで火精を励起れいきしたところで、さらに怖気が走る。

精霊を『視る』モードにしてこの森の異様さが改めてわかった。


……森からさき、火精がまったくいない。

おそらく、他の精霊も。


イリムをみると、すでに『石槍』を射出していた。

だが、こちらの視線に気づいたのか「師匠もですか!?」と叫ぶ。


「ああ」こちらも『火矢ファイアボルト』を12発、回転式弾倉シリンダーに込める。

あの黒森の領域は、精霊でさえ死滅させている。

今までずっと彼らに助けられてきた身としては、それだけで吐き気がする。


敵の数はまだ少ない、サイズも小物ばかり。

正確に、ひとつひとつ『火矢』を撃ち出していく。


カシスは後方で、大群兵器の装填と最終確認。

魔物は次々と森からはいでて、次々と飛び降りていく。

だんだんと、怪我をする個体が減ってきた。

……積み上がった仲間の死体がクッションとなっている。


「……大した連中だぜ!」


敵の群れの中に、大型のモノが混じってきた。

オーク、トロール。

そして……、


「弓、くるぞっ!!」


ザリードゥの掛け声、狭間代わりに地面に突き立てられた板の後ろに隠れる。左右をみる、ザリードゥもイリムも、そして同じ壁の仲間も無事だ。


後ろをみる。カシスも無事、ところどころに設置してある立板の裏に入ったようだ。


「師匠、射手はちょうどあんたの正面あたりだ。谷の底、20匹ほどいる」

「わかった」


20を一度に黙らせるには、弾倉ふたつの12では足りない。

そして、ここの戦いのルールでは、正面の敵を基本的には担当する。

そして4~6人で一組のチームとし、その中で連携や交代を回す。


無論、常駐軍はきちんとした連携を組んでおり、壁の防衛の主力だ。

200メートルほど西の主戦場をみると魔物が敷き詰められたように行進している。それに比べればまだまだこちらは薄い。

気を引き締める。


「油、いっとく!?」とカシスの声。

「いや、もう少し敵が濃くなってだ!」


『大火球』を想起し、板から飛び出す。

―――正面、谷の底、20匹。アレだ!


形成した3メートルほどの火球は、まっすぐに射手の群れへ。

一匹に着弾したところで、爆発のイメージを叩き込む。


火球は一瞬収縮し、そののち凄まじい速さで膨れ上がった。


―――閃光と轟音。


射手だけでなく、周囲の魔物も巻き込んだ一撃。

谷底に爆風が吹き荒れる。


みれば、積み上がった死体もろとも射手達は吹き飛んでいる。


「よっしゃ師匠、やるな!今度はこちらが打ち込む番だぜ!」

「さすが師匠!すごい術ですね!」


左右の二人はすぐさま攻撃を開始する。

かやた長弓、かたや『石槍』


俺もすぐさま『火弾』を並列想起。

12の弾丸を弾倉シリンダーに叩き込む。


せまる群れの中で、ひときわ大きな魔物。

トロール。正確には森トロールか。


カシスの予測を信じ、12発すべての『火弾』を撃ちつける。

ぐらり…と炎に包まれながらトロールがうずくまる。


「油、いくよ!」とカシスの声。

彼女の操る大型兵器から、次々と飛来物が放たれる。


それらは敵の進む坂の中腹に落下し、すぐさま赤い花を咲かせた。

炎が次々と池のように広がる。


「アレをあと20回いけるわ!」

「おう!」


防衛戦の、第一段階は極めて順調だった。



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