第83話 「風ノ旅ビト」
旅の目的その1・おさらい
まれびとたちを助けるには召喚を検知するための術が必要。
四大元素の話から、風の精霊と火の精霊を併せればもしかしたらということで、風の谷にて上位の精霊に認めてもらおう!
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あのあとアスタルテと別れ、俺たちは南にむかった。
別れ際、「ほれ」と木の枝を一本もらった。
なんでもコレを地面に植えるとアスタルテは感知ができるらしく、場所にもよるが半日~2日ほどでこちらへ合流できるそうだ。
ワープ魔法?と聞くと地中を泳ぐのだと。
「てことはこの大陸の地下はトンネルまみれじゃないか?」
「いえ、恐らく物理的なものではないのでしょう。
地脈か、龍脈か……あるいはレイライン……?」
いずれにしろマジカルパワーか。
便利なこって。
野営の準備のあと、アスタルテ戦でみた「同時に違う精霊術を発動する」を試してみた。
結果は……まだまだ試行錯誤が必要だ。
例えると、右手と左手で違う文字を同時に書かされているような感じに近い。
イメージを同時に2種類走らせるのがこんなに難しいとは。
やはりすぐに習得できるものではないようだ。
……別れる前にコツを聞いておけばよかったか。
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それから3日後。
俺はひとりで風の谷の入り口にいる。
荒々しい崖や岩山がつづき、ごうごうびゅうびゅうと風が唸っている。
たしかに名前に相応しい場所だ。
仲間はここより離れた村の宿で待機。
この試練は、ひとりでなければ意味がないそうだ。
仲間の手を借りては決して精霊に認められることはない、と。
久しぶりにぴーすけを顕現させる。
すぐさま俺の肩に乗っかり、のんきにあくびをし始めた。
今はこいつが唯一の護衛となる。
もしもの場合は頼むぞ……と強くお願いをすると、「ぴぃー」と返事をもらえた。
よし、いくぞ相棒。
警戒しながら谷底を歩む。
道中、一度だけ大サソリの奇襲を受けたがぴーすけが反応しており、地中からの攻撃を回避することができた。
そのまま、相棒の『火息』と俺の『火弾』で難なく撃退。
こいつは毒腺がいい値で売れるので回収する。
思えば……昔の俺はこんな作業できなかったな。
虫の解体なんてそれだけでSAN値が振り切れただろう。
そうして谷底をすすむこと1時間。
視界がひらけ、テーブル状の高台にでた。
まわりをぐるりと見渡すと、周囲の景色を一望できた。
緑の森が延々と広がっている。
その森の一箇所が揺れ、鳥が大量に飛び立つ。
その鳥の群れから沸き立つように、一匹の飛竜が姿を現した。
翼をつよく羽ばたかせると、凄まじいスピードでこちらへ飛来してくる。
急いで火精を励起。
『火弾』の並列想起を一気に36発並び立てる。
これは、以前の2丁拳銃に加え、それを腰のホルスターに2丁、胸のホルスターに2丁備えるイメージだ。カリブの海賊や西部のガンマンもこうして大量に拳銃を用意して連射していたヤツがいたという。
……ぶっちゃけ、某海賊ゲーの主人公のイメージがだいぶ助けになったのだが。
「くらえっ!!」
50mほどの距離まできたところで、一気に12発を叩き込んだ。
手応えは……いや!
まったく意に介さずこちらへ羽ばたいてくる。
さらに、12、12と叩き込んだが、目視でのダメージはない。
すべて表皮で弾かれている。
恐るべき防御力……いや、火炎耐性か?
初手から『熱杭』にすべきだったか、しかしアレは消費が重い。
思わずためらってしまったのを悔やむ。
飛竜は咆哮をあげながらこちらまで飛来し、素早く尾を突き立ててきた。
とっさに横に飛び回避する。
あの尾には毒があり、毒消しがなければ数分で死に至る。
もちろん解毒薬を用意してはいるが、それを飲む手間自体が隙となり死につながる。
黒杖を突きつけ、『火葬』を浴びせる。
ダメージはないだろうが目くらましにはなるはずだ。
「ぴーすけ!頼めるか!?」
「ピィッ!」
肩の相棒は羽ばたき、まっすぐに飛竜へと迫る。
素早い動きで敵の周囲を飛び回り、執拗に顔への『火息』を繰り返す。
ちょこまかとハエのように飛び交うぴーすけに、敵は翻弄されている。
よし……これなら!
すぐさま『熱杭』の想起に入る。
砲身装填……推進増幅……準備完了だ!
「『熱杭』!!」
唸りをあげ射出された真っ赤な柱は、まっすぐに飛竜の腹に突き刺さる。
火炎無効の鱗を、質量と速度で打ち砕く。
【紅の導師】ジェレマイアが編み出した火炎耐性への回答がコレである。
まったく、彼には感謝してもしきれない。
当たりどころがよかったのか、悪かったのか。
飛竜はただの一撃で雄叫びを上げ、崖の底へと落ちていった。
ぴーすけが自慢げに肩へと舞い戻る。
……これが試練なのだろうか。
いや、そんな甘い話はないか。
気がつけば、この高台を包み込むように、風の渦ができていた。
360度、ぐるりと視界が消え失せる。
そうしてできた風の防壁から、打ち付けるように風が殺到する。
「―――ガッ!!」
2メートルほど吹き飛ばされ、無様に地面に叩きつけられる。
立ち上がる。打ち倒される。また立ち上がる。また打ち倒される。
このままでは……いずれ消耗で死んでしまう。
風に、対抗しなければ。
火精を静かに励起し、立ち上がる。
突風が俺を再度打倒さんとせまる。
ソレに、その風に、こちらからも風を叩きつける。
『ドライヤー』を最大出力で叩きつける。
力は拮抗し、風は凪いだ。
よし、これなら!
自身を中心とし、全方位に熱波を放つ。
どこから攻撃がこようが、すべて凪ぎ払ってやる。
たかだか風になんぞやられてたまるか。
―――周囲の火精が歓喜の咆哮をあげるのがわかる。
どちらの力が尽きるか……勝負といこうじゃないか。
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