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第41話 「MPタンク」


「ザリードゥは、まれびとじゃないわ」

壁から離れた原っぱで、カシスは険しい顔でそう言った。


「いや……それはわかるけど」

「…………。」


だいたい、あんなトカゲ顔の不思議星人は地球にはいなかった。

エルダーなスクロールだの、ケムリで顔を変えられただの、蜂蜜館の荒くれだの、挙げればキリがないほどファンタジーでは常連だったが。


「私の村では【外の人】は追い出されますが、ザリードゥの故郷では?」

「……ん、同じだったかな。追放処分ってやつ」


以前イリムに聞いたが、大樹海に住まう獣人達の基準では、まれびとはただ追放する存在だ。彼の故郷もそれに近いのだろう。


「つまり、獣人系は俺たちへのあたりはまだマイルドってことか」

「まあね。だからって打ち明けようなんて思わないでよ。

 不要なリスクは負いたくない」

「……まあな」


俺としてはさっきの一件でザリードゥの好感度はかなり上がったので、残念ではある。


「そういえば彼が使ってた魔法は知ってる?」

「アレ、魔法じゃなくて奇跡よ。彼は中級の奇跡すら発現できる戦士なの」


「ええっ!あれだけ剣の腕があるのに……すごいですね!」

「奇跡って、魔法使い以上に使い手が少ないんだろ?」


「だから彼は超優秀。パーティでも引っ張りだこだし、私も回復はだいぶお世話になった」

「さっきの術は?」


「『葬送』って、カミサマの御下みもとに送るだかなんだか。あとアンデッドに超効く」

「ああ……そういう系ね」


……そういえば、先ほどの死体の方は、光り輝きながら消滅していった。

この世界は天国とかあるのだろうか。

せめて、できればそういった場所に送られたと思いたい。


「……私は、この人殺しまみれのクソみたいな世界を作ったヤツの世話にはなりたくないかな」


俺の表情で、なにを考えていたのかがわかったのだろう。


「そうね、私がダメになった場合はあんたの『火葬』で骨も残らず焼き払ってよ」

「……おいおい、縁起でもねえな」


「全部灰になって、残りは煙になって。魂だけでも元の世界に還れるかも、なんてね」

「…………。」


「とりあえず、あの奇跡で送られるのは私はゴメンだわ」

「そっか」

「まあ私がいるからふたりともそう簡単には死なせませんけどね!」


イリムがふふんとふんぞり返る。

お前のその自信はどこから……と思ったが、いや、多少楽観的なほうがよいのだろう。


「そうだな、頼んだぜイリム」

「はい!」


------------


その後、配置の申請をしてから小さな部屋に呼ばれ、大まかな動き方、ルールなどをレクチャーされる。


防衛の中央は統制のとれた常駐の軍で行い、端っこや手が回らない場所、緊急で穴が開いた場所が傭兵や冒険者の担当である。


士官らしき人、オスマン……だったか。

たっぷりとしたヒゲを蓄えたナイスミドルだ。名前もそうだがすこし中東系の顔立ちである。彼にいくつか質問された。


「魔法使いとはありがたい、なんでもザリードゥによると火の使い手だとか?」

「はい」

「『ファイアボルト』は何発いける?」


『火弾』か……数えたことがないが、並列想起の二丁拳銃デュアルウィルドで、50回は回せる……かな。『火矢』ならもっといけると思う。


「600発ぐらいかと」

「ハハハッ!!剛毅だねぇ、まあ干からびない程度にガンガンやってくれ」

「はい」


部屋を出たところで、カシスが「言い忘れたけど……アンタが多分、他の魔法使いと違うのは、MPよ」


「あくまで今まで見てきた魔法使いが基準だけど……あそこまでバカスカ撃っててガス欠しないのは見たことがない。上級や、さらにその上の連中は知らないけど」


「……そもそも精霊術師だから、使ってる力が違うんじゃないか」


「わからないけど、たぶん。イリムちゃんも『石槍ストーンスピア』はいくついける?」

「100回は投げられますね」

「しかも槍の訓練の後でやってたよな」


「……それ、ほかの魔法使いに言わないほうがいいかもね。

 100回あんなのが撃てるなら、それだけでパーティの射撃役こなせるから」


なるほど……なんとなく多いのかな、という気はしていた。

ただ、獣人村で訓練を始めたころは『火弾』20発でせいぜいだったし、ほぼ毎日の訓練が無駄じゃないのが実感できて嬉しい。


使えば使うだけ、特にあのゴブリンの洞窟の時など死地を超えるとグンと、火精の励起れいきが強くなっていったのは勘違いではなかったのだ。


今では、連れ歩ける……というより付いてきてくれる火精もずいぶん増えた。この中には、竜骨の前で、刺された腹を焼いた時からのヤツもいる。


「ただ、慢心はしないで。冒険者やっててアンタ以上の規模の魔法も見たことあるし、術の種類がとても多彩なヤツもいた。そいつはMPは平均より少なかったけど、どんな状況でも47種類ある呪文を的確に使い分けていた」


なんと……俺は即座に選択できる手札は5枚だ。

47種類も手札があったら確実にテンパる。

頭の処理速度がおかしいのでは……。


「アンタは魔法使い……というよりほぼ射撃マン。【魔銃士マジックガンナー】といったところね」

「おおっ、なんかカッコいい」

「ガンナーってなんですか?」


そうか、この世界の住人には通じねえか。

渾名とか二つ名にいいかなぁ、と一瞬思ったのだが。


「そういえば、カシスは【鴉】、イリムは【槍のイリム】

 ……俺だけそういうの決めてないな」

「決める必要ある?」

「そうだな、なんか考えておこう」

「聞いてる?」



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